シルファ・ルゥ作
イリュリオ・フォアニケー作
ベロニカ・バイヨン作
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異世界作品集
シルファ・ルゥ
イリュリオ・フォアニケー
ベロニカ・バイヨン
ホークウッド
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タイトル:名も無き戦士第二話:訓練
今日の相手は俺と同じ剣術士だ。キャリアは俺よりやや上といったところだが、何度か試合の様子を見る限り、勝てない相手ではなさそうだった。
試合開始の合図と同時に一歩前に。相手は動かない。む?つんのめったかのように、タタッと数歩前に出る。大抵の対戦相手はこれに釣られて前に出るものだが、こいつは相変わらず剣と盾を構えながらこちらの様子を伺っている。 これはまずい。こういう相手は苦手だ。俺の戦法は基本的にフェイントで相手を惑わして隙を突く。正攻法は苦手だ。だが乗ってこないならしょうがない。普通に間合いを詰めて・・・・と、相手が急に突きかかってきた。「くっ」反射的に剣でいなそうとするのを押しとどめ、盾で攻撃を弾く。相手の体勢が崩れたところを狙おうとしたが、しっかり盾を構えていて隙が無い。相手はそれ以上突きかからず、元の位置に戻る。そうか・・・・こいつも俺と同じで、相手に隙を作らせてそこを突くタイプなんだ。そう言えばこいつの試合、常に仕掛けるのは相手が先で、こいつはカウンター気味の一撃で勝利を収めてきていた。なるほどな・・・それなら。盾を構えた左手を、体から離す。こうすると強力な打撃には対応できないが、あらゆる攻撃に臨機応変に対応できる。そうして・・・喚声を上げて一気に走る。さすがにこれは予想していなかったのか、かすかに動揺したようだ。行動にわずかな躊躇があり、俺はそれを逃さず左脇腹に一撃・・・・・しようと伸ばした右手を何かに掴まれた。「なっ!?」相手の左手が俺の右手をがっちり掴んでいる。馬鹿な。盾はどうしている?盾はヤツの左手上腕部に、丈夫なベルトでしっかり固定されている。左手は完全フリーだ。俺の左手は盾のグリップをしっかりと握っている。離すと盾が落ちてしまうから離せない。しまった、その手があったか。ええい!盾を投げ捨て、剣を持った相手の右手を掴もうとするが、どうやらそれも見透かされていたらしく、剣の柄で左手を弾かれ、そのまま剣を振り下ろす。反射的に左手で頭部をかばう。左手には柔らかいマーモットの皮でできた篭手のみ。一撃を食らえば間違いなく骨が折れる。右手は変わらずがっちりと掴まれている。くそっ、万事休すか!左手に激しい衝撃!・・・・・だがそれだけだ。えっ?相手も驚いている。ぺらぺらの安っぽい皮の篭手に、そんな防御力があるとは普通考えないからだ。右手の拘束がゆるんでいる事に気がつくと同時に腕を引き抜き、まず相手の右腕を強打して剣を落とし、喉元に切っ先を向けて試合終了。
試合の後、武器と防具の手入れを行う。しげしげとよく篭手を眺める。何か硬くて強靭なものが入っている。棒状のそれはおよそ20本にも及ぶ。全て巧みに皮の中に縫い込まれている。「ほう、なかなかよく出来た篭手じゃのう」思わず振り替えると、のんきそうな老人がふぇっふぇっふぇっと笑っていた。「爺さん・・・あんた誰だ?」「わしか?わしはただのご隠居じゃよ」そういうとまたふぇっふぇっふぇっと笑った。「それにしても・・・この篭手」俺から強引に奪い取ると、しげしげと眺めた。「間違いない・・・・サイズは小さいが、あの子が使っておったものと同じじゃ」「あの子?」「おお、わしの知り合いの子じゃ。格闘士じゃったか。おぬし、これをどこで手に入れた?」事情をかいつまんで話す。「難民キャンプに?変じゃのう・・・こんなに近くにいるなら、あの子ならわしに連絡でもくれるはずじゃが・・・・まあ、ええわい」そう言うと、篭手を俺に放って返した。「縫い込まれているのはな、アンテロープの腱を十分乾かして編み上げたものじゃ。細いが強靭で、なまなかな剣ではそれの一本とてやすやすと切断する事もかなわぬ。強打されてもダメージを分散してくれる。まさに防具としては一級品じゃよ」ふぇっふぇっふぇと笑いつつ、老人はひょこひょこと立ち去った。
「その篭手かい?よく使い込んでるね。なかなか使いやすいだろ?」久しぶりに会ったリックの母親は、以前と変わらぬ笑顔で迎えてくれた。「あの・・・・リックは・・・・」「聞いてる。あんたはあの子の最後を見ているんだろ?話してくれないかい?」その光景を説明する間、おばさんは黙って静かに聴いていた。「そうかい・・・・ゲールっていうのかい・・・・」なぜだろう。おだやかな言葉なのに、背筋に冷たいものが走った。「で、あんたはリックの仇を取るつもりなのかい?」「ああ」「やめときな。なんて言ってもやめないか。男の子だもんね」ふう、とため息をついて立ち上がり、「ちょっと・・・付き合ってくんない?」すたすたと歩き出した。
ちょっとした空き地。その真ん中に立ったおばさん。すぅと腰を落として構えた。できる・・・・強い!俺の直感がささやく。「へぇ・・・目つきが変わったね?アタシの実力が見えるかい?」「ああ・・・・おばさん、あんたは・・・・」「昔、ちょっと格闘をやった事があってねぇ」ちょっとどころじゃないだろ。正直、俺に勝てる相手にゃ見えない。「さて、アタシに出来るのは格闘の初歩を教える事くらいさ。でもね、剣が折れたり手放したりした時、こういう技術はきっと役に立つ。生き延びるために、出来ることはなんでもやっとかなきゃね」ふと・・・・妙な老人の事を思い出し、おばさんに話してみた。途端におばさんは、嬉しいのか迷惑なのか、何とも複雑な表情になった。「あーらら、あのスケベジジイ、まだ生きてやがったか・・・・・そのうちここに覗きにきそうだね・・・・ま、しょうがない。やって来たら歓迎してやろうか」言いつつ、両手の指を組み合わせてポキポキと関節をならす。爺さん・・・・・長生きしたければここには来ない方がよさそうだぞ・・・・・「さて、ジジイの事はどうだっていいや。さ、かかってきな」くい、っと手招きをする。
地獄の特訓の日々が始まった・・・・・
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