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レックスの星空

僕はマーモットのレックス。

僕の自慢は、ふさふさで柔らかいこの大きなシッポと、ばつぐんのジャンプ力。

でも一番の自慢はレックスという僕の名前。

とっても強そうな名前でしょう?

友達のルカちゃんが付けてくれた名前なんだ。

 

ルカちゃんとの出会いは一年半くらい前のこと。

その頃の僕は一人だった。お父さんとお母さんが死んでしまってからずっと、誰とも話すこともなく、くるみの木の下で静かに

くらしていたんだ。

春先はまだ夜の冷え込みがきつくて、僕は凍てつく夜空の下で震えていたんだ。そんな時、声を掛けてくれたのがルカちゃんだ

った。

「大丈夫?あなた、ひとりぼっちなの?」

うん。

もちろん言葉は通じないのだけれど、なぜか僕達は心で会話ができた。不思議なことだけどその時は疑問にも思わなかった。

遠くから聞こえてきた他の人の声「ルカ、どうしたの?」

「マーモットの子供が独りでかわいそうなの。連れて帰ってもいいでしょう?」

一緒の人たちが困った顔をしている。

「こんな小さな子置いていったら私一生後悔すると思うの。それにね、この子をみんなに見せたら私は人気者だよ、私が人気者

になったらパパもママも鼻がたかいよね。だから絶対連れて帰った方が良いよ!」

賑やかなルカちゃんはララフェルという種族で、束ねたピンク色の髪がピョンと跳ねている可愛らしい女の子。

お父さんとお母さんの説得に成功したルカちゃんに連れられ僕も一緒に家に向かう。家に着いたらすぐに温かいスープをごちそ

うしてくれた。

こんなに、おいしくて暖かい食べ物はじめて。僕は、はれつしちゃうんじゃないかと思うくらいお腹をパンパンにした。

体も温まった僕はその夜、スープのお礼にルカちゃんの前で宙返りしてあげたの。

ルカちゃんは手を叩いてよろこんでくれた「すごいすごい」

「上手だね!・・・あれ、えーと、あなたのお名前聞いてなかったね?」

僕は首を横に振る。

「え、名前がないの?よし、それじゃあ、私が考えてあげるね」

ルカちゃんは人差し指を顎にあててしばらく考えてこう言った。

「そうだ、レックス。名前はレックスにしょう。こんなカッコいい名前めったにないよ、うんうん。あぁそうだ、私ったら、自

己紹介してないじゃない。私はルカ、よろしくね!」

うん!僕は名前をつけてもらったのがとても嬉しくてそこら中を飛び跳ねちゃった。

「レックスは、なんでひとりだったの?パパやママはどうしたの?家出しちゃったの?」ルカちゃんは思い出したように言う。

お父さんもお母さんも死んじゃった。僕は独りぼっちで寂しいんだ。もう誰もいないんだ。

ルカちゃんはぴょんと椅子から飛び降りて歩き出す。ドアを開けながら僕を手招きする。

二人で庭の芝生に座り込む。ルカちゃんは笑顔で夜空を指差す。

目に入ったのはたくさんの星たち。その輝きは明るくて優しく、そして暖かかった。

ルカちゃんは言った「あのいっぱいあるお星さまのどこかにレックスのパパとママががいるんだよ、ずっと見ててくれるのだか

ら寂しくなんかないよ」

「それにね、」ちょっと痛いくらい僕をぎゅっと抱きて言ったんだ。

「今日から私達お友達になろう。しかもただのお友達じゃないよ、親友!特別仲良しのお友達って意味だよ。ずっと一緒だから

ね」

それ以来僕とルカちゃんは親友になったんだ。

 

一年半たったいまでも、ルカちゃんは親友、ずっと一緒。

ある朝、ルカちゃんは僕が大事に抱えているくるみを見て言い出した。

「初めて会った場所、あの大きなくるみの木を見に行こう!」

でも今日はルカちゃんのお父さんもお母さんもいないよ、だいじょうぶかなぁ。

「平気、平気、そんなに遠くないし、ちょっと見て帰ってくるだけだもの。それよりお家で一日中退屈してるほうがよっぽど危

険だわ」

ルカちゃんは強い日差しを避けるためフードのついた真っ白い服に身を包み、お母さんが用意してたサンドイッチをカバンに詰

め込む。

僕達は朝日に見送られながら出発した。

 

たくさん歩いたから、地平線に見えていた朝のお日様はすっかり真上に上りつめていた。

僕達は無事にくるみの大木に到着し、木陰でお昼ご飯の準備を始めた。

ルカちゃんはサンドイッチを目いっぱいほお張る。

「美味しい!私も大人になったらお母さんみたいに・・・」

ごきげんだったルカちゃんの表情がみるみる凍りつく。両手で持っていたサンドイッチがポロリと落ちる。

ルカちゃんの震える視線の先にいたもの・・・それは二頭の狼。

楽しい時間のおわりは突然訪れた。

狼は僕たちをじいっと睨み付ける。大木の近くにある水場を求めてやってきた二頭にとっては思いがけないご馳走にみえたみた

い。

よだれを垂らしながらじりじりと迫ってくる。

怯えるルカちゃんが目をそらした瞬間、一頭の狼がとびつく。

ルカちゃんを倒しこみ、大きな牙をむき出しにして襲い掛かかった。

ルカちゃんが危ない、僕が助けるんだ!

とにかく、ルカちゃんから狼を引き離さないといけない。僕はくるみを狼の目に投げつける。

不意打ちに逆上した狼は僕に詰め寄り大きな牙を剥き出しにする。

僕はその鼻先を得意の宙返りで蹴り上げた。

狼はもんどりうって倒れこみ、痛みにのた打ちまわる。どうだ、僕だって強いんだぞ。

勝ったと思った瞬間、もう一頭の狼の牙が僕の体を貫いた。

痛い。だんだん力も抜けてきた。

ルカちゃんが泣きながら僕の名前を叫んでいる、ルカちゃん早く逃げて・・・

僕が倒した狼が起き上がり首を振る、そして再びルカちゃんに視線を向ける。

もう僕は動けない。ルカちゃん、お願いだからいますぐ遠くへ逃げて・・・

ルカちゃんは狼に睨み付けられて硬直してしまっている。次第に近づく狼がついに牙を振り上げる。

その時・・・大口を開けていた狼が吹き飛んだ。

僕を咥えていたもう一頭の狼も力なく倒れこむ。その狼の頭を大きな矢が貫いていた。

「大丈夫か!」とても頼もしい声。ルカちゃんのお父さんだ。一瞬で二頭の狼を弓でしとめてしまったんだ、すごいなあ。

僕は・・・狼の牙から解放されたのに、動けない。とても痛いんだ。

よく見たら僕の体には大きな穴が開いていた。自慢の尻尾も真っ赤になっちゃった。

ルカちゃんは僕を抱き上げ泣き叫ぶ。

「レックス、ごめんね、どうか死なないで」

泣いているルカちゃんなんか見たくない。

大丈夫、痛みも少なくなってきたよ。でも少し寒くなってきた。

「しっかりしてレックス、目を開けてよ」

ごめんね・・・ルカちゃん、綺麗なお洋服が汚れちゃったね。

「そんなこと、どうでもいいよ。また元気になって宙返り見せて」

ちょっと無理みたい。でもルカちゃん、もう泣かないで。

あのね、一つだけお願いがあるんだ。

ルカちゃんは唇をかみ締め必死に涙をこらえながらうなずく。

ルカちゃん、僕も星になるよ。それでね、ずっとルカちゃんを守るからね。

だから、星の見える夜には僕を探して欲しいんだ。

抑えきれない涙を、それでも必死にこらえようとしながらルカちゃんは何度もうなづいていたんだ。

ありがとうルカちゃん。またね・・・

 

 


それからおよそ十年がたちました。

彼女は大人になって、今は冒険者として世界中を旅しています。

今日はウルダハの正門近くの階段で星がたくさん輝く夜空を見上げています。

すると、彼女の友達が怪訝そうに覗き込んできました。

「ルカさん、どうしていつも夜空を見ているの?」

「友達を探しているんです」

「見つかったの?」

ルカさんは小さく溜息をつき、悲しそうな笑顔で首を横に振りました。