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【決勝戦開始直前】紫ノ宮 緒子


「ついに始まった世界格闘大会! Battle Cinderella!」
「汝は名誉を求めた! 賞金を求めた! そして少年を求めた!」
「手に入れたくば! 求めるならば! ガラスの靴は降って来ない!己が手で掴み取れ!」
「野望、陰謀、数多の思惑が交差し、今! 戦いの火蓋は切って落とされる!」
「誇り高きKNIGHTは、今夜永遠にGOOD NIGHT!」
「活目せよ! 見逃せない戦いがここにある!」

街中の至る場所で、世界格闘大会のCMが鳴り響く。
呼応、反響、熱狂。
季節感の無いアブラゼミのように、その喧騒は飽きることなく街を包んでいた。
それはこの、TV局前の大型スクリーンも例外では無い。
群集、雑踏、殺到。
否が応にも盛り上がるこの人ごみ、その世界の中心に、
紫ノ宮 緒子は悠然と立っていた。

曰く、敵を知り己を知れば百戦危うからず。
曰く、情報こそが戦術の要となる。
曰く、参加者の戦闘スタイルを知ることは、万の軍勢を得るに等しい。
曰く、戦闘はいつ起こるか分からないため、情報は早いにこしたことは無い。出来れば生中継で。
曰く、最新の映像配信が行われる場所。それは撮影関係者の集まる場、つまりTV局前であろうと推察できる。
曰く、だからこうして、TV局前に居るのは必然ですわ。

以上、全て建前である。

彼女がこの場所に居る理由。
それは、(TV局前=TVカメラ=目立つ!)という、何とも安易な三段スライド方式によるものであった。



紫ノ宮 緒子は一人だった。
群集はみな、巨大スクリーンに夢中。
すぐ傍にいる参加選手の事など、気づく者は居なかった。

咳き込んでみたり。
前髪をいじくってみたり。
くるっとターンしてみたり。

それでも、紫ノ宮 緒子に気づく者は居なかった。
紫ノ宮 緒子は一人だった。

「エントリーNo15! シスター・マリーの紹介はこれにて終了~!」

ハッと巨大スクリーンを見上げる。
そこから発せられるは、陽気なDJの声。
緒子は気づいた。
今、この巨大スクリーンでは、参加選手の特集番組が放映されているのだと。
緒子は気づいたのだ。
次はエントリーNo16。自分の番であると!

努めて冷静に。
天使のように繊細に。
悪魔のように大胆に。

今か今かと待ち望む緒子の耳に届いたのは、
彼女が期待するものではなかった。



DJの言葉と同時に画面が切り替わり、映し出されるは一人の少女。
顔は良く見えない。
良く言えば活発、さらに良く言えばツンデレ。
彼女が持つ雰囲気は、画面越しにも伝わってきた。
そして、彼女が持つ力強さすらも。

「……厄介な相手かもしれませんわね」
気づけば、緒子は少女に見入っていた。
自分が紹介されなかった事に対する憤りなど、もはや彼女の頭には無い。
あるのは、この画面に映る一流の格闘家の、一挙手一投足を見逃さないこと。

「ふふ。建前が本音になってしまったようですわね」
「しっかりとこの目に刻ませてもらいますわ。貴方の技を、貴方の強さを」

画面の少女はゆっくりと歩く。
歩く。
歩き続ける。
対戦相手の元へ向かっているのだろう。
緒子も、そして群集も、同じ推論に達していた。
少女は歩く。
歩く。
歩き続ける。
群集を掻き分け。
ゆっくりと。
ようやく、画面には、少女とは別の、もう一人の少女の後ろ姿が映し出された。

その後ろ姿は、可憐であった。
その後ろ姿は、ゆるくパーマのかかったロングヘアーをたなびかせ。
その後ろ姿は、上質なワンピースの裾がひらひらと。
その後ろ姿は――――
――――どこか見覚えがあった。

「ふぇえ!?」

そう、画面の少女は――――
――――緒子の真後ろに立っていた。

「ふ、ふふふ。そう。貴方が私の対戦相手……でしたの」
素っ頓狂な声を挙げた事実をもみ消そうと、ひたすら冷静さを装って続ける。

「相手にとって不足無し、と言ったところですわ」

段々と

「まずは名乗った方が宜しいかしら?」

彼女の声は

「紫ノ宮流抜刀術」

まるで氷柱のように

「紫ノ宮 緒子」

研ぎ澄まされていった。



「そう……ですわね。 貴方に言うべきことは多々ありますけれども……やはり、この言葉を送るべきでしょうね」


「ファックですわよ」


~~~~紫ノ宮 緒子 VS 女王蜂  戦闘開始!~~~~