西九条・七海 > 日記


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  • 2013年5月22日
組織のリーダーは、その組織の色によって、様々な立ち振る舞いができなければいけない、と今日、然る人から教えられた。
あたしの抱える「やせいのおうこく」はどんな色が求められるのか、少し考えてみる。

元々、この組織はオーヴァードとして突如覚醒し、その「力」に悩む層の相互扶助が目的だ。
であれば、ここには「救い」が求められる事になるだろう。
しかし、救いと簡単に言ってもその形態は様々なものになると思う。

例えば初期からのメンバーである曜子は、覚醒を境に家族と境界線ができてしまった。
当時の彼女は一人でずっと悩んでいた。それも当然だ。
この様な、普通の人には荒唐無稽な話は到底信じて貰えないだろうし、精々ライトノベルのネタにするのが関の山だろう。
縦しんば、信じて貰えたとしても想像の及ぶ範囲には限界があり、言うに相応しい相手は相当限られる。

そういう意味で、近い立場の人間の言う事が説得力を持つのは必然の流れだ。

当時は余り深く考えてはいなかったが、あたしは彼女の苦悩を聞き、
あたしを時に救い、時に苦しめた「力」についての経験談も語った。
何かヒントになる事がその中に含まれていたのだろう。
彼女は「力」と向き合う事を決意したようで、また、それ以来、彼女はあたしと行動を共にするようになっていく。

これは一例で、他の人も何か思う所があってここの門を叩いてきているだろう。
少しずつ考えていかなければならない事なのは、明らかだ。
どこまで出来るかは解らないが、努力はしようと思う。

  • 2013年5月29日
今日は快晴。暑さが日々厳しくなってきている。もう直ぐ夏だ。

夏が来るたび思い出す。
学校の長期の休みには、あたしはUGNの日本支部で行われる、
支部のない地域に居住している若年イリーガル向けの合同講習に参加するのが恒例となっていた。
初めての参加は小学2年の夏休みだった。
あたしは他の人に比べて「害を及ぼす」力は強くない事も初めてそこで知る事になった。

天月市には最近支部が発足したが、規模や教育者の事なども考えると当分これは続くかもしれない。
さておき、そこで自己の抱える欠陥と思って居た「衝動」が実はオーヴァードであれば大抵の人が抱える悩みであることを知った。
これを早い時期に知る事ができたのは、あたしにとって救いとなったかもしれない。

  • 2013年6月9日
隣街、藤篠市のイリーガルである霜月・雪が紆余曲折を経て、天月市に所属する事になった。
この案件には、嘗て「やせいのおうこく」で対応したある人物も関係しており、予想通り、不条理な行動原理の供物にされていた。
怒りを覚えたのはあたしだけではなかったようで、支部のメンバーや、この顛末を知ったメンバーの中からも糾弾の声が飛んだ。

ちなみに彼女は支部長や藤篠市支部のハト派が日本支部長に掛け合ったようで、穏便に事を済ませる方針になったようだ。
天月に来たのはその流れも汲まれてとの事だ。
彼女自身は色々と悩みは抱えているだろうが、一先ずの危機は脱したと見ていいだろう。

一人になってから色々と考える。改めて思った事は「心を喪う」とはああいう風になる、或いはああいう事をする、と言う事を意味するのだ。
一層、あたし自身も、そして仲間も守っていかなければならないな、と思わせられる出来事になった。

  • 2013年6月11日
雪ちゃんは一先ず、紗ちゃんとこのアパートに住む事になったらしい。
あそこは剣くんも住んでる所のはずなので、何かあっても何とかなるだろう。
和樹くんも度々様子を見に行ったり、登下校を共にしたりしている様子だ。

あたしが言えた事かどうかはわからないが、本当にこの支部はお人好しが集まっていると思う。

……ただ、懸念する事もいくつかある。いずれ詩子は騒ぎ出す、のだろうか、この流れ。
あの話を正確に認識し、二人の性格を良く知っていれば早々にある流れでないのは予想できるだろうが……。

  • 2013年6月15日
藤篠市支部のメンバーと会見。
落ち着きつつある雪ちゃんと、嘗ての同僚との面会、というのが名目らしい。
あたしも何故か呼ばれたのでついていく事になった。

あの後あたしは藤篠市で発生し、雪ちゃんの幼馴染みであり、同じオーヴァードであり、そして相棒であり。
……恐らくは彼女の想い人だったのであろう、遊佐・真幸──彼についての最期と託された意思の詳細を辿った。
一応事件の時にも調べはしたのだが、その時には精密な状況が解らず、支部のデータベースを借りての追認作業となった。

それによれば数多の犠牲を出したという大規模作戦は、一応成功という形になる。
しかしながら、それに支払われた代償はとてつもなく大きなものだった。
死力を尽くした総力戦であったそれは、彼らにも限界以上の性能を引き出す事を否応なく要求。
状況としては二人とも「心を喪う」か否か、と言う所までだった。

彼は最後の切り札である、自爆装置を起動。敵の首領共々、形見すら残さぬ壮絶な死を遂げる。
最期に遺した言葉は要約すると端的だった。「生きろ」。これが彼の望みだったらしい。
しかし、その言葉は長らく彼女を悩ませる事になった。

会見を行って解った事がある。
なるほど、確かにこれは「彼ら」に相談するには相応しい事ではなかったと思った。
新婚ほやほやの夫婦の友達に離婚相談などできるか、という状況が、一般的な喩えだと理解がしやすいかもしれない。

これもいつかの日記に書いた「言うに相応しい相手」が居なかった事が彼女を追い詰めた部分があると認識する。

  • 2013年6月23日
あたしは正直言って、戦闘に於ける指揮能力はそれほど高くない。
そういう意味で言えば、礼央先輩の方がずっと上手なのは言うまでもないことであるが、
彼は頑なにあたしをリーダーから下ろす事を善しとしない。

尤も、女の子が多く、ある意味で強い人間であるメンバーが多いこの組織では、
男としては一歩引きたくなる気持ちは解らなくもない。
実際には聡明な彼の事だから、それ以外にも何らかの狙いはあると思って居るが……。

  • 2013年6月25日
支部から要約すると「模擬戦やるから七海は参加するように」という通達が来た。
前回、ひょんなことから事件に関わる事になったのだが、
同種の事件が起きても対応できるよう全体的な戦力の向上を図るのが目的らしい。
天月市支部は正直、出来て間もない事もあり人員が十分とは言えず、
しかし市内には数多くのイリーガルや監視対象もおり、即応体制の確立と戦力の質・量両面での確保は急務だ。

あたしはその通達を了承する。

  • 2013年6月28日
今日は朝から暑い。
天月にも本格的な夏がやってきたのだな、と思う。

拠点でのんびりしてたら、詩子が騒ぎながら入ってきた。
とうとう和樹くんの登下校の様子を見てしまったらしい。案の上の反応。
あの時の話は詩子にもしていたはずだが、件の人物と繋がりが解らなかった様子だった。

一先ず紗ちゃんが手を打ってくれたおかげで危機は脱したが、逆に言えばこの案件は早急に考えなければいけなくなってしまった。

更に、珍しく天河さんからも連絡が入る。
模擬戦の相手をそのまま帰してくれ、という妙な依頼だった。
少々面倒な事になりそうな気配はあったが、支部の面子からの願いとあっては無碍に扱う訳にもいかない。あたしはその依頼を承諾する。