見る目がない


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「殺し合い……ですかァ」
月並みな台詞をぽつりとこぼし、男は偽りの大地に腰を下ろす。
辺りには特に何もないが、いつも冒険し見てきた景色と当たり前ながらそっくりだ。
地図と照らしあわせて現在地を割り出しますか、と男はデイパックを開く。
 
本と、鞄と……デイパックの中に更に鞄?
訝しむも、支給された本を読めばすぐに合点がいった。
なるほど、実に、サバイバルだ。
仰ぐ空は夏の匂いをさんさんと降り注がせる。
 
自分がいたノースティリスは冬だったはずだ。
ちょうど馬車に荷物を……ノイエル名物のクリスマスツリーを積み込んでいた時に、彼は最初の場所に呼ばれた。
名をミヤナギ、黒髪に金の瞳を持つメガネを掛けた青年だ、彼の職業は。
 
「見ぃぃぃつけたぁ!!」
 
「……どちら様で?」
 
藪から棒に現れた、「パルミアの住民に聞いた!やばい冒険者ランキング一位!」にでも君臨していそうな男。
背丈こそ控えめだがその両手に握る大剣は体の二倍はある。
ぶうんと大剣を肩にかけて居住まいを整える。
その風圧で周囲の草が丘の民を中心にしてへしゃりと薙いだ。
 
「あたしが……フィアートが神様にずうっとお願いしてたからぁ」
ふうふうと荒い息とともに語る。
というか女だったのか、丘の民という種族はわかりづらい。
 
「強い奴ぅうと、戦えるぅう、フィアート嬉しい!!ありがとう!オパートス様!!」
この催しの趣旨を理解しているようでしていない発言にミヤナギはこめかみをおさえる。
多種多様な人間が放り込まれた殺し合いのスタートで随分な貧乏くじを引かされたらしい。
 
「私は嬉しくないぃいですねェ……貴方、私はびっくりするくらい弱いですよ?」
「それは残念……だから死ねぇえ」
ああ話が通じない、もしや彼女は丘の民ではなくリッチ?脳みそまで炎天下でとろけたリッチか?
それでも話を繋がなければミンチにされてしまう。
 
「では、貴方が強い相手に出会えるよう私が手伝う、というのは如何でしょう?」
ミヤナギの提案に丘の民の女、フィアートは首を傾げる。
「実はここだけの話、私は貴方に優るとも劣らない相手を知っているのですよ、フィアートさん」
これは半分本当で半分嘘である。
確かに彼女を上回る強者の当てはいくつかある、が、この場においての話になると当てはない。
適当にだまくらかして利用してやろう、という魂胆だ。
 
「ちょうど此処にお金もあります……私は貴方を傭兵として雇いたい、金と強者の手配を等価に」
形見の鞄から出てきた自分の財布。
ミヤナギは何より神に感謝した、クソッタレな神様でも本当に大事なものは理解していると、心底感謝した。
 
「強い奴はいぃぃ……でも金はどうでもいいしぃい……あたしはお前を殺したいぃぃい!!」
大剣がミヤナギを両断せんと振り下ろされる。
何故か苛立ちを露わにした顔のミヤナギは必死に躱そうとするが彼の身体能力では逃れるすべはない。
 
ドンッ
 
 
 
鈍い音が響いた。
 
 
「あ……れぇえ?」
 
「ああ……ね」
 
得心したミヤナギと放心したフィアート。
ミヤナギから二間合いほど離れた位置に大剣は突き立てられていた。
勿論真っ二つに切り裂いたのは何もいない空間。
ミヤナギは無傷で、地面にへたりこんでいた。
ぱたぱたと埃を払い、彼は悠々と立ち上がった。
 
「ぐぅおおおなんでだ、なんでぇえ?」
ドンッ
「待てぇええ」
ドンッ
「うううう……ぐっ?」
ポタリ、ポタリ。
 
鈍い音共にあちらこちらに移動していたフィアートが静止する。
大剣を握りしめた掌にじくじくと血が滲み、剣の柄に吸われていく。
「堕落した装備品……いやあ、おっかないですねェ」
 
ぼたぼたと流れる血は止まらない、引き剥がそうとしても、皮膚どころか肉までもっていきなお剥がれない。
 
「痛い痛い痛い痛いいだいいだいよぉおお助けてぇええ」
 
ミヤナギはさっとフィアートの鞄から巻物を取り出し読み上げる。
安心し笑顔になりかけたフィアートの顔がゆがんだ。
痛いのが治らない、痛い苦しい、目の前が霞んでいく。
 
「これで私の荷物は大丈夫、と……あ、助けて欲しかったんですか?」
 
当たり前だと叫びたいが言葉が作れない。
息と血が混じった何かを吐き出すだけだ。
 
「嫌ですよ、アタマが悪い上に金の価値がわからない人間なんて、助ける必要性がありません」
それにこれ、鑑定の巻物でしたし。
嘲笑を引き金に、ミヤナギが取り出した機関銃は咆哮する。
女の断末魔を掻き消して、ガルガルと。
 
彼の職業は遺跡荒らし、金を尊び、金を愛する、エウダーナの遺跡荒らし。
 
【フィアート@丘の民 死亡】
 
 
「こんなやつばっかりでないことを祈りたいですねェ」
女の鞄とアイテムを回収しながら深い溜息をつく。
 
「精々、私が生き残るために利用できる善良な馬鹿がいればいいのですが……」
堕落した大剣は汚いし触りたくもないので捨てておく。
 
 
彼は交渉することが何より得意であった。
肉体的弱さを補うために、ありとあらゆる他者を踏み台にして多額の金を手に入れてきた。
今回手に入れるべきは、生存権。
余りにもありふれていて、しかし貴重なものだ。
 
【D-3/中央/一日目・朝】
 
【ミヤナギ@エウダーナ】
【職業:遺跡荒らし】
【技能・スキル:銃器、窃盗、隠密】
【宗教:幸運のエヘカトル】
[状態]:健康
[装備]:☆静寂の機関銃『天使みたいなドブネズミ』、鉄の弾丸
[所持]:基本支給品、財布、不明アイテム1個
[思考・状況] 基本:他人を利用して生き残り、殺すことに躊躇はない
        1:金の価値が分からない馬鹿は率先して死んで欲しい
 
【備考】
黒髪金眼メガネの青年。口調は基本丁寧語、お金が一番自分が一番他人はどうでもいいという典型的なクズ。
殺し合いに招かれる以前は交易やここでは言えないことで資金を稼いでいた模様。
 
【エンチャント紹介】
 
☆静寂の機関銃『天使みたいなドブネズミ』
・それはスティールでできている
・それは隠密の技能を上げる
・それはテレポートを妨害する
・それはアイテムを盗まれなくする
・それは交渉を有利に進めさせる
・それはより安い価格での投資を可能にする
 
※D-3中央部に堕落した大剣が落ちています。
 
 
 
 
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