黄金暦211年

黄金暦211年 5月

うわさには盗みの名手

姿を見ずとも知れずその声を聞いている者は多かろう

わたしの耳に残る確かな余韻、それはもう余韻でしかなく

どのような最後だったかは聞こえてこぬ

少年の名はアデル・ミラー

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素直の匂いがする娘

欺かれやすく その代わり多くの心を開いたろう

最後となったその冒険への誘いは必然か

決して誰かの戯れではないといいのだが


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夜中の影のような女

肉が腐った馴染みのある匂いと深い土の知らぬ匂い

聞けば大蛇の牙の餌食になったという

魔女の墓は誰が掘り起こす


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名家の血筋も味は同じ

戦うに装いを求め 求められるを求めた男

彼の持つ武具はどのようなものだったろう

彼の繰る武術はどのようなものだったろう

自らへの止めは誰のものだったろう

彼の名はオロ・セロシア

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テューニ・マルムベリ




私の目には花が見える

冷たい石の上も彼には温かいのだ

己が半分と欠けても満ちているのは誰かの光があったのだろう

私がここで初めて見た死骸は君だったが そうと気づかず済まなかった


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パート・ダマンド




ロスト・ラクティル


黄金暦211年 6月

エリィ・シリラシ


黄金暦211年 7月

彷徨えるむくろ

黒い布と同じに黒い呪いがまとわりつく体

転げた首級は誰が屠ったのだろう、それともまだ

私のこの詩が彼の歩みを左右することがなきよう

男の名はジール・ジズ

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さざめく輝石

張り詰める糸は弓、そして運命の

弾かれた先に射られるはあなたの心の臓

それでもたくさんの誰かがあなたを覚えている

彼女の名はスナミ・アルバ

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黄金暦211年 8月

飛び散る蛮勇よ

その紅い流れは誰にも止めることができないが

きみがいくら疎ましがられ、自ずと顧みなくとも

無心の剣先が守ったものを私は刻みつけよう


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砕かれた御影石

その大きな器の中の小さい芯にある激情よ

恐れ、悲しみ、怒りへまた憎しみがくべられたのか

急く事なかれ、間に生まれたお前ならば


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黄金暦211年 9月

最後を締めくくるはお前

愛する弟が愛する屍へ、手向けはお前が作る骸の山

迷わぬよう紛れぬよう失くさぬよう握れ、強く

お前と彼らに違いはないのだから


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ヤーテ・ラルエヘン



黄金暦211年 11月


不運なる息子

肉親へ歯向かう刃を持てず、運命に抗うそれを握る

安寧を望む君にはいささか過酷だったろう

安堵せよ、君は既に永遠の平穏にいる

彼の名はキー・エルゴ

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最終更新:2013年04月26日 20:06