レミフェン・ターナの手記

 - 走り書きというよりも、書くのに慣れていないという印象の字が、
  奔放な筆跡で綴られている。 


●黄金暦212年 9月

 (何か書くつもりだったのか。
  日付だけが書かれ、ぽっかりとページが空いている)






●黄金暦212年 8月

大きな空を飛ぶ魔物がいて、驚きました!
と言ったら、あれは蝙蝠だと仲間に笑われました。

あんな大きな蝙蝠普通いないらしいです。
でも、小さな蝙蝠よくいるらしいです。

鼠みたいで、空を飛んで、…
不思議でした。すごい。


●黄金暦212年 7月

不思議なものに出会いました。
人に似ていました。

でも腐っていました。
動いていました。

人は死んだら会えないです。
そう聞いたけど、また会えるんでしょうか?

ゾンビとかグールとか言うらしいです。
ゾンビは、話してくれませんでした。


グール。
ラン・グールさん。

最初に一緒に行ってくれたんでした。
死んだと聞きました。

死んだ…、

会えないんでしょうか。もう。それとも。
また一緒に仕事、したかった、でした。


●黄金暦212年 6月

(何も書かれていない)

●黄金暦212年 5月

ヴィオラさんとまた会えました。
仕事だと一日だったり、それ以上だったり、ずっと一緒でした。
色々話せて楽しいでした。嬉しい。

宝箱から紙か布のようなものがありました。
守り札だ、って魔術師の人が言いました。

魔法の力があって、守ってくれるらしいです。
不思議で面白いです。
ヴィオラさんと俺とでくじ引きして、ヴィオラさんが貰っていきました。


セプテムさん、冒険者やめたらしいでした。
冒険者をやめて───

何をしてたでしょう、今は?

冒険者じゃなくて、暮らすとしたら、
皆さんは、俺は、何に?

想像がつかなくて、少し不思議でした。


●黄金暦212年 4月

温かいでした。
春でしたか?

温かいとねむいでした… 
ヴィオラさんと会えて、色々話しました。
楽しかったでした。

それから、それかr 
ねむ …

(そのまま寝てしまったらしく、ぐるりと大きく流れた線が引かれている)

●黄金暦212年 3月

狼殺す仕事ではなかったです。
人のような形をしていたけど、何か分からなかったのが
近くの遺跡に出たから、退治して欲しいって仕事でした。

何に会うのかって、楽しみでしたが
なぜか、少しだけ怖かったような気しました。

怖かった?
何が?


黒い、何だったでしょうか、
どろどろしたのが遺跡の中に溜まっていました。

最初気づかなくて、踏んだら靴が溶けました。
泥に似ていて、ひとりでに動きました。驚きました。
生き物だったでしょうか?

人型の何か、体大きなオークと
その仲間でした。

靴…
オークが持ってた金貨で買えるでしょうか。


●黄金暦212年 2月

宝箱の開け方って、誰に聞いたら分かるでしょうか?
宝箱があったけど、誰も開けられませんでした。
何が入っていたんでしょうか。

狼退治でした。
体の大きな狼でしたけど、痩せてました。

どこかの群れのボスだろう、って一緒に行った人が言ってました。
狼の仲間、死んだんでしょうか。
寒いから? 冒険者が殺して?


黒い人… イグジットさんは、それから見なくなりました。
迷わなくなったんでしょうか? それとも?



●黄金暦212年 1月

狼があまりいないのに、
すごい量の宝石や金貨が貯められていました。

洞窟の中に、宝石がたくさんです。
このあたりの狼って、石を食べるんでしょうか?

●(幕間・2)

+ ...
槍に刺さったまま、その人はにぃっと、笑いました。


血まみれなのに、刺さってる所からは血が一滴もでなくて。
消えてしまいそうで、思わず手を伸ばしました。

黒い服を、確かに掴んだのに。
する、と、手から抜けてしまいました。

「イグジットさん」

名前を呼びました。
話したくて。
彼は一度だけ笑うのを止めて、それから、また笑い出しました。

「ミラ、」

弟さんの名前のほかに、彼は誰の名前を呼んだんでしょうか。
迷っている、とセプテムさんが言っていました。
確かに、その人は、どこか暗いところで迷っているように見えました。

ヒキニートさんが荷物袋を探って、小さな杯を取り出しました。

花の模様の杯を受け取って、
彼が何と言ったのか、俺には聞こえませんでした。


気づいたら、通路には俺達しかいなくて
静まり返っていました。

また消えてしまったんでしょうか?
それとも?


石床に、どこかで見た金色の花が一輪落ちていました。




●(幕間・1)

+ ...
宝石のお金で、酒場で会った寝巻きの人、ヒキニートさんと出かけました。
黒い服の人を探しに行きました。

弓を背負った人、セプテムさんが言ってました。
黒い服の人、死んでたけど、化けたのかもしれないって。

化けたら、死んでも会えるんでしょうか。
会えるならまた話したいです。

そうやって出かけたら。

知らない冒険者さんに、会いました。
 街を出てすぐの森の中で、胸を切られて倒れてました。

剣を背負ったベルトごと、大きく切られて。
俺達のほうに手を伸ばして。
手を伸ばして、言いました。

 伝えてくれ。
 黒い男が

その人ともう話せなかったのが寂しくて、立っていたら
ヒキニートさんが手を引いてくれました。

森の中を歩いていきました。
獣道を辿って、ふと上を見上げると、少しだけいつもより暗いような気がしました。

その人の仲間が行った、森の中の遺跡まで
そんなに、遠くはありませんでした。


耳を澄ませると、遺跡の中から小さく唸り声がしました。
狼? それとも…?
傍にいた狼を松明で追い払って、中に潜り込みました。

遺跡の中は暗かったでした。
俺が前に立って、槍で周りを警戒しながら歩いていきました。

何か動いた気がして、思わず槍を突き出したら、

黒い服の胸が、槍の穂先に、


 槍に刺さったまま、その人はにぃっと、笑いました。



●黄金暦211年 12月

狼を退治する仕事でした。
狼、飢えてたんでしょうか?

冬です。寒いです。
寒いから狼も、寝床と食べる物が欲しかったのかもしれません。


でも、前のと違っていました。
宝箱があって、その中に金貨とか、宝石とかが入ってました。
狼に食べられた人の持ち物でしょうか。

宝石を少しもらって、売ったらお金になりました。


●黄金暦211年 11月

寒くなりました。
冬の服あると寒くないらしいです。

冬の服。
マスターにお金ないって言ったら、
もう少し、信頼性のない依頼も受けてみるかって言われました。

そうしたら、酒場でよく会う人達とも、会えるでしょうか?


黒い服。
街でまた見ました。

死んでなかったでしたか?
また、話できますか?

だったら嬉しくて、寄っていって話しました。
振り向いて、笑ってくれました。

でも。
真っ赤になって、消えてしまいました。


●黄金暦211年 10月

服を買いました。
ずり落ちにくくて、動きやすいでした。
楽しいでした。

でも寒そう言われました。


酒場でよく会う人達、最近あまり会わないでした。
方針変えようかな。

●(幕間)

黒い服のひと、死んだと聞きました。

前に少し会いました。
弟さんが死んで、ひどく泣いてました。
笑って泣いてました。

弟さんに話してる時、優しそうでした。
一度話したかったでした。


死んだら、会えません。

でも。
でも、昨日、店に服を買いに行ったら。

人の向こうに、

見た、気がしました。
あの、黒い服。


●黄金暦211年 9月

狼を殺しました。
狼を殺しました。

仲間と話すの楽しいでした。
大きな街。高い山の上。俺は窓から見た海の話しました。
でも、狼殺すの、あまり楽しくないでした。

狼は何も集めていなくて、宝石とかなかったでした。
でも報酬はもらえました。

寒くなるそうです。
服がないと凍えるって、酒場にいた、ミラベラさん、に言われました。
前に会ったパラキパさんも、俺の服のこと、気にしてくれてました。

その後、いつもの人が一緒に飲もうぜって言ってくれました。

服買うから飲めないって言いました。

殴られました。

少し、悲しいでした。


●黄金暦211年 8月

酒場に人減っていきました。

頭一つ大きくて、話したことありませんが
よく見てました。

マリッチさん。
弟が死んだ時、泣いてた人でした。
また、お兄さんが泣くんでしょうか。

だんだん人減っていきました。
ザカリオさん。
帰ってくる時の笑い声聞こえなくて、少し不思議でした。

人がいたところ穴になります。
これが寂しい? ですか?


狼殺してオーク殺しました。
俺生きてました。
一緒に行った人生きてました。

手袋見つけたけど、鍵開けとか役立つから
他の人にあげました。
鍵開けわかりません。

俺いつか、また一人になったら、寂しい? でしょうか?
俺が死ぬの先でしょうか。




部屋で見てました。見つけた宝石。
青い石と金色の石と。

見ていたら思い出しました。
酒場でした。
ザカリオさんの杯を、受け取ったんでした。

琥珀色のお酒でした。

●黄金暦211年 7月

パラキパさんと行きました。
帽子見つけました。
俺ちゃんとした服持ってないでしたから、これでも被っときなさいって
帽子くれました。

どこに行ったのか。
何を殺したのか。

覚えていませんでした。
何だか、頭がぼんやりしていました。

オムライス食べすぎでしたか。


宿に戻ったら、前呑んだ人いました。一緒に飲もうぜって言われました。
飲みました。楽しかったでした。

あとのお金宿の人に渡しました。
「いい加減居候は困る」みたいです。先に払ったみたいです。

●黄金暦211年 6月

死ぬこと、悲しいことなんですね。

酒場で泣き叫んだ人がいました。笑って泣いてました。
弟が死んだらしいです。

他の人、泣いてました。

俺は死ぬの決まってます。
俺を食う竜いなくなった時、村の人泣いて怒りました。

俺が死ぬのも、悲しいことですか?


死んだ人、話してみたかったと思います。
死ぬの悲しい、そのことですか?

俺は死んでないです。一緒に行った人死んでないです。
狼を殺しました。

一緒に行ったティモさん、楽しそうに笑う人でした。
強くて頼もしくて、横にいてほっとしました。

博打誘われたけど、やり方わかりません。残念。


●黄金暦211年 5月

5月。
合ってますか? 合ってますね。
暦を見ると、冬か春か分かるらしいです。
でも国によって違うらしいんです。

出てくるもの分からなくて、少し怖かったでした。
行ったらコボルトでした。

ランさんという人一緒でした、包帯気にしていました。
怪我でしょうか。
剣を手に入れました。ランさん使うようでした。

剣少し悲しそうに見ていました。なぜでしょうか。

●黄金暦211年 4月

日誌です。
俺をつれてきたひとが、俺は過去とか未来とかが弱いから、
日誌でそういうのを分かるみたいです。

モーリスって人と、木の話しました。
見たことない木の話、楽しかったでした。
海に生える木の話したら、喜んでくれました。楽しい。

最初の仕事は、鼠を殺すのでした。
少ししんどかったけど、なんとか大丈夫です。

金貨を持って帰ったら、酒場にいたおじさんが一緒に酒飲んでくれました。
楽しかったでした。

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最終更新:2012年03月15日 22:29