神々の愛した始まり


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 夏の気候と風を吸い込んで、少年はこれから始まる激動の毎日への好奇心と挑戦心をを、空気以上に胸いっぱい、体いっぱいに巡らせた。

密航した船が嵐に巻き込まれ、体が放り出された時は死を覚悟したなあ、となんだか他人事みたいに思い返す。
このノースティリスの大地に打ち上げられ気を失っていた彼を助けてくれた自分と同じエレアの……名前は忘れた、少し気障ったらしい腹の立つ緑髪の男と、ラーネイレと名乗った美しい女性。
 
緑髪の男の話もおざなりに、彼は女性に、ラーネイレに見惚れていた。
それも仕方がない、男ならば振り向かずにはいられない、全人類どんな種族も(カオスシェイプやかたつむりの美的価値観は正直分からないが)はっと息を呑む……そんな女性だったから。
 
「綺麗だったなあ」
ヴェルニースに行くことを勧められて、彼は今ノースティリスの大地をその二本の脚で歩いている。
彼の名前はプロミス、至極善良で、前途洋々な、きっと誰かが、一度は夢見たことのある冒険者の道を歩むもの。
自分が魔法戦士であるということと、エレアと呼ばれる種族に分類されていることは覚えているのだが。
船から放り出されたせいなのか、密航する以前の記憶が殆どないのだ。
どこからきてどこへ行くのか、何も分からない。
しかしプロミスの心を満たすのは恐怖ではない。
前述した通りの未知の世界への好奇心と挑戦心だ。
 
それは彼が生を諦めるその日まで永遠に続くはずの、世界と繁栄と盟約の物語。
 
ヴェルニースの街は、言われたとおり子供の足でもすぐさま辿り着くほど近い場所にあった。
賑やかな音楽と、次いで遮る鮮烈な悲鳴に体をびくっとさせたが、ええいままよ!とプロミスは大きく一歩踏み出した。
 
鈍い音と共に、時空が歪むのを感じる。
目の前にあったはずの街が湾曲して遠ざかっていく。
モンスターか!?
プロミスは慌ててエーテルの長剣を構える。
手に馴染む、愛着のある美しい永遠なるエーテルの長剣。
これさえ共にあれば、どこまでも、自分で道を照らし切り開ける。
 
しかし、いくら空を切ろうとも、迫り来る歪みは収まらない。
じわじわと締めあげられるような恐怖、張り詰めていくそれは、ドンっと小さな爆発を起こして、彼の存在をノースティリスから消した。
 
 
プロミスは、鏡を見た。
緑の長髪を後ろに適当にくくり、ぼんやりと眠たそうな揃いの緑の瞳で、鏡の中のプロミスはこちらを見返す。
 
『ゲームスタートだ』
 
彼は告げる、限られた、永遠ではなく約束もない物語の、始まりを。
 
 
 
 
 
 
 
暗がりに人が集まっている。
意識を取り戻したプロミスは、ざわめきと多すぎる気配をいっぺんに受けた。
手足は石になってしまったみたいに動かず、取り戻した意識も粘着く倦怠感に絡め取られてまともに機能しない。
周りの人間もそれに変わりはないらしく、ざわめきと思ったものの大概は、呻き声だった。
 
いや、確かに、言葉が聞こえる。
健常で、居丈高な……声達が剣を交えている。
 
「ふん、どうやらシモベ達がお目覚めのようだぞルルウィ、静かにしろ」
「あらあ、貴方こそブウブウ鳴くのを止めたらいかが、ブタのマニ」
 
男と女は会話の終止符にお互い大量の悪意を詰め込んで、剣を収めた。
「喧嘩してる場合じゃない……はやく……」
静かで慈しみのある声が窘める。
暗黒で姿はわからぬが、春の慈雨を思わせる声はプロミスを少しだけ安心させて。
 
「間引きを……裏切り者の間引きを……」
ぞっと、肌を粟立たせた。
 
「フハハハハッ、クミロミの言う通り!」
岩を砕く豪快な笑い声。
「全く我が元素からなる神とあろうものが痴話喧嘩とは」
苦言を呈する厳かな声。
「うみゃみゃぁあ仲が悪いの?よくない!よくない!」
気が触れたような調子はずれの声。
「べ、別に羨ましくなんか無いけどやめなさいよね!」
場違いに嫉妬する声。
 
合わせて、七人。
誰だろう、誰だろう、僕は知っているぞ。
プロミスは懸命に起き上がる。
闇に慣れてきた瞳は声の主達を見つめる。
順繰りに確認し、一言。その場にいた全員が答えるだろう言葉を真っ先に口に出した。
 
「神様……?」
 
ノースティリスには七柱の神が存在していた。
正確には無のエイスも含めた八柱だが、無のエイスは名の通り無宗教を表す。
機械のマニ、風のルルウィ、元素のイツパロトル、収穫のクミロミ、地のオパートス、幸運のエヘカトル、癒しのジュア。
その神々が、今この場所に、プロミス達の目の前に降臨している。
 
「そう、我々はお前たちが崇める神だ」
機械のマニはプロミスの放心した声に満足そうに頷いた。
「神様か、ならなおさら分からないね」
 
横槍を入れるついさっき聞いたばかりの男の声。
見上げると、緑髪のエレアが立ち上がりその美しい弓を構えていた。
「ロミアス」
そうだロミアスだ。
マニは面倒くさそうにその名前を呼んだ。
 
「今から話を始めようと言う時に無礼な……これだから弓などという旧式の武器を扱うものは」
「弓じゃないわよ、エレアが悪いのブタさん」
マニに突っかかるルルウィの言葉にロミアスだけではなく自分の種族も貶されプロミスはむっとする。
だからといって神様に武器を向けるだなんて、とても自分ではできない。
とても勇気のある誇り高きエレアの戦士だ、なんてロミアスのことを見なおしてしまう。
 
プロミスは知らなかったが、ノースティリスでの信仰は少し他の宗教観とは異なっている。
一部には勿論、信心深く神を信じ仰ぐものがいるが、大概はその信仰からくる恩恵を期待するものばかり。
特に冒険者達はこぞって宗教を変え、自分に最も有益な宗教を探している。
 
「神様が我々になんの用だ、君たちと違って我々は忙しくてね」
異形の森の使者としての役目を果たさねばならぬのに、とロミアスは添える。
「ちょっとそれをロミアスが言うのは納得出来ないけど……」
美しいエレア、ラーネイレは苦笑してその傍らに立つ。
 
それは人間の勇気の象徴に見えて、プロミスを含めその場に居た者達は鼓舞され、暗闇の恐怖をうちはらった。
 
「これだから……お前らがそうだから、このような催しを開かねばならなくなったのだ」
 
「催し?」
 
マニは心底うんざりして、腕を組む。
「……簡単な催しだ、お前たちのような冒険者なら常に……行っている」
 
 
「殺し合いだ、この場にいるものが一人きりになるまでの、殺し合いの催しだ」
 
低い低い宣告に皆ぽかんとして、あるものは肩をすくめ、あるものは笑った。
「そうですか、とやるわけにはいかない。やれやれだ、実に」
 
異形の森の使者ロミアスはミンチになった!
 
「ロミアス!?」
ラーネイレの悲鳴と、ロミアスだったぐちゃぐちゃの肉塊が散らばる音。
「静かに……もう一度遮ったら……君たちも…………」
血の滴る鎌を携えたクミロミはしとしとと、人間たちを精神的に押さえつける。
それからはラーネイレも、誰も、物音一つ立てることは無くなった。
 
「宜しい。先ほど言ったとおり、これからお前達には殺し合いをしてもらう」
機械じかけの照明がぼんやりと世界を照らし、暗がりに映像を映し出す。
数多の冒険者の見慣れたノースティリスの大地の地図。
しかしそれは妙に小さく、いくつかの建物を欠いていた。
 
「私達で作ったミニチュアのノースティリスよ、よくできているでしょう?」
ルルウィはからから風車を回すように笑う。
聴衆は納得するが、微動だにできず。
「三日間……このノースティリスで……君たちは最後の一人になるまで殺しあうんだ」
もしも一日の間に誰も死ななければ、その時点でこの箱庭は閉じられる。
ぐしゃりと、中身ごと。
 
「どうして……」
思わずプロミスは疑問を漏らし、はっと手を口に当てた。
殺される、殺されてしまう。
どうして、どうして、ひどい。
 
「フッハハハハッハハ!確かに当然の疑問よの!!」
プロミスを覆う殺意を退けたオパートスの笑い声。
クミロミも、疑問を口にする権利はあるだろうとその手を動かすことはなかった。
 
「汝らが日頃我々に対する信仰の、水と火の報いだと思うがいい」
勘のいいものたちはそこではたと、理由に気付かされる。
 
「うみゃぁ……裏切っちゃう!みんなすぐ裏切っちゃう!」
有益を求め、目当てのものを賜ればすぐさま宗旨変えする。
 
「わ、私たちだって……神様だって怒るんだからね!」
その神々を舐め切った立ち振舞。
 
「我々は、お前たちを、信仰してくれたお前たちを愛していたのに」
プロミスは理解できなかったが、その言葉に酷く悲しくなった。
裏切ったのだ、僕たちは、きっと、神様の信頼を。
 
「裏切りは……許さない……でも」
愛しているから、また信じたい。
これは信仰を試す試練でもあるのだ。
最後の一人になるものは心を入れ替え、本当の信心を見出すだろう。
それを繰り返して、星の数ほど居る冒険者の選別を行うのだ。
 
もう裏切られないために、きちんとお互いを愛せるように。
 
「迷える我がシモベであった者達よ、機会を授けよう」
 
「もう無様に這い上がることはできないけれど、頑張ってね子猫ちゃん達」
 
「定命の者達よ、汝らの信用を取り戻すのだ」
 
「帰ってきたら、ずっと一緒だよ……もう離さない……」
 
「フッハハハハハ!!!」
 
「うみゃみゃ♪」
 
「せ、精々沢山戦うことね!終わったら怪我……治すから」
 
神々の言葉がぐるぐると周りを囲む。
僕の冒険の第一歩は、とんでもないものになってしまった。
プロミスは蒼白な顔色になっているラーネレイを見て、ぎゅうと拳を握る。
 
「さて、これからお前たちをこのミニチュアノースティリスに這い上がらせる。最後の復活だ、心してかかれよ」
 
え?と全員がマヌケな音を出す暇もなく。
 
 
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原子爆弾が文字通り彼らを吹っ飛ばした。
 
 
 
 
「うむ、実に良い」
「悪趣味」
 
機械のマニのほくほくとした笑顔。
始まりをド派手に告げた赤い花。
 
これから彼らが歩む、一時の冒険。
 
【ロミアス@NPC 死亡】
【Elona Battle Royal始動】
 
 
 
 
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