ダンゲロスホーリーランド4 ~Battle Cinderella~ ライク・ア・カレーのゲーム日記(2)


~~前回のあらすじ~~


「さあ初のホーリーランド参加だ! 初行動は当然! 待望の『伝言掲示板で挑戦状叩きつけて華麗にタイマン』だ!」
「返事が来ませんでした」
「なん……だと……!?」


~~前回のあらすじ2~~


「申し合わせ対決ならずともキャラ説的に奇跡の好相性キャラが相手だ! これから良い関係が築ける予感がする!」
「相手再起不能判定100 → 再起不能」
「なん……だと……!?」


■■■


~~今回のあらすじ~~


「16%を!? 回避された!? その後も2/6を連発!?」
「相手選手に上を行かれまてしまいました」
「う~~ううう……あんまりだ……」
「次のターンは――? どうしました?」
「H E E E E Y Y Y Y あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ!!」
「……」
「AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」
「……」

ピタリ。

「……あの」
「ふぅ……スッキリしたぜ」
「何をやっているんですか」
「さあ、次の行動を考えよう。まだ序盤だ。この程度の『予想外』で取り乱してはいられないからね」
「思い切り取り乱していたようですが」
「そう呆れないでほしいな。そんなもの――2秒で切り返したさ」


□□□


電子ケトルに波々と水を注ぎ、スイッチを入れる。
白い部屋の中にある、白い机の上で、銀色のケトルがシュウシュウと音をたてて湯を沸かす。
沸いたお湯をマグカップに注ぐと、カップの中の液体がみるみるうちに色づいていく。今日は紅茶を一杯。

「2ターン目はマッチング処理判定を含めて、波乱の展開だったね」
「それまでに無かった新ルールの登場。試合取り消し。その後もルール変更、決定延期――等々ですね」
「戦線離脱者も新たに2人。噂には聞いていたけど過酷な大会だね。――君も紅茶をどうだい?」

マグカップがうっすらと湯気をくゆらせる脇には、今日もPCディスプレイが煌々と光を放っている。
映しだされているのはダンゲロスホーリーランド4のwiki。第2ターン終了時点のランキング。
それを眺めるのは、行動提出を考える私と、私の後ろに姿勢良く立つ銀月の女騎士。

「ディスプレイの角度をもう少しつけようか?」
「お気遣いなく」

今日も再びやってきた。
次も再びやるだろう。


「では、始めよう」


――――第2ターンの反省会を。





■■■ ダンゲロスホーリーランド4 ~Battle Cinderella~ ライク・ア・カレーのゲーム日記(2) ■■■





「まずは、君にはまた無理を言ってしまって申し訳なかったね」
「転校生クエストの事でしょうか」
「君には一対一の方が性分にあっているだろうし、実際、タイマンでも勝率は5分5分だったからね」
「一番手で闘う予定でしたから、それほど問題はありませんでしたよ」
「せっかく多人数のゲームに参加したんだからね。祭り要素には参加したかったから、そちらをつい優先してしまった」

椅子の背もたれに軽く体重を預け、斜め上方の整った顔立ちに視線を送る。
ラ・ピュセルは直立不動のまま、ちらりと視線をこちらに送り、またディスプレイに視線を戻す。
今回も始まりは与太話からだ。

「性分――キャラクター性といえば、前回に聞きませんでしたが、私の必殺技の設計思想はなんだったのですか?」
「コスモビームかい?」
「前回はキャラクター説明の舞台裏を聞きましたけれど、ステータスや必殺技など、システム面は聞きませんでしたから」
「そうだったね。それじゃあ、ラ・ピュセルの精神極振りぶっぱ必殺設計について、舞台裏を明かそうか」

マグカップを持ち、紅茶をひとすすり。
少々、数値的な話になってしまうので悪しからず。

「まず、必殺技は名前通りのインパクトが欲しかった。だからガイドラインに明記されている強能力にした。ロマン砲だ」
「確かに、決まればインパクトはありますからね」
「200ダメージはゲーム終盤になっても充分な威力だから、周りが成長しても腐りにくいしね。単純明快に、強い能力だ」
「体力15までは1ターンで倒せる――単純明快な強さが必殺技決定の理由、と」
「ただし、必殺技頼りでは連発出来ない以上、連戦も出来ない。それでは優勝が狙えない。だから精神25だ」
「MPに10の余裕を持たせて、発勁の使用を想定した訳ですか」
「そう。単発ぶっぱに見せかけて、必殺技以外でも発勁だけで100ダメージのリソースがある。
 連戦で体力の減った相手に、一撃で敵を倒して体力満タンのこちらが発勁を決めて連勝する。
 これこそがラ・ピュセルの戦闘方法設計だ。砂浜ならビーム後に140ダメージも与えられる余裕がある。
 そして、気合を技ダイスに設置する必要もないから、全面攻撃で攻められるために連戦向きでもある訳だ。
 かつ、必殺技のインパクトに隠れて、連戦仕様である事が相手にバレ難いというジャミング効果も狙った。
 ビームを撃ち終わってヘロヘロになったところを狙うぞ! という相手を発勁で狩る。
 これが君の必殺技と、戦闘スタイルの舞台裏だ」
「菊一文字選手の行動提出では1ターン目は連戦希望上位に私がいましたが、2ターン目は一気に下へ移動しましたね」
「ジャミングは1ターンでバレるからね」
「体力に3振られているのも、連戦想定という訳ですか」
「キャラクター付けの常人並みの体力、というところにもかけてはあるけれど、そうだね。
 20アタッカーの強攻撃と弱攻撃を1度ずつ喰らっても耐えられる程度、最低3は欲しかったからね。
 本当なら発勁をもう一発耐えられる体力4にしたいところだったけれど、100ダメージリソースの精神5は減らせなかった」
「――ああ、そうすると私の格闘スタイルがアイキなのも」
「防御力を無視する攻撃を連発するなんて、いかにも合気道のイメージにあうだろう」
「なるほど」
「君の設計思想はだいたいそんなところかな。満足のいく回答だったならば良いけれど」
「ええ、満足致しました」
「君みたいに凛とした性格でも、自分のルーツだとか、そういったものが気になるものなんだね」
「敵を知り、『己を知れば』百戦危うからず――でしょう」
「期待しているよ。さて、それじゃあそろそろタイトルコール通り、反省会を始めようか」

紅茶のおかわりを淹れつつ、宣言。
毎度、前置きが長くて失敬。






○マッチング

「第2ターンは転校生クエストに名乗りをあげた訳だが……」
「第1ターンに引き続いて、今回も希望の戦闘はまったく出来ませんでしたね。せめて私が1勝出来れば……」
「その辺は後で語るとして、今回は伝言掲示板で転校生狙いの祭りが起きていたからね。その波に乗ろうと仕掛けた」
「無事に転校生を倒せたのがせめてもの救いでしょうか」
「そうだね。ああ、後、第3ターンからはもう少し行動提出の記述を簡潔にしようと思う」
「ゲーム進行役の負担軽減、ですか。そういえば、名前の明記についても指摘を受けていましたね」
「そう。まあ……『それ以外とは闘わない』だと名前を書いていないから考慮されなくなる、というのは、
 他の全選手の名前を連ねた方が確認が大変で手間が増えてしまうとは思うが……」
「それでは、どうするのですか?」
「闘いたくない相手は挙げないようにするよ。GKの処理許容能力に配慮して、出来る限り優しく対応したいからね」
「あら、それでは私は存分に闘え、という訳ですね」
「転校生クエストシステムが適用されるなら、そこで反応値や試合回避記述を無視した連戦が出来るから、
 存分に活用したいところでもあったけれど、そちらはまだ様子見するとして、次回は存分に闘ってくれればいいよ」
「そういえば、転校生クエストや護衛システムはどうなるのでしょうね」
「さて、どう転ぶにせよ……私は現状を楽しませてもらっているからね。特に文句も無いだろうね」
「ゲーム中に新ルールが突然現れる状況を、ですか」
「ガリウスを思い出してね」
「なんですか? ガリウス?」
「『大魔司教ガリウス』さ。私はファミリーコンピュータ全盛期を生きてきたからね。
 ゲームショップ入り口にワゴンセールされている箱も説明書もないゲームのカセットをタイトル買いして、
 当然、当時はゲーム中でチュートリアルがあるものの方が少ない。操作方法も不明なままゲームプレイしたものさ。
 そんな風に購入したゲームの一つが『大魔司教ガリウス』。
 ダンジョン内MAPのみで形成された、謎解き要素をはらんだアクションゲームでね。
 ダンジョン内に点在する店を見つけて、敵から得たゴールドでアイテムを買い、岩を砕いたりシャッターを開けたり、
 行けない場所を未知のアイテムで徐々に踏破していき、最終的にラスボスを倒してゲームクリア。実に楽しかった。
 得手不得手のある男キャラと女キャラを使い分けて。血潮の燃えるようなBGMがまた格好良くてね。
 特に、穴に落ちて死ぬという事態がないのが良かった。穴があったら必ず下にMAPが続いている。
 縦にも横にも、広大なMAPを必死になって探索しなければならないゲームだった」
「それで、本題は」
「そうそう、それでね。そのゲームは特定のアイテムを手に入れると説明ゼロで特定の場所が通れるようになったりする。
 説明書があればアイテムの効果も書いてあったのかもしれないけれどね、何せそんなものは買った時からない。
 もちろん当時にインターネットで情報検索なんて事も出来はしない。
 だから、手に入れたアイテムの正体が毎回不明という有り様だったのさ。
 実は男専用エリアや女専用エリアなんてものがあったらしいが、そんな事は知らない。通れない道に首を捻った。
 そうやって場合によっては意味もわからず、運否天賦もあわせて、なんとかクリアしたんだよ」
「なるほど。言いたい事は伝わりました」
「ああ。実に楽しかった。だから確信を持って言えるのさ。今回も楽しめるってね」
「――話が長くなってしまいましたね。そろそろ試合に話を移しましょう」
「そうだね」

以上、ステマ。





○ VS 紫ノ宮緒子

「……これは勝てる試合を落としてしまいました」
「Wizardry Onlineで考えれば、84%の成功率で失敗なんて毎日のように見る事さ。不思議はないさ。
 どうせなら勝っては起きたかったけれど、劇的な試合にはなったんだから、それもまた乙なものと思うさ。
 95%の蘇生率では灰になる。悪くない成功率なら鍛錬は失敗する。
 むしろ成功を保証された鍛錬でも武器は砕けるし、宝箱解錠率100%でも罠の解除に失敗するものさ」
「待ってください。後ろ2つは明らかに可怪しいですよ」
「負ける時は負けるのだから、これからも存分に楽しませてくれればいいよ」
「――FSが伸びて努力も伸びました。次は当てます」
「11%のクリティカルだって発動する時は発動するからね」





「……今回は一戦目で負けてしまったから、試合は一戦だけだったね」
「成長は精神が-1、FSが+2でしたね」
「必殺技の防御回避不可率が伸びたのだから、儲けものだね。出来れば、あと1は伸びておいてほしいかな」
「FSは12ほしいと?」
「もしかしたらもう一つくらいスキルを得られる機会があるかもしれない、なんてね」
「そういう事ですか」
「さて、これで第2ターンの反省会は終了だね。第3ターンの行動提出を考えるとしようか」
「姫様に恥じぬ闘いを見せたいと思います」
「よろしく頼んだよ」
「では、私と闘う事になった方は、どうぞ、良い試合をしましょう」
「それでは――――」

また、次回。