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『The Dark』


 対戦者に向け、一切の感情を見せずに振るった刃。『闇の守護者』は相手を容赦なく切り裂き、戦闘不能に至らしめた。
 生有るものではない、人の造りし存在。対戦相手、Martina Murrilが人間でなかった事は果たして何の巡り合わせだったのか。
 もし相手が人だったなら、あそこまで無慈悲に戦えただろうか?
 自問に答える暇は、今はない。
 たとえあったとしても、自答するしかなかっただろう。何よりの優先事項を果たす以外に自分のすべき事はなく、その為なら躊躇いを捨て去らなければならない。
 他の二人と別れ、手分けして少年の居場所を突き止める。
 並行して、大会参加者は見つけ次第排除してゆく。
 それが自分に与えられた役割だ。
 だが、彼女は同時にこのやり方に限度を感じてもいた。
 大会運営は自分たちが思っているよりも強大な組織だ。底知れない、と言ってもいい。
 一体どんな手段を用いれば、一介のイベント団体が日本政府の全面的な協力を取り付けられるというのか。
 何処かで彼らの内部へ潜入する必要がある。
 或いは、接触を。
 それが出来るのは、言ってしまえばかつては闇にその身を落としていた自分だけだろう。
 そう考えながらその場を立ち去ろうとしていた彼女の前に、いとも容易く転機が訪れた。
 「お初にお目に掛かります。私、本大会の運営事務局にて雑用と裏方仕事を仰せつかっております、一九六五(にのまえ・くろこ)と申します」
 現れた黒スーツの女性は文句の付けようもない礼儀正しさと如才のなさで自己紹介を行うと。
 「立ち話もなんですので、宜しければ是非奥でお話を。責任者には話は付いておりますので」
 密談と闇への誘い、最も適したその場所へ──────────。

                                                     <了>