魔界統一カオスブレイド wiki
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ja
2022-07-17T18:31:26+09:00
1658050286
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仙狐修練-退魔師-/四章 暗雲立ち込める
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**四章 暗雲立ち込める
第1話
#region
候補者達が危機に陥る最中、
雑賀衆が控える拠点もまた、
蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
雑賀狐 大騎
孫市様、あちこちで火の手が
上がっています!
雑賀孫市
分かった、お前は拠点の連中
と一緒に消火に回ってくれ。
雑賀衆 蛍
孫市様、魔獣群の勢いは未だ衰えず、
西門で多数の被害が出ております。
雑賀孫市
ったく、急に大挙して襲ってきた
と思ったら、どいつもこいつも
やけに興奮してやがる。
雑賀衆 蛍
拠点での騒ぎに乗じるかのように
攻めてきたのも気がかりです。
雑賀衆 蛍
人為的な何かを
感じずにはいられませんね。
雑賀孫市
とりあえず、西門の守りは下針を
投入してくれ、あいつを暴れさせて
時間を稼ごう。
雑賀衆 蛍
了解いたしました、至急手配します。
雑賀衆 発中
あわわ……いくら撃ち落としても
キリが無いです。
雑賀衆 発中
退魔師の結界は
どうなっちゃったんですか!?
雑賀孫市
退魔師の連中が全力で復旧中だ!
ここはいいから、お前も
援護に行ってやってくれ。
雑賀孫市
どうやら一手……いや、
三手は遅かったみたいだな。
雑賀孫市
孫六、騒ぎを起こした奴らは
もう押さえたか?
雑賀孫六
うん、縛り上げてるわ。
雑賀孫六
ただ……
雑賀孫市
どうした?
雑賀孫六
全員が口を揃えて、
何も覚えていないと
言ってるらしいわ。
雑賀孫市
ほう?
雑賀孫市
そこら中に火を放つわ、守りの
要になってる施設を破壊するわ、
好き勝手やってそれか。
雑賀孫市
随分と肝が据わった連中だな。
雑賀孫六
簡単に調べた結果らしいけど、
精神操作の兆候が見られると聞いてるわ。
雑賀孫市
む……?
雑賀孫六
それに、房善って覚えてる?
あの出発前の式辞で登壇してた彼。
雑賀孫市
あの爺さんだろ、
覚えてるぜ。
雑賀孫六
この騒ぎの中で行方が分からなく
なってるらしいの。
雑賀孫六
でね、ここから重要なんだけど。
雑賀孫六
あの男の現役時代の二つ名は
人形遣い。
雑賀孫六
その名の通り、他人を意のままに
操る術に長けていたらしいの。
雑賀孫六
という事はもう……
分かるよね?
雑賀孫市
だな、何もかもが上手く
噛み合ってやがる。
雑賀孫市
他の退魔師連中も含め、
俺達はあの爺さんの手で
踊らされてたって訳か。
雑賀孫六
うん。こうなってくると、
継承の儀式とやらも怪しくなって
来るわ。
雑賀孫六
ここが落ち着き次第、真理亜達の
様子を見に行った方がいいかもね。
雑賀孫市
そのためにも、まずは魔獣を追い返し、
拠点を守って足場を固めねえとな。
雑賀孫六
そうね、私も前線の様子を見てくるわ。
雑賀孫市
おう、まだ残弾に余裕はあるか?
雑賀孫六
私は平気、兄さんは?
雑賀孫市
俺も平気だが、補給もままならない
以上は温存しておくべきだな。
雑賀孫市
やれやれ、こんな状況を想定
しての訓練だったが、まさかこんなに
早く機会が訪れるとはな。
雑賀孫六
そうね、これをもって実地訓練の
締めくくりと行きましょうか。
雑賀孫市
おーし、事が終わったら退魔師の
連中に思いっきりふっかけて
やろうぜ。
雑賀孫六
いいわねそれ。
雑賀孫市
だろ? 戦功をしっかり稼いで、
雑賀衆ここにありと知らしめて
やるとするか!
#endregion
第2話
#region
雑賀孫市
なるほどな……
よくぞ無事だった、
とは言えない状況だな。
退魔師 桜
それを言うならお互い様?
随分と派手にやられてるじゃない。
その後、隠し通路を利用し無事に
城を脱出した桜は、拠点に戻り
雑賀衆と合流する。
負傷した紗於奈を治療のために
預けると、互いの状況について
情報交換を行っていた。
雑賀孫六
拠点の守りも固め直したし、
いくら凶暴化してるとは言え、
魔獣についてはもう問題ないわね。
雑賀孫市
真理亜達の様子が気がかりだな、
まだ戻って無いんだろ?
雑賀孫六
残念だけど、そのようね。
退魔師 桜
真理亜なら大丈夫だよ、
あのお調子者と無口も思ったより
出来る奴だったしね。
雑賀孫市
そうか、信頼してるんだな。
雑賀孫市
俺がお前の立場だったら、
今すぐにも飛び出して行っち
まいそうだぜ。
退魔師 桜
本音を言うと私も心配だけどね。
退魔師 桜
ブラドリクスが本当に復活する
んだとしたら、望みがあるの。
雑賀孫市
件の真祖は気の強い女が好きなのか?
退魔師 桜
うーん、当たらずとも遠からずなのが
微妙……
雑賀孫市
うそだろ!?
冗談飛ばしただけだったのに。
雑賀孫六
他者との闘争に執着を示す……
退魔師 桜
そうよ、詳しいじゃない。
雑賀孫六
ううん、酒場でご一緒した陽気な
人が確かそんな事を言ってた気がして。
退魔師 桜
陽気な人……? まあ、情報の出所は
どうでもいいとして、それよそれ。
退魔師 桜
ヴラドリクスは自分が認めた者は
殺さずに配下に加えてたらしいの。
雑賀孫市
なんだ、じゃあ結局女好きって
事じゃないかよ。
退魔師 桜
頭の中が桃色になってる馬鹿は
ほっといて。
退魔師 桜
ヴラドリクスの価値観は見た目の
美醜じゃなくて、強さに重きを
置かれてるらしいわ。
退魔師 桜
真理亜ほどの実力なら、奴に
見染められてもおかしい話じゃない。
退魔師 桜
まあ、死ぬよりマシだってくらいの
話だけどね。
雑賀孫六
配下に加えるって……
真理亜さんは大丈夫なの?
退魔師 桜
強い暗示を与えるんだけど、
術者を倒すと解けるのがお約束
だから平気。
退魔師 桜
実際、大昔に奴が討滅された後は、
多くの退魔師が戦線復帰したと
記録にはあったよ。
雑賀孫市
ならいいんだが、
お前は随分と真理亜を
買っているんだな。
退魔師 桜
当然でしょ?自他共に認める天才の私が
推すんだもん、実力は語るまでも無いよ。
退魔師 桜
(ただまあ……昔にちょっと
つまんない事が起きたから、
実力を発揮出来てないんだけどね)
雑賀孫市
どうした急に、
考え事か?
退魔師 桜
あ、ううん、何でも無い。
退魔師 桜
それより今後だけど……
さっきも言ったように
二手に分かれるべきだと思う。
雑賀孫六
城に乗り込んで真祖の相手を
する、その間は拠点の防衛を
固める必要もある。
雑賀孫市
戦力の分散は下策もいいとこだが、
人手が足りない以上はやるしか
ねえな。
退魔師 桜
蘇ったばかりの吸血種は力が
弱くて、それは真祖であっても
同じ事。
退魔師 桜
だから、力が定着する前に
戦えば私達にも勝機があるの。
雑賀孫市
前線基地になっているこの
拠点はどうあっても落とせねえ。
雑賀孫市
今は落ち着いてるとは言え、
戦力をしっかりと割く必要があるな。
雑賀孫六
後は、万が一私達がしくじった
時の備えとして、城の紫音に
情報を伝えないと。
雑賀孫六
兄さん、伝令局から
預かってるあの子は?
雑賀孫市
無二に準備を進めさせている。
雑賀孫市
なんでか知らんがあいつ、
無二には妙に懐いてやがるからな。
退魔師 桜
あの子って?
雑賀孫六
仙狐族から非常時の連絡手段
として、鳥を一羽渡されているの。
退魔師 桜
要するに使い魔ね、
でも一羽で足りるの?
雑賀孫市
確かに、同じ文を持たせた
鳥を何羽も放つのが常套手段だが。
雑賀孫市
仙狐族が使ってる鳥は大層優秀
らしくてな、そんな保険も要らない
んだとさ。
雑賀孫市
それにしてもだ。
雑賀孫市
真祖様の相手をしつつ、拠点は守らにゃ
ならんとすれば、手が足りんぜ?
雑賀孫市
拠点に居る退魔師を大量に城に
送り込んで何とかしてもらうのは
駄目か。
退魔師 桜
雑魚相手ならそれが一番だけど、
高位の吸血種……ましてや真祖なら
無理があるよ。
退魔師 桜
だって、送り込んだはずの兵隊が
そのままこっちの敵になっちゃうもん。
雑賀孫六
人海戦術は通用しないか、
改めて考えると厄介な相手よね。
雑賀孫市
となりゃあ、城には手練れで乗り込む
しかないが、そうなると拠点がなぁ……
退魔師 桜
流石の私も疲れてるし、諸々の準備が
あるから城の攻略開始は翌朝を見てるけど。
退魔師 桜
人員の配置については要検討だよね。
紗於奈
失礼します。
雑賀孫市
お前は!? 怪我は大丈夫なのか。
紗於奈
はい、腕の良い治療師に当たりましたし、
鈴門秘伝の回復食もいただいたので。
雑賀孫市
(あの肉か……流石は鈴門だな)
紗於奈
急ぎ城に向かい奴を滅する必要があると
存じます。
紗於奈
私はこの通り動けますので、
同行させていただくべく、
馳せ参じました。
退魔師 桜
駄目よ。
雑賀孫六
あら? 願っても無い増援じゃないの?
退魔師 桜
腕が立つのは認めるけど、彼女じゃ駄目。
退魔師 桜
房善の術が解けてないから、
このままだとまた好きなように
扱われちゃう。
一同は紗於奈が自らの意思に反し、
身体に短刀を突き立てた件を
思い出した。
紗於奈
それは確かに……
でも私は!
退魔師 桜
協力の申し出はありがたいけど、
房善が現れないであろう、拠点の
守りについてもらうのが最善よ。
退魔師 桜
……でも、
それじゃ納得しないんだよね?
紗於奈
はい、この命が尽きるとも、
せめて一太刀は浴びせたく。
退魔師 桜
そっか、そうだよね……
退魔師 桜
分かった、時間が無いから急ぐけど、
私は彼女にかけられた術を解くわ。
退魔師 桜
雑賀衆はその間に、城攻めと拠点
防衛に人をどう割り当てるか決めて
おいて。
雑賀孫市
術を解くって、お前そんな
事も出来るのか?
退魔師 桜
私を誰だと思ってるの?
何でも出来るから天才って言うんだけど。
雑賀孫市
そいつは頼もしい限りだな、
紗於奈の事はよろしく頼んだぜ!
退魔師 桜
なにそれ、アンタ達知り合い?
紗於奈
はい。先日、一夜を共に
させていただきました。
雑賀孫六
……兄さん?
退魔師 桜
うわ……きったな。
雑賀孫市
待て待て待て!
酔い覚ましに散歩してたら
たまたま出会っただけだ。
紗於奈
?
雑賀孫市
お前も不思議そうな顔するな!
雑賀孫市
ったく、いかにも神秘的でございって
空気をまといつつも、一皮剥けりゃあ
ド天然じゃねえか……!
#endregion
第3話
#region
解呪の準備が整ったと知らされた
紗於奈は、拠点内のとある一室に
招かれた。
何がしかの香が焚かれているのか、
室内には初夏の花畑を思わせる
ような、爽やかな香気が漂っている。
退魔師 桜
来たわね。
早速だけど横になって。
退魔師 桜
時間も無いし、説明は
準備しながらで勘弁してね。
紗於奈
分かりました、
よろしくお願いいたします。
寝台に身体を預ける紗於奈には
目も向けず、様々な器具を手際
良く扱う桜。
先ほどの宣言通り手を動かしたまま、
解呪についての説明を行うのだった。
退魔師 桜
試しの間でアンタが自らに
刃を向けたのは、今更言うまでも
なく房善の仕業ね。
退魔師 桜
詳しく調べたけど、房善がアンタに
施した術は2種類だったの。
退魔師 桜
「秘密の共有」と「記憶の改ざん」の
併せ技ね。
退魔師 桜
秘密を抱えた同士って、
自然と絆が深まるけど、これを呪いにまで
昇華したのが「秘密の共有」
退魔師 桜
「記憶の改ざん」は……
まあ、読んで字の如くだね。
退魔師 桜
まずアンタと房善の間で
何らかの秘密が共有される。
退魔師 桜
次にその秘密に改ざんを
施して蓋をする。
退魔師 桜
こうすると、アンタは秘密に
するべき事を思い出せないから、
絶対に秘密が守られる。
退魔師 桜
そして秘密が守られる限りは、
秘密の共有が解けないから
いつまでも術中に陥る訳だね。
紗於奈
では、これから成すべきことは
記憶の封印を解く?
退魔師 桜
ご明察。そうすると後は
トントン拍子に事が運ぶ
寸法なの。
退魔師 桜
これってつまり……
桜は、それまで忙しなく
動かしていた手を止めると
紗於奈に向き直った。
退魔師 桜
アンタが抱える何らかの秘密が、
ここで明らかになるって事なの。
退魔師 桜
私は人様の秘密なんて興味無いから、
普段だったら別の手段をとるけど。
退魔師 桜
今は生憎とそんな時間が無い。
退魔師 桜
力技になるけど、アンタの心の
奥底に干渉して、自分で秘密を
喋ってもらう手段を取るわ。
退魔師 桜
だから再度にもう一度だけ
確認させて。
退魔師 桜
このまま進める?それとも止める?
紗於奈
続けてください。
退魔師 桜
だと思ったけど、清々しい
までに即答だね。
紗於奈
時は一刻を争います、
私ごときの秘密なんて、
天秤に乗せるまでもありません。
紗於奈
それに、聡明な貴女であれば
さぞかし口も堅いとお見受け
しますが?
退魔師 桜
墓場までも持ってく
義理はないけど、
そこは一応ご心配無く。
退魔師 桜
よし、私に手綱を握らせる
意思確認も済んだし、
準備は全部整ったから始めるね。
退魔師 桜
とは言っても、アンタはそこで
目をつぶって横になってるだけで
いいわ。
退魔師 桜
すぐに眠気が来るから、その時は
抗わないでね。
紗於奈
了解です。
紗於奈
…………
紗於奈
……
紗於奈
…
桜の言葉通り、瞬く暇もなく
訪れた眠気に身を委ね、
寝息を立てる紗於奈。
頃合いを見計らった桜が、香油の
入った瓶を鼻先に近づけると、
紗於奈は静かに語りだした。
紗於奈
父は腕の良い楽器職人でしたが、
人付き合いが苦手で、我が家は
里から離れた所にありました。
紗於奈
作った楽器をお金に換えるのは、
母と私の仕事で……
退魔師 桜
よし!
後は適宜修正を入れつつ……と、
上手く軌道に乗りそうね。
#endregion
第4話
#region
幼い紗於奈
新しい楽器できた?
ねえ、できた!?
父親
ああ、見てみるかい?
幼い紗於奈
うん!
わぁ、すごくきれい……
父親
表板を保護する溶剤の配合を変えて
みたんだが、これが大当たりでね。
父親
十分な強度を確保しながらもこの艶だし、
音の吸収も防いでくれるから、
音像がより鮮明に……
幼い紗於奈
う、うん……すごい、の?
母親
ちょっとあなた、紗於奈が
困ってるわよ?
父親
おっといけない。
ごめんよ紗於奈、まだお前には
難しい話だったね。
父親
堅苦しい話より楽器は音を奏でて
こそだ、適当に一曲試してやろう。
幼い紗於奈
やったぁ、お父さんのえんそう好き!
母親
せっかくだから私も聴かせてもらおう
かしら。
父親
ああ、あくまで納品前の試し弾き
だから、凝った曲は出来ないけどね。
-----
紗於奈
あまり自分の事を語りたがりませんが、
私に接する時は常に笑顔の、優しい父でした。
紗於奈
また、完成させた楽器で試し弾きを
してくれる時間が何よりも好きでした。
紗於奈
その曲のいずれもが、父の人柄を
落とし込んだような、優しい旋律だった
事を覚えています。
-----
取引先の商人
ふむ、相変わらず素晴らしい出来だ。
取引先の商人
一線を退いたとは言え、未だ腕は錆ついて
いないようですな。
母親
ありがとうございます、夫にも
そう申し伝え……えっ?
取引先の商人
どうされましたかな?
母親
こんなに……これはいただけません。
取引先の商人
彼の仕事ぶりには毎度関心しますし、
今回は色をつけさせてもらいましたよ。
母親
いえ、でも流石にこんな……
取引先の商人
それに、紗於奈ちゃんはウチの
せがれとも仲良くしてくれるんだ。
取引先の商人
今後もより御懇意にさせて
いただきたいのです。
取引先の商人
私の気持ちとして受け取って
やってくれませんかね?
母親
分かりました。そこまで言ってくださる
のであれば。
母親
こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。
------
紗於奈
村にある商人の屋敷まで楽器を運び、
お金に換えるのが、母と私の仕事でした。
紗於奈
まだ幼い私がやっていた事と言えば、
商人の息子と遊んでいたくらいですが、
楽器を卸す際は必ず同行しています。
紗於奈
父が楽器を作り、他の家族がそれをお金に
換える。
紗於奈
今となっては、家族が一丸となって生活を
回すといった教育方針だったように思えます。
紗於奈
そして、あの日が訪れます。
紗於奈
楽器を卸すために村を訪れ、母が商談を
まとめている間、私はいつものように
商人の息子と遊んでいました。
----------
幼い紗於奈
ずるい、ずるいよー!
まってー!
商人の息子
へへーん、お前がぼうっとしてる
のが悪いんだ、悔しかったら
捕まえてみな!
幼い紗於奈
もうっ、ずるいのはダメなんだ
からねー!
商人の息子
やばっ、こいつこんなに足が
速かったのか!
幼い紗於奈
まてまてまてー!
商人の息子
くそっ、追いつかれ……
幼い紗於奈
よーし、つーかまーえたっ!
商人の息子
くっそう、こんなに早く捕まる
なんてな!
幼い紗於奈
えへへ、わたしの勝ちだね。
商人の息子
だな、悔しいけど全然勝負に
ならなかったぜ。
商人の息子
お前、手先が器用なだけじゃなくて
足も速いんだな?
幼い紗於奈
そうなの?
商人の息子
ああ、村じゃあ韋駄天の名前で知られる
僕よりも速いんだ、お前は凄い奴だよ。
商人の息子
ま、男はいつも潔くしろって
父ちゃんが言ってたから、僕も
潔く負けを認めたんだがな。
商人の息子
つまりだ、足が速くて凄いお前より、
潔い僕の方がもっと凄いって事だ。
幼い紗於奈
そうなんだ……? すごいね!
商人の息子
正式に僕の部下に
してやる日も近そうだな。
商人の息子
……ん?
幼い紗於奈
どうしたの?
商人の息子
なんか、村の方が騒がしくない?
幼い紗於奈
あ、うん。
幼い紗於奈
それに、胸がなんだかざわざわする。
----------
紗於奈
森で追いかけっこに興じていた
私達が里に戻ると、日常の
景色は一変していました。
紗於奈
村の至るところから、獣の唸り声
が聞こえ、住人達は生気の抜け落
ちた瞳で、辺りを徘徊しています。
紗於奈
遠巻きに見ても分かるほどの異常な
様子は、私達に言い知れぬ恐怖を
与えました。
----------
商人の息子
なんだよアレ!
まともじゃない、絶対おかしいぞ!
幼い紗於奈
ううう、みんな怖いよ……
お母さん、商人のおじちゃんは?
商人の息子
分かんないけど、建物の中に
逃げた方がいい。
商人の息子
それに、僕の部屋には鍵がある。
商人の息子
家の鍵と僕の部屋で二つの鍵だ、
絶対に安全だよ。
商人の息子
だから何とかして僕の部屋まで
逃げ込むぞ。
幼い紗於奈
うん、わかった……
-------
紗於奈
母親の安否が心配だった事もあり、
私達は商人の屋敷を目指します。
紗於奈
小さな体が幸いしてか、身を隠せる
物影も豊富にあったため、
辛くも屋敷に辿りつけました。
-------
商人の息子
くそっ! 裏通りまで
あいつらが居るのか。
幼い紗於奈
ねえ……
お母さんは?
おじちゃんは?
商人の息子
大丈夫だ、父ちゃんは男の
中の男だし、お前の母ちゃんを
守ってくれてるよ。
幼い紗於奈
ほんと?
商人の息子
うん、きっともう家の中だ、
僕達も入れてもらおう。
幼い紗於奈
でも、どうやって?
商人の息子
あいつらは動きが遅いし
頭も悪い、だから……
商人の息子
よし、音に釣られた
隙に行くぞ。
幼い紗於奈
すごい! 大人みたいで
かっこいいね!
-------
紗於奈
目を覆いたくなるような惨状の
村を私と彼は進みます。
紗於奈
幼子とは思えない程に、理知的で
勇気のある彼の行動に私は力つけ
られたものでした。
紗於奈
そして、幸運にも村の異形達に
気付かれる事も無く、商人の家の
扉まで辿り着いたのです。
-------
商人の息子
あれ? おかしいな……
幼い紗於奈
どうしたの?
商人の息子
鍵がかかって無いんだ。
商人の息子
もしかして、父ちゃん達は
別の場所に逃げたのかな。
幼い紗於奈
はやく、はやく
入ろうよぅ……
商人の息子
うん、そうしよう。
商人の息子
鍵もかけてと……
これでよし。
商人の息子
あとは僕の部屋に隠れて、
助けが来るのを……!?
商人の息子
まずい、隠れろ!
幼い紗於奈
え? あっ……!?
-------
紗於奈
商人の邸宅には、既に
異形と化した村人が侵入していた
のです、それも何体も。
紗於奈
施錠されていなかった時点で
警戒すべきでしたが、幼子達に
それを望むのも酷な話。
紗於奈
咄嗟に身を隠して以後、
身動きの取れない私達ですが、
状況を打破すべく彼は動きます。
-----
商人の息子
よし、俺があいつらを外まで
引き寄せる。
商人の息子
お前はすぐに鍵かけて、
僕の部屋まで逃げるんだ。
商人の息子
この辺りの道に詳しくないと
逃げ切れないから、
足が速いだけじゃ駄目なんだ。
商人の息子
それに、僕もいつかはお前の
父ちゃんみたいに……
幼い紗於奈
(わたしのお父さん……?)
商人の息子
僕の部屋の鍵だ、
場所は大丈夫だよな?
幼い紗於奈
2階にのぼって、
つきあたりを右だよね?
商人の息子
よし、行けそうだな。
商人の息子
じゃあ僕はこれから、
家の中を走り回って、
奴らの気を引く。
商人の息子
一通り引きつけたら、
外に逃げるから、お前は入口に
鍵かけてから部屋まで逃げるんだ。
幼い紗於奈
でも、外にでても大丈夫?
商人の息子
心配するな、あの森に
僕達の秘密基地があるだろ?
商人の息子
村を出てそこに隠れてるつもりだよ。
幼い紗於奈
うん、わかった。
商人の息子
じゃあ行くぞ!
------
紗於奈
彼は宣言通り、
派手な物音を立てながら、
奴らをおびき寄せます。
紗於奈
やがて、邸宅の侵入者達を
引き連れた彼が外に出たので
私は指示通り、入口を施錠します。
紗於奈
そして、彼の部屋の中に
逃げ込み更に施錠します。
紗於奈
一息つけた安堵感からか、
私の全身を疲労感と眠気が
襲います。
紗於奈
いくら当面の安全を確保した
とは言え、依然として危険な
状況です。
紗於奈
そのまま眠る訳にもいかず、
睡魔に抗い続けますが、
やがて意識が朦朧としてきます。
紗於奈
その時、微かにですが、
外から音楽が聞こえます。
紗於奈
それは今まで聞いたことも
無い程に勇ましく、力強く。
紗於奈
そしてどこか物悲しい旋律でした。
紗於奈
混乱の最中にある村の中で、
誰かが音楽を奏でるなど、
あまりも非現実的です。
紗於奈
そんな夢現の境で、私は
やがて意識を手放します。
紗於奈
幾許かの時が流れ、
目覚めた私は協会の退魔師に
救出されます。
紗於奈
それは他でもない、
後の我が師となる房善様でした。
紗於奈
そして聞かされます。
紗於奈
吸血種の戯れで
一つの村が消えた事。
紗於奈
私が全ての家族を失い
天涯孤独の身となった事……
紗於奈
そして、孤児として協会に
保護された私はその恩義に
報いるべく。
紗於奈
また、理不尽な悲劇を
これ以上繰り返さない
ためにも、決意しました。
紗於奈
退魔師としての道を志した私は、
研鑽を重ね、今に至ります。
#endregion
第5話
#region
#endregion
第6話
#region
#endregion
第7話
#region
#endregion
2022-07-17T18:31:26+09:00
1658050286
-
仙狐修練-退魔師-
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/1036.html
#contents
*序文
先ほども説明させてもらったけど、
彼が消されてしまった後の世界について
ここに記しておくよ。
急に何の話をされてるのか分からない場合は、
先に[[ここ>https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/1.html]]を確認してほしい。
聞き覚えの無い声に耳を傾ける、なんて怪しい項目があるからね。
なにぶん、時間と空間があやふやな場所だ、
会話が前後してしまう事も往々にあるのさ。
それにあれから何年も時が経っているからね、
一部の家臣については、簡単な人物像も
まとめておくよ。
興味があるなら少し上に戻って、主要人物
と言う項目を追ってみるといい。
**プロローグ
#region
雑賀衆。
■■■■が仙狐復興のため旗揚げした頃より、
半ば専属に近い形で雇われている傭兵集団。
中でも鉄砲を扱う雑賀鉄砲衆は、
雑賀衆の代表を務める雑賀孫市自らが率いる、
生え抜きの精鋭達である。
報酬を求め各地を転戦する彼らは
とある事情により、常闇の領域西端に位置する
退魔師の里を訪れていた。
----
???
孫市さまぁ~!買ってきました、
ホカホカの焼き鳥ですよ~!
[[雑賀衆 発中]]。
傭兵集団雑賀衆に所属する異名持ちの一人、
曲者揃いの雑賀衆の中では周囲に振り回されがち。
[[雑賀孫市]]
でかしたぞ発中、後は冷酒が届けば、
鬼に金棒と……
雑賀孫市
ってなんだこりゃ?色といい、形と
いい、本当に鳥なのか?
雑賀衆 発中
んっと、流石に焼き鳥は無かったんです、
ここは妖魔界ですし。
雑賀衆 発中
でも、串刺し肉に甘辛いタレを塗って、
炭火でじっくり炙ればそれはもう、
焼き鳥ですよ? うんうん。
雑賀孫市
まぁ、確かに匂いは悪くないがよ……
雑賀孫市
この得体の知れねえ色と形の肉を食う
ってのは、ちいとばかり勇気が要るんだが?
???
であれば私が毒見を承りましょう。
[[雑賀衆 蛍]]
雑賀衆に所属する異名持ちの一人、
鋭い戦術眼を持ち指揮能力に長ける。
雑賀衆 蛍
敵陣のただ中で指揮官が倒れる事などがあれば、
作戦遂行に支障を来してしまう……
さあ、それを。
雑賀衆 発中
とか言ってぇ、実は蛍さんも
食べたみたいだけですよね?
私が確保してきた、この何かしら焼きを。
雑賀孫市
甘いな発中、コイツはマジで言ってるぞ。
雑賀孫市
その証拠に見ろ、目が一切笑ってねえ。
雑賀衆 発中
ほんどだ……ということは!?
雑賀衆 発中
じゃあ、実は本当にここは敵陣のただ中で!
私達は作戦遂行中なんですか!一体何の作戦!?
雑賀孫市
あのなあ、こんな出店で賑わってるような
通りが敵陣な訳……って。
雑賀孫市
そういやお前、何も説明されずに引っ張って
こられたんだっけか?
雑賀衆 発中
はい、動ける異名持ちは
全員参加の重大任務とだけ
聞かされまして。
雑賀衆 発中
派兵先から戻ってきたばかりでしたが、
着のみ着のままここにいます。
雑賀孫市
そうだそうだ、道すがら話すと言いながら、
結局派手にドンパチやらかす羽目になって、
それどころじゃなかったな。
雑賀孫市
丁度いい、蛍、今回の任務について
簡単に説明してやってくれ。
雑賀衆 蛍
了解しました孫市様。
雑賀衆 蛍
仙狐族と協力関係にある退魔師、真理亜様
ならびに桜様両名の護衛と、我ら異名持ちの
教練を兼ねた遠征が今回の任務だ。
雑賀衆 蛍
お二方は退魔師の儀式に参加するため、里帰りする
必要が出たが、緊張状態の続く狐妖の領域を抜けるとなれば、
突発的な武力衝突が発生する可能性が高かった。
雑賀衆 蛍
そこで立案されたのが少数の精鋭による突破作戦だ、
城に残された人的資源を勘案した結果、
我々に白羽の矢が立ち、兼ねてからの課題となる……
雑賀孫市
だああ、簡単にって言っただろうが、
お前は話が長すぎるんだよ!
雑賀衆 蛍
お言葉ですが孫市様、不測の事態に対応するためにも、
情報の開示にあたってはその背景に至るまで……
雑賀孫市
確かにごもっともだ、後はこの俺が直々に、
念入りに、余すことなく開示しておいてやるから
お前は見回りに戻っていいぞ。
雑賀衆 蛍
了解、引き続き哨戒任務にあたります。
雑賀衆 発中
孫市様、結局の所は?
雑賀孫市
結局の所は、退魔師のお嬢さん方の里帰りに
便乗して妖魔界観光を満喫しようぜって話さ。
雑賀孫市
後はまあついでに、何かと器用な退魔師の方々に
体術やら、武器の扱いやらをご教授願う予定も
あるがな。
雑賀衆 発中
私達には銃があるのに、
体術に……武器の扱いですか?
雑賀孫市
うーん、分かっちゃいたが、
そういうとこが問題なんだよな。
雑賀衆 発中
初手で駄目出し!?
雑賀孫市
確かに、お前ら異名衆は銃の扱いにかけちゃ
右に出る者はいねえ。
雑賀孫市
だからこそ、銃が使え無いような
状況への備えがまるでなっちゃいねえんだ。
雑賀衆 発中
確かに……でもそんな状況発生しますかね?
そうさせないために、私なんかも用兵術を
磨いてますし。
雑賀孫市
お前の言う通り、我が鉄砲衆の面々は
単純な銃の腕はもちろん、それを正しく
運用するための用兵術をも極める精兵揃いだ。
雑賀孫市
だが、戦場に絶対は無い以上、
そろそろお前らにも自衛の手段を
磨いておいてほしくてな。
雑賀衆 発中
なるほど、万に一つが起きた場合の
備えということですね。
雑賀孫市
まあそんなとこだ。
雑賀孫市
(それに、今後は道理の外の居る連中を
相手取ると聞かされちゃあな)
雑賀孫市
(こいつらが一人でも生き残れるように、
今できることはやっておかねえと……)
雑賀衆 発中
孫市様?
雑賀孫市
っと、公私の切り替えこそが、
楽しく健やかに生きるための秘訣ってな、
難しい話はこの辺にしとくか。
雑賀孫市
そんな訳で、退魔師のお嬢さん方と
孫六がやってる登録作業?とやらは時間が
かかるらしいからな。
雑賀孫市
お前も坦中とでもその辺見て
回ったらどうだ?
この何とか焼きも、ありがとよ。
雑賀衆 発中
ではお言葉に甘えて、
失礼しますね、孫市様
雑賀孫市
さてと、こうして一人になると
色々と考えちまうわな。
雑賀孫市
世界の危機ねぇ……
#endregion
**一章 備えよ常に
第1話
#region
■■■■の父親が意識を取り戻した直後、
城に滞在していた勢力や大名の中でも、特に
仙狐族と深い縁を結んでいた者達が集められた。
当代仙狐王の紫音、ならびの補佐役のひまりは
普段の彼女達からは考えられないような、
深刻な表情を浮かべている。
緊迫した場の空気の中、
騒動の張本人が静かに口を開いた。
先代仙狐王 天道
さて、俺の頭ん中を見てきたってなら、
ある程度は察しがついてる奴が
いるかもしれんが。
先代仙狐王 天道
端的に言うと、とんでもねえ力を持った外敵が、
俺達を狙っていやがる……
先代仙狐王 天道
もちろんこの領域だけじゃねえ、
妖魔界も人間界もひっくるめた全部だ。
先代仙狐王 天道
俺達の全てを踏み荒らし、辱め、
最後には何もかもを焼き尽くしちまうような。
先代仙狐王 天道
そんな無法者共にどうやって抗うべきか、
それが今回集まってもらった議題になる。
天道から語られる突拍子もない話を受け
しん、と静まり返る大広間。
???
他でもない紫音殿の父君の言だ、
単なる世迷言ではないのだろうが……
参加者全員の代弁者として、仙狐族と
同盟を結んだ大友家に仕える武将、
立花道雪が当然の疑問を投げかけた。
[[立花道雪]]
あまりに荒唐無稽が過ぎる。
立花道雪
この場に集いし者達はいずれも
大なり小なりの荷を背負った者ばかりだ。
立花道雪
故に俺は証を求める。
立花道雪
天道殿の話を裏付ける確固たる証だ、
皆の者も異論はないな?
???
道雪君の言う通りだな。
[[平賀源内]]。
死後に妖魔として転生した天才技師、
その頭脳は仙狐族の大きな力となっている。
平賀源内
紫音君の父君……だったか?
その真剣な表情から、妄言の類でない
ことは見てとれる。
平賀源内
だが、いまいち信憑性に乏しいのも
また事実な訳だ……
平賀源内
お手数だが、用意している証左を
御開帳願えるかね。
ひまり
まあ、お主らの言い分ももっともじゃな、
さすればこ奴にご登場願おうか。
ひまり
人妖の世界を見守ってくださっておる、
我らが女神様にな。
???
ド、ドーモ、ワタシガカミサマデス……
[[天照皇大神]]。
仙狐族に身を寄せる神族の一柱。
現在はその名を明かし、天津神本来の
力を発揮している……はずだが。
ひまり
……なんでそんなガチガチに緊張しておるんじゃ?
天照皇大神
だ、だって、いつものお城の
ゆる~っとした空気が全然無くて、
みんな怖い顔してるし。
天照皇大神
私も私で神族として振舞うなんて
もう何百年ぶりかの話だし。
天照皇大神
頭が真っ白になっちゃって……
当代仙狐王 紫音
大切なお話なのは間違いないですが、
天照様はいつもの天照様で大丈夫ですよ?
お水飲まれますか?
天照皇大神
ごめんなさい紫音ちゃん、いただくわね
天照皇大神
んっ……んくっ……
天照皇大神
…………ふぅ、では気を取り直して。
天照皇大神
これから皆に聞いてもらう話は
はるか昔の、途方もない程の昔に起きた悲劇の話。
天照皇大神
そしてこの先の未来の話、
逃れられようのない災厄の話。
天照皇大神
我ら神族が不可侵の禁忌として封ずる記録、
此度はその枷を少しばかり外し、
語り聞かせるとしましょう。
---------
天照皇大神
遥か古の時代に天と地が分かたれて以後、
神が生まれ、国が産まれ、
最後に人が産まれました。
天照皇大神
産まれたばかりの人はまだ力が弱く、
神々の庇護無くしては生きられぬ存在でした。
天照皇大神
神々は先達として人を導き、人は神を敬い、
万物は共存共栄の道を歩みます。
天照皇大神
やがて、神の庇護を必要としなくなった人は、
自らの足で歩を進めます。
天照皇大神
餓え、争い、疫病と、常に死と隣り合わせに
なりながら、それでも人は懸命に歩み、
神は人を見守り続けます。
天照皇大神
様々な文明が興り、栄華と破滅を繰り返すことで、
人は自らを次の段階、次の段階へと押し上げ続けました。
天照皇大神
ついには、神の権能にすらその手をかける所まで、
繁栄の行く末に到達しかけます。
天照皇大神
ですが、そんな人に対し、
途方もない悲劇が襲いかかります。
天照皇大神
──それは、外なる世界からの侵略行為でした。
天照皇大神
理外の力を行使する彼らの前に、
人は成す術もなく蹂躙されてしまいます。
天照皇大神
人の手に余る事態だと判断した我々は、
再び人の前に姿を表し、共に手を取る事としました。
天照皇大神
あらゆる人とあらゆる神が手を結び、
外敵との戦いが始まりました。
天照皇大神
苛烈を極める戦いが。
天照皇大神
戦いは幾日にも及びました。
天照皇大神
いつ終わるとも知れぬ戦いにより、
人は営みの基盤を失い、大地は砕かれ、
幾柱もの神が討たれ……
天照皇大神
それでもなお私達は戦い続けました。
天照皇大神
外敵の狙いは世界そのもの。
逃げ場などなく、話し合いでの解決など、
望めるべくもなかったから……
天照皇大神
そして、人が磨いた知恵と技術、
神が持つ権能、それらを一つに併せても、
届かなかった。
天照皇大神
結果として我々は破れ、#######れた
########、なんとか#########
今###########ます。
話の最中、天照の声が錆びた金属を
擦り合せたような不快な音に変じる。
傍に控えていたひまりは、やれやれと
ばかりにため息をついた。
ひまり
ま~た肝心な所になるとこれか、
やはりまだ無理なのか?
天照皇大神
うん、まだ抑止力の方が強くて、
駄目みたい……
平賀源内
ふむ、君達の会話から察するに、
急に私の耳がおかしくなってしまった訳では
無さそうだな。
当代仙狐王 紫音
そうなんです、このお話をすると、
途中から天照さんの声がガリガリって
音に変わっちゃうんです。
当代仙狐王 紫音
敵に負けてしまった後の話こそ、
一番気になるんですけどね。
ひまり
まあ、わしらがこうしてここに居る以上、
結局なんとかなったとの話ではあろうな。
天照皇大神
…………
先代仙狐王 天道
さて、尻切れトンボではあるが、神族の重鎮が
その重い口をようやく開いてくださったんだ。
先代仙狐王 天道
俺としちゃあ、これともって証としたいが、
まだ不服か?
集められた一同は互いの顔を見渡すが、
そのいずれもが困惑の表情を浮かべていた。
平時であれば一笑に付されるのが妥当な程、
現実味を欠いた話である。
だが、その場に居る誰もが、己れの胸の
奥に奇妙な疼きを覚える。
それはまるで、魂にに刻まれた、
原初の記憶が鳴らす警鐘のように感じられた。
ひまり
とまあ、聞きたいことは山ほどあると思うが、
とにかくわしらには時間が無いらしい。
ひまり
かと言って、今のままではあまりに
情報が少なく動くにも動けん状況じゃ……
ひまり
今後の指針を決めるためにも、まずは
情報を集め、精査や分析を進める段階
だと考えておる。
ひまり
そのためには、優秀な頭が一つでも多く
必要な状況じゃ。
ひまり
よって、各陣営より優秀な人材を集約し、
対策本部を設立する事をここに宣言させてもらう!
当代仙狐王 紫音
目ぼしい方は既に選定しているので、
後ほどお声がけさせていただきますね。
当代仙狐王 紫音
あと、今後の方針が決まるまでの間は、
みなさんご自由にしていただいて問題ないです。
当代仙狐王 紫音
もう、仙狐族の復興なんていってられる
状況じゃなくなっちゃいましたが……
当代仙狐王 紫音
ここに集まってくれた皆さんとなら
どんな困難にも打ち勝てる。
当代仙狐王 紫音
私はそう信じています。
当代仙狐王 紫音
(天照さんのお話、いつも何かが
抜けてるような気がするけど……)
当代仙狐王 紫音
(みんなは気にならないみたいだしいいかな)
#endregion
第2話
#region
雑賀孫市
ようやくおいでなすったか!
こちとらもう、干からびる寸前だっての。
???
すみません孫市様!
俺は急ごうとしたんですが、
無二先輩がどうしてもって……
[[雑賀衆 大騎]]。
雑賀衆に加入して間もない仙狐族の少年。
異名こそ持たないが、その戦働きは周囲に
高く評価されている。
???
へへっ、こんだけ出店がひしめいてると
なりゃあ、酒を扱ってる所もかなりの
数になりやしてね。
[[雑賀衆 無二]]。
雑賀衆に所属する異名持ちの一人、
前線で戦う一方、雑賀衆の経理担当も兼任している。
雑賀衆 無二
財布を預かる身としては、
方々を見て回って、少しでも安くて
確かなブツを……ってな具合ですよ。
雑賀孫市
ほほう、確かにこりゃ良さそうな酒だ、
待たされた甲斐もあるってもんだな。
雑賀衆 大騎
でもほんとに凄い賑わいですよ、
退魔師の儀式だって割には、
祭りかなんかにしか見えませんし。
雑賀衆 無二
確かに、右も左もお祭り騒ぎだわなー
雑賀衆 無二
孫市様、もしかして俺達って担がれてるんですか?
雑賀孫市
ま、その辺の話は一杯やりながらとするか、
お前らも座れよ。
雑賀孫市
せっかくの酒だってのに、
野郎ばかりで華が無いのは残念だがな。
雑賀衆 無二
ではお言葉に甘えまして……と
大騎も来いよ。
雑賀衆 大騎
はい、失礼します!
雑賀孫市
回し飲みになっちまうが構わんよな?
雑賀衆 大騎
俺は問題ないですよ。
雑賀衆 大騎
むしろ、皆さんとこうしてやれるだなんて、
義兄弟の契りってやつみたいで嬉しいです!
雑賀衆 無二
大騎君は相変わらず純情だねぇ、
その若々しさは見習いたいもんだ。
雑賀孫市
んじゃま、お先にと……ほう。
雑賀孫市
こいつはなかなかだな、
飲んでみろよ。
雑賀衆 大騎
いただきます……これ旨いですね。
雑賀衆 大騎
いつもの酒と香りが全然違って、
無二先輩の目は相変わらず確かですね。
雑賀衆 無二
その割には懐にも優しいってな?
限られた予算で結果を出すのが
俺の仕事なもんでね。
雑賀衆 無二
……確かにこりゃ上物だ、
土産は全部これでいいかもな。
雑賀孫市
さて、各々に行き渡ったところでアレだ、
儀式にしちゃあ騒がしすぎるって話だったか。
雑賀衆 大騎
はい、俺はももっと厳かと言うか……
雑賀衆 大騎
暗い部屋で、粛々と執り行われてるような
ものを想像してました。
雑賀衆 無二
だよな、空気は妙に浮ついてるし。
雑賀衆 無二
こうして……ふう、白昼から酒にありつける
とは思ってもいなかったな。
雑賀孫市
まあ、お前らの言うとおり、つい最近までは
伝統と格式に重きを置いた辛気臭い
催しだったみたいだぜ。
雑賀孫市
だが、人が集まる所には金が集まるってもんで、
規制やら何やらが取っ払われ続けた結果。
雑賀孫市
出店が立ち並んで、見物人がごったがえし。
雑賀孫市
香ばしい匂いが漂って、気の利いた音楽まで
聞こえてくる始末になっちまったらしい。
雑賀衆 無二
先立つものが必要なのはどこも一緒ですからね、
これも当然の成り行きってやつか……
雑賀衆 無二
ところで、まだ詳しい話を聞いてないんですが、
結局のところ、儀式って何をやるんですかい?
雑賀孫市
ああ、そいつなんだが……
???
ちょっと兄さん!
なんで昼間からお酒のんでるのよ!?
[[雑賀孫六]]。
孫市と共に雑賀衆を率いる文武両道の才女。
妹として育てられてはいるが、
血縁関係にはない。
雑賀孫市
お?そっちの仕事はもう済んだのか?
孫六。
雑賀孫六
きっちり滞り無くね……じゃなくて!
お・さ・け!
雑賀孫市
だから誤解だっての、
これはそう……あれだ。
雑賀孫市
大騎のやつが義兄弟の契りを
結んでみたいと言い出してな。
雑賀孫市
まだ俺達に合流して日が浅いだろ?
背中を預けあう以上は、親睦を深めておく
必要もある。
雑賀孫市
だよな、お前ら。
無二と大騎は神妙に頷く。
雑賀孫六
本当に……?
怪しいなぁ……
雑賀孫六
まあ、無二もそう言うなら納得してあげるけど。
雑賀孫市
お墨付きが得られたところでだ、
ちょうど例の儀式について話しててな。
雑賀孫市
孫六、ちょうどいいから例の儀式について
こいつらに教えてやってくれ。
雑賀孫六
また兄さんは横着して……
まあいいけど。
雑賀孫六
で、どの辺から説明が必要?
雑賀衆 大騎
俺、戦い以外のことはからっしきしで、
そもそも退魔師?って連中のこともよく
分かってないです。
雑賀孫六
はいはい、じゃあそこからね。
雑賀孫六
戦いを生業とする人間の中でも、特に妖魔の
相手に特化した者達を退魔師と呼ぶのよ。
雑賀孫六
私たち傭兵と違って、退魔師は厳格な世襲制が
敷かれていて、その血と技術を次代へ継承し
続け、今日に至っているの。
雑賀孫六
でね、退魔師の起源までは私も分らないのだけど、
遠く昔から受け継がれている武器があって。
雑賀孫六
その武器を継承するための儀式が、
今回行われる儀式らしいわ。
雑賀衆 無二
じゃあ、退魔師のお嬢さん方もそれに?
雑賀孫六
そうよ、退魔師の真理亜さんと桜さん、
彼女達も継承候補者ね。
雑賀孫六
この里から少し離れた所に、修練場があって、
集まった候補者達が武芸を競い合い、
武器の継承者を決めるの。
雑賀衆 大騎
では俺達はその応援に来たんですか?
雑賀孫六
もちろん応援はするけど、この儀式は
後進の育成も兼ねてて、従者の参加
も許されているの。
雑賀孫六
もちろん参加できるのは、途中まで
だけどね。儀式の最後まで進めるのは
正式な候補者だけだから。
雑賀孫市
その儀式に相乗りさせて貰って、
近接戦闘の何たるかを学びなおすのが
今回の雑賀衆の仕事な訳よ。
雑賀孫市
さっき発中にも話したが、
銃の腕が立つ奴はその他が
おざなりになりがちでな。
雑賀孫市
この先も厳しい戦いが続くんだ、
お前らのケツを守りきれる
保障もねえからな。
雑賀孫市
ここでひとつ、お前らには自衛の
手段ってのを磨き直してもらうつもりだ。
雑賀孫市
俺達傭兵は死ぬところまでが契約とは言うが、
可愛い部下達が無駄死にさせるなんざ、
俺は願い下げだからな。
雑賀孫六
……酒瓶片手に格好つけてないで、
その辺をフラフラしてる異名持ちを集めてね。
雑賀孫六
明日は本番だし、早めに
打ち合わせしときたいから。
雑賀孫市
おいおい、まだ日も高いんだ、
仕事の話なんざ後回しでもよかろうよ。
雑賀孫六
日が高いからこそでしょ!
寝言を抜かしてないでさあ動く動く!
雑賀孫市
あいたたたっ!?わかった、
わかったから引っ張るなっての!
孫六は孫市の腕を掴み、
何所ぞへと引きずっていった。
雑賀衆 大騎
あの孫市様をまるで子供扱いなんて……
やっぱり孫六様は雑賀の大黒柱ですね!
雑賀衆 無二
そういうのを口にするのは無粋ってもんだ、
大騎よ、これじゃ兄貴の立つ瀬も無かろうよ。
#endregion
第3話
#region
鬼道衆との戦いを通じ、仙狐族と縁を
結ぶに至った二人の退魔師、真理亜と桜。
雑賀孫六と共に儀式への参加登録を
済ませた彼女達は、拠点として確保した
宿に戻るべく、里の目抜き通りを歩んでいた。
通りを進む者は一様に笑顔だが、
それとは対照に、真理亜は不機嫌
そうな表情を浮かべている。
[[退魔師 桜]]
さてと、かったるい仕事も終わったし、
後は寄り道しながら帰ろっか……ん?
退魔師 桜
あ、みてみて、付け耳と付け尻尾だってさ、
意外と真理亜に似合うかもね。
退魔師 桜
……って、あれ?
なんか怒ってる?
[[退魔師 真理亜]]
継承の儀が娯楽として消費されるなんて、
私には見るに堪えない光景なのです。
退魔師 真理亜
貯えが無ければ補給もままならない
のは分かります。
退魔師 真理亜
透明性を確保するために、
情報は開かれなければならないのも
分かります。
退魔師 真理亜
諸々の理由があるのは分かります、
分かりはするのですが……
退魔師 桜
ま、理解できるかどうかと、
納得できるかどうかは別の話だしね。
退魔師 真理亜
桜はどうなのですか?
退魔師 桜
うーん、悩んでる真理亜には悪いけど、
私は別にどっちでもいいかな。
退魔師 桜
情報を秘匿するのか開示するのかなんて、
上の方が散々議論した上での決定じゃん。
退魔師 桜
討滅の助けになるなら肯定するし、
邪魔になるなら否定するけど。
退魔師 桜
この件に関してはどっちも関係ないしね。
退魔師 桜
でもまあ強いていうなら……肯定かな?
おかげでこうやってお祭りを楽しめるし。
退魔師 真理亜
もう、桜ってば……
退魔師 桜
まあまあ、変に悩みとか迷いを抱えると
指先が鈍るだけだよ?
退魔師 桜
頭のお固い魔理亜も今日は観念して、
本番に向けて息抜きしちゃおうよ。
退魔師 桜
常に最高の状態で任務に挑めるよう、
自分の心も管理出来てこそ一流だからね?
退魔師 真理亜
……分かりました。
退魔師 真理亜
貴女ほどの使い手がそう言うなら、
私は従う他にありませんからね。
退魔師 真理亜
今日のところはその口車に
乗せられることとします。
退魔師 桜
そうそう、当代きっての天才退魔師こと
この私に全部任せちゃえばいいの。
退魔師 桜
じゃあさっそく、どこに行こうかなと……
あれ、そこの出店すごい人だね。
退魔師 真理亜
確かに賑わってますね。
高座のような物もありますし、
何かの見世物でしょうか?
退魔師 桜
何屋さんだろね、紙も沢山貼ってあって、
数字が並んでて……
予想屋の妖魔
さあ張った張った!
いよいよ明日に本番を控えた継承の儀、
勝ち抜くは一体どの派閥かぁ!
退魔師 真理亜
なっ!?あれは?
継承の儀を賭けの対象にするとは!
退魔師 真理亜
断じてゆる……んぐむううっ!
退魔師 桜
もう!街中で急に声をあげたり
武器抜いたりしないの!
恰幅の良い妖魔
んん?なんか揉め事かい?
お嬢ちゃん方。
退魔師 桜
あ、全然問題無いんでお構いなく。
恰幅の良い妖魔
ならいいんだけどよ……って、そりゃあ
退魔師の仮装かい?よく出来てるじゃないか。
退魔師 桜
仮装って言うか……ま、いいか
退魔師 桜
うん、せっかくのお祭りだからね、
この子と二人で仮装して遊んでるんだ。
退魔師 真理亜
(仮装?桜、何の話をしているのです)
退魔師 桜
(いいから調子合わせて、
こんな所で騒ぎになったら面倒でしょ)
恰幅の良い妖魔
なるほどね、そんな格好するくらいなんだ、
退魔師に憧れてるのかい?
退魔師 桜
まあね、将来は立派な退魔師になって、
悪い妖魔をズバズバっと討滅してやるわ。
恰幅の良い妖魔
ああ、妖魔のオレが言うのもなんだが、
申し訳ないことに、邪悪な連中も
たくさん居るからね……
恰幅の良い妖魔
退魔師の夢が叶うといいね、
応援させてもらうよ。
退魔師 桜
ありがと、機会があったらおじさんの
事も守ってあげるよ。
恰幅の良い妖魔
ハハハ、こいつは頼もしい話だ。
恰幅の良い妖魔
っと、いかんいかん、
そろそろ予想屋の話が始まる頃か、
じゃあ失礼するよ。
退魔師 桜
やれやれ、面倒臭かったわね……
じゃ、次はどこ行こうか。
退魔師 真理亜
待ってください。
退魔師 桜
ん?どしたの
退魔師 真理亜
継承の儀を賭けの対象とするのは
未だに納得できませんが、
鈴門の評価は気になります。
退魔師 真理亜
この際ですし、予想屋の話とやらも
聞いてみませんか?桜。
退魔師 桜
私は別に構わないけど、
真理亜ってそういうの
気になる人だったんだ。
退魔師 真理亜
いえ、賭けの対象のみならず、万が一、
鈴門に不当な評価が下されていたとすれば、
私は動かねばなりません。
退魔師 真理亜
そのための確認です。
退魔師 桜
そんな真顔で「動かねばなりません」って、
何をやらかすつもりなんだか……
退魔師 桜
まあいいや、それはそれで
面白い気もしてきたし。
退魔師 桜
鈴門に対する忌憚の無いご意見も
聞いてみたいしね、行ってみよ。
#endregion
第4話
#region
予想屋の妖魔
じゃあここいらで、楽しい楽しい継承の儀に
ついての改めておさらいだ。
予想屋の妖魔
退魔師の偉大なご先祖様が遺した聖剣を求め、
選ばれし五人の継承者はこいつらだぁ!
退魔師 桜
(聖剣じゃなくて聖鞭でしょ、
ほんっとに適当なんだから)
退魔師 真理亜
(これは先が思いやられます……)
予想屋の妖魔
分家筋にも関わらず、近年は目覚ましい活躍を見せる
「森栖家」からはこの男。
予想屋の妖魔
金髪碧眼の退魔師、丈二(ジョウジ)が参戦だぁ!
予想屋の妖魔
体術の才能に恵まれてはいるものの、
厳しい面子に囲まれた、苦戦は必至か!?
予想屋の妖魔
倍率も頭一つ抜けてしまったこの彼、
一攫千金狙いなら、間違い無く外せない!
退魔師 桜
(うーん、これは妥当な評価ってとこかな?
実際問題厳しいでしょ、彼)
退魔師 真理亜
(力不足な感は否め無いですね、
継承候補者である以上、戦えるとは思いますが)
予想屋の妖魔
お次は刀での戦いに特化した一門、
「月風家」より参戦!
予想屋の妖魔
静かなる末弟こと太郎丸だ!
予想屋の妖魔
月風家伝来の霊剣を携えつつ、爆弾、手裏剣と
多彩な武器を使い分ける対応力の高さは要注目!
退魔師 真理亜
(月風の方が聖鞭を握っても
使いこなせないのでは……)
退魔師 桜
(権力争いの道具にでもするんじゃない?
あんな剣を抱えてるのに欲張りな連中だよね)
予想屋の妖魔
そして忘れちゃならない!歴史の浅さを物ともせず、
飛躍を続ける「協会」より放たれし美しき刺客!
予想屋の妖魔
夢想旋律こと、紗於奈(シャオナ)!
予想屋の妖魔
「協会」の討伐数番付で圧倒的首位を走る彼女、
果たして聖剣を持ち帰ることはできるのか!?
予想屋の妖魔
腕前は言うに及ばず、その華麗な闘法は見る者を魅了し、
瞬く間に虜にされてしまうと専らの噂だ!
退魔師 桜
(へえ、例のあの子が出てくるんだ……
真理亜も知ってる?)
退魔師 真理亜
(伝え聞く限りですが、協会の切り札とも)
退魔師 桜
(そうそう、かなりの使い手らしいから、
お手並み拝見できる良い機会かもね)
予想屋の妖魔
さて、候補者の情報が出揃ったところで
次はいよいよお待ちかねの……
退魔師 桜
ちょっ、ちょっと、まだ出揃ってないでしょ!
残り二人はどうなってるのよ!
予想屋の妖魔
んん? ああ……
予想屋の妖魔
まー、確かにまだと言えば
そうなんだが……
鈴門の紹介って要るか?
退魔師 桜
(やばっ! 当然のように無視されたから、
つい大きい声を出しちゃった)
退魔師 真理亜
見ての通り、退魔師の格好を模してはみたものの、
恥ずかしながら、知識がまるで追いついていないのです。
退魔師 桜
(流石は優等生、機転を利かせてくれちゃってるじゃん)
退魔師 桜
そ、そうそう! だからさ、鈴門……?
の参加者についても教えてくれない?
予想屋の妖魔
了解了解、これから金を賭けるんだ、
情報はしっかりと握っとく必要があるよな。
予想屋の妖魔
では改めて、退魔師一門の中でも他に並ぶ者が無い
化け物集団「鈴門」からは何と二人も参戦だ!
予想屋の妖魔
……とは言ってみたものの、秘匿主義の根強い
鈴門だ、桜と真理亜って言う名前以外は何も
情報が出回って無くてな。
予想屋の妖魔
でもまあ結局のところは鈴門が持っていくだろうな。
予想屋の妖魔
手堅く金を増やしたいなら、この桜か真理亜かの
どっちかに賭けとくのがいい。
退魔師 桜
鈴門が凄いのは分かったけど、
それじゃ賭けにならなくない?
予想屋の妖魔
そのとおり、大穴を夢見る連中が
いなけりゃそもそも賭けが成立しない。
予想屋の妖魔
それほどまでに圧倒的な連中だよ、
鈴門ってのはな。
退魔師 桜
なるほどね……
ありがと。
退魔師 桜
じゃあ私は桜って言う退魔師に
賭けとくね。
予想屋の妖魔
へい毎度あり、儀式が終わるまで
この券は大事にしとくんだよ。
退魔師 真理亜
(桜! 私達は話を聞きに来たのであって
賭けるなんて……!)
予想屋の妖魔
さあ、連れの嬢ちゃんの方はどうする?
予想屋の妖魔
大物食いが起きるとすれば「協会」の奴が
やってくれそうだが。
退魔師 真理亜
私はその、別に……
退魔師 桜
…………
退魔師 真理亜
……!
退魔師 真理亜
分かりました、真理亜に賭けます。
予想屋の妖魔
おし、じゃあこいつを渡しとくからな、
もし的中したら引き換えに来てくれよ!
退魔師 桜
私は願掛けみたいで面白そうだから買ったのに、
まさか真理亜まで乗ってくるとはね。
退魔師 真理亜
まったく……あんな挑戦的な目を
向けておきながら、よく言いますね。
退魔師 桜
あ、やっぱり分かっちゃった?
退魔師 真理亜
当然です、私だって付き添いではなく、
聖鞭を握るため、ここに立っているのです。
退魔師 真理亜
継承の儀、例え真理亜が相手でも、
私は必ず勝利してみせます。
退魔師 桜
(ふふふっ、
それでこそ私の友達かな……)
退魔師 桜
こっちも勝ちを譲るつもりはないから、
明日からは全力で勝負ね。
退魔師 真理亜
ええ、互いに悔いの残らぬよう、
存分に。
退魔師 桜
さてと……真面目な話したら
お腹減っちゃった。
退魔師 桜
その通りの出店、
端から順に食べてこうよ、
先に行って買ってるね。
退魔師 真理亜
端から全部なんて無理……
ああ、もう行ってしまいました。
退魔師 真理亜
(私と桜の実力差を考えれば、
結果は火を見るよりも明らかです)
退魔師 真理亜
(でも、それでも……)
退魔師 真理亜
(私は……)
駆け出して行く桜を見つめながら、
無意識の内に拳を握り締める
真理亜であった。
#endregion
第5話
#region
日が落ちて以後も、未だ勢いが衰えない
里の様子を尻目に、雑賀孫市は
鈴門家との合同会議に臨んでいた。
雑賀孫市
ったく、とんだ貧乏クジ引かされた
もんだぜ……あいつらは今も遊んで
回ってるってのによ。
雑賀孫六
もう、兄さんは雑賀の代表なんだから、
仕方無いでしょ?
雑賀孫六
いつまでも不貞腐れてないで、
いい加減観念しなさい。
退魔師 桜
ねえねえ真理亜、
向こうもああ言ってるし、
今日はもうお開きにしようか?
退魔師 桜
根を詰めるのもよくないし、
儀式に向けて英気を養うのも!
退魔師 真理亜
貴女まで妙なことを言わないでださい。
根を詰めるも何も、まだ始まって間も
ないでしょう?
雑賀孫六
じゃあ気を取り直して、
真理亜さん、お願いできる?
退魔師 真理亜
はい、儀式のおおまかな
流れからですね。
退魔師 真理亜
儀式は過去の退魔師による、
討滅の足跡をなぞる形で進行します。
退魔師 真理亜
森を抜け、川を渡り、洞窟を進む……
様々な行程を経て、吸血種の居城に辿
り着くまでが、当面の目標ですね。
雑賀孫六
付き添いが許されるのは、
城に辿り着くまで……でしたっけ?
退魔師 真理亜
ええ、儀式遂行のため城に入れる
のは継承候補者だけです。
退魔師 真理亜
雑賀衆の皆さんは城の傍にある
退魔師の拠点でお待ちいただく
事になります。
雑賀孫市
城までの道中も、
何やら物騒な事になってる
らしいな?
退魔師 真理亜
はい。
過去の退魔師達がそうだったように、
行く手を遮る魔獣との戦闘が発生します。
退魔師 真理亜
城までの経路は無数にありますので、
候補者の一団はそれぞれ別の道を進みますが、
そのいずれにも、魔獣が徘徊しています。
雑賀孫六
広大な自然にお城、それに加えて
魔獣まで管理してるなんて、
凄い規模の修錬場なのね。
退魔師 桜
まあね、ここは儀式やって無い時でも
普通に使われてるし。
退魔師 桜
私と真理亜も昔はよくここで
経験を積んでたんだよ。
退魔師 真理亜
ちなみに桜は二つの区間での
記録保持者です。
雑賀孫六
へえ……随分な使い手だとは
思ってたけど、やっぱり凄かったんだ。
退魔師 桜
まあ昔の話だけどね……って、
なんで真理亜はそんなに得意気なのよ。
退魔師 真理亜
当然です、桜は私の誇りですから。
退魔師 真理亜
ちなみに、昔の話と言いながら未だ記録
は破られていませんけどね。
雑賀孫市
候補者の一団は別々の道を進むとあったが、
お嬢ちゃん達も別か?
退魔師 真理亜
はい。鈴門という括りではありますが、
私と桜は個別に継承の儀に参加します。
退魔師 真理亜
そのため、雑賀衆の皆さんも
隊を二つに分けてご同行いただく
ことになりますね。
雑賀孫市
了解だ。
となりゃいい感じに人員を
配置する必要があるな……
雑賀孫市
それぞれの経路について、
何か情報は貰えるのか?
退魔師 桜
経路は無数にあって、
どこを進むのかの割り振りも
出発直前になるの。
退魔師 桜
だから、事前に情報を握って
対策するのは無理だよ。
雑賀孫市
ま、そうなるわな。
なるべく戦力を均等にして、
対応力を上げるくらいしか手は無いか。
雑賀孫六
配置は私が進めておくわ、
あとは規則とか罰則とか、
決まり事はある?
雑賀孫六
私達みたいな外様の人間が
粗相して、儀式が台無しなんて
事になっちゃうと申し訳無いしね。
退魔師 真理亜
他の継承者への妨害行為は
禁じられておりますが……
他はこれといって特に。
退魔師 桜
継承の儀の前半戦って、
実戦形式で進むからね。
退魔師 桜、
各々が好きなように好きな方法で
目的地を目指す感じかな。
退魔師 真理亜
ええ、刻限こそ設けられていますが、
到着順による優劣などもありません。
退魔師 真理亜
己の実力を踏まえ、
問題が起きれば臨機応変に
対処しつつ城を目指す……
退魔師 真理亜
ですので、孫六さんが懸念される
ような問題は特に発生しないかと。
雑賀孫市
なるほどねぇ……
雑賀孫市
ん? 前半戦ってことは、
後半戦だとまた勝手が違うのか?
退魔師 桜
城内で何をするかについては、
私たち候補者にも知らされてないのよ。
退魔師 桜
でも、複数の候補者から一人を
絞り込む訳でしょ?
退魔師 桜
私は何でもあり、
情け無用の聖鞭争奪戦開始と
睨んでるけど……
退魔師 桜
もしそうなったら、
よろしくね、真理亜!
退魔師 真理亜
はい。
貴女を失望させない程度には、
食い下がってみせましょう。
雑賀孫六
ごめん、ちょっといいかしから?
退魔師 真理亜
はい、なんでしょう?
雑賀孫六
私達から見れば、真理亜さんも
とんでもない使い手だと思うけど。
雑賀孫六
桜さんが話に絡むと、
妙に謙遜が過ぎるというか。
雑賀孫六
自己評価が低くなるというか……
雑賀孫市
おい、失礼だぞ孫六。
人様の心に土足で踏み込むような
真似はよせ。
雑賀孫六
……!?
ごめんなさい、私ったら。
少し困ったような、
それでいて悲しそうな
表情を浮かべる真理亜。
だが次の瞬間には、
いつもの様に落ち着き払った
表情へと戻っていた。
退魔師 真理亜
いえ、いいんです、
孫市さん。
退魔師 真理亜
これに関してはちょっとした、
何と言うか、古傷のようなものなので……
退魔師 真理亜
はい、特に気にしていただかなくても、
大丈夫です。
退魔師 桜
(真理亜ったら……
まだあの日のことを……)
雑賀孫六
ありがとう真理亜さん。
もし、私達で力になれるなら
何でも相談してね?
退魔師 真理亜
はい。
雑賀衆の方、そして仙狐族の
方々とはご縁もありますし。
退魔師 真理亜
明日より始まる継承の儀もそうですが、
今後ともよろしくお願いいたします。
雑賀孫市
よし、話もまとまったところで、
今日はお開きにしとくか。
退魔師 桜
だね、明日からもよろしく。
雑賀孫市
おう、よろしくな。
雑賀孫市
孫六はさっき話に上がった、
人員配置の件を頼んだぞ。
雑賀孫六
うん。ちょうど割り切れる頭数だし、
戦力を均等にしておくね、
兄さんはどうするの?
雑賀孫市
他の連中の様子でも
見て回ってくるとするかな。
雑賀孫市
クセの強い奴も多いんだ、
どこぞで騒ぎを起こしてるとも
限らんしな。
雑賀孫六
明日からは本番なんだし、
あまり飲みすぎないようにね……
雑賀孫六
って、もう居ないし。
雑賀孫市
里に来るまではなかなかの
強行軍だったのに、みんな元気
なんだから……
雑賀孫市
ま、そうでも無きゃ傭兵なんて
勤まらないか、私も仕事済ませて
遊びに行こうっと。
-----
月明かり差し込む薄暗い部屋、
初老の男と、凛とした佇まいの女が
机を挟み向かい合っている。
深くしわが刻まれた表情の奥に、
煌々と生気に満ちた瞳を宿す男が告げた。
男
いよいよ明日より継承の儀じゃ、
抜かりはあるまいな?紗於奈(シャオナ)よ
女
問題ございません。聖鞭を手にし、
我らが協会へ持ち帰ってみせましょう。
男
うむ。その身に修めた技の数々、
十全に発揮できれば
鈴門の連中にも遅れは取るまい。
男
力は適切に管理、運用されなければ
ならぬ……それが強大であれば尚のこと。
男
紗於奈、力を持たぬ民草のため
協会の一員として、機能せよ。
女
育ての恩に報いるためにも、必ずや。
男
その意気じゃ、明日の出立に向けて
の準備もあろう、下がるがよい。
男
万に一つが許されぬ身じゃ、
弦の調律も念入りにな。
紗於奈
はい。失礼いたします。
男
……
男
悲願の成就まで、あと少し、
ほんの少しで手がかかる所まで来た。
男
我らをお導き下され、
宵の君よ……
#endregion
**[[二章 合同作戦>仙狐修練-退魔師-/二章 合同作戦]]
**[[三章 相互接触>仙狐修練-退魔師-/三章 相互接触]]
**[[四章 暗雲立ち込める>仙狐修練-退魔師-/四章 暗雲立ち込める]]
**五章 反撃の狼煙
第1話
#region
#endregion
第2話
#region
#endregion
第3話
#region
#endregion
第4話
#region
#endregion
第5話
#region
#endregion
**六章 Bloodlines
#region
#endregion
第1話
#region
#endregion
第2話
#region
#endregion
第3話
#region
#endregion
第4話
#region
#endregion
**エピローグ
#region
#endregion
*主要人物
-[[雑賀孫市]]
--雑賀衆の代表者
--仙狐族の協力者の中でも最古参の一人として数えられる
-[[雑賀孫六]]
--雑賀衆に所属し孫市の補佐を務めている
--孫市の妹として育てられるが血の繋がりは無い
-[[退魔師 桜]]
--退魔師の集団「鈴門」に属する若き天才
--異才が集結する仙狐族に強い興味を持っている
-[[退魔師 真理亜]]
--退魔師の集団「鈴門」に属している
--自己評価の低さから力を発揮しきれていない
-[[退魔師 紗於奈]]
--退魔師の集団「協会」に属している
--確かな腕前を持つが感情の起伏がやや乏しい
-[[平賀源内]]
--仙狐族の参謀として旗揚げ直後からその頭脳を発揮している
--死後、記憶を引き継いだまま妖魔に転生した元人間
-ひまり
--とある事情により蘇った仙狐族の始祖
--比類無き力を持つが言動が時折おかしくなる
-紫音
--■■■■の妹
--■■■■が抹消された後は役割を引き継ぐ役目を負っている
-天道
--■■■■と紫音の父親
--長らく消息不明だったがつい先日に帰還を果たした
*登場人物
#region
[[雑賀孫市]]
[[雑賀孫六]]
[[雑賀衆 小雀]]
[[雑賀衆 蛍]]
[[雑賀衆 無二]]
[[雑賀衆 坦中]]
[[雑賀衆 発中]]
[[雑賀衆 下針]]
[[雑賀狐 菊華]]
[[雑賀狐 大騎]]
[[退魔師 桜]]
[[退魔師 真理亜]]
[[退魔師 紗於奈]]
[[ひまり]]
[[当代仙狐王 紫音]]
[[先代仙狐王 天道]]
[[平賀源内]]
[[立花道雪]]
[[天照皇大神]]
[[伝令狐 沙耶]]
[[伊能忠敬]]
[[イタコ]]
[[ヘルメス・トリスメギストス]]
#endregion
*後序
以上が事件の顛末となる。
彼が消されてしまい、あなたが観測出来なく
なってしまった以降も、妖魔界は騒がしかったと言う事さ。
さて、ここに記された内容を見て貰った上で
改めて問い直したい。
あなたが求める物がここで得られそうも無い場合、
これ以上お付き合いいただくのも申し訳無いからね。
おっと、先にこちらを確認しているあなたが居る場合だ。
大変恐れ入るが、プロローグの辺りまで、
回れ右としてもらえると助かるよ。
では改めて、全く同じ言葉で問わせてもらうよ。
一方的に打ち切られた英雄譚、
その続きをあなたは見届けるつもりはあるかい?
[[差し伸べられた手を取る。>interlude]]
[[思い出は思い出のままとしておく。>https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/1.html]]
2022-03-25T15:14:07+09:00
1648188847
-
仙狐修練-退魔師-/三章 相互接触
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/1046.html
**三章 相互接触
第1話
#region
天道の夢に現れ、外敵の存在を
告げた謎の協力者。
紫音とひまりは、協力者との
接触手段を調査する源内より、
実証実験の準備が整ったと告げられる。
情報の足りない仙狐族にとって、
協力者との接触は急務。
紫音らは足早に源内の研究室へ向かう。
仙狐王 紫音
上手くいくといいですね、
ひまりさま。
ひまり
源内のやつも勝算ありとは
言っておったが……どうなる
ことやらのう。
ひまり
お、源内の部下が出迎えに
来たようじゃな。
絡繰隊 鈴音
若殿様、ひまりさま、
ようこそ。
仙狐王 紫音
お久しぶりです鈴音さん、
お体の調子は大丈夫ですか?
絡繰隊 鈴音
最近は忙しくて調整する暇が無いけど、
動きはするから大丈夫。
ひまり
源内の所は労働環境が真っ黒だと
聞いておるからのう、
あまり無理はするでないぞ。
絡繰隊 鈴音
ひまりさまもありがと。
でも、みんな好きでやってることだし。
絡繰隊 鈴音
それに、世界の一大事なんでしょ?
だったら、せっかく拾ったこの命は
みんなのために使いたいよ。
ひまり
ふん、頼もしい奴め、
流石はわしの末裔じゃな。
仙狐王 紫音
そうですね、皆さんあってこその
仙狐族ですから。
絡繰隊 鈴音
よし着いた、いま開けますね。
鈴音が扉の隅に設置されてる、
数字が刻印された装置を操ると
研究室の扉が左右に開いた。
ひまり
源内の奴め、相も変わらず
好き勝手に城を弄りおって!
なんじゃその怪しい仕掛けは。
仙狐王 紫音
あはは……
仙狐王 紫音
源内さんの研究室がある
一画は、もう別世界に
なっちゃってますよね。
絡繰隊 鈴音
源内様、お連れしましたよ。
平賀源内
ご苦労だった鈴音君、
後は私が引き継ごう。
ひまり
わしらが呼び出されたと
言うことは、既に手筈が
整ってると考えていいのじゃな?
平賀源内
ああ、既に準備は終えている、
すぐにでも取りかかれるだろう。
仙狐王 紫音
お父さんの夢に出てくる人と、
イタコさんを介してお話してみる
んですよね。
仙狐王 紫音
上手く行くといいんですが……
平賀源内
まあ、我々も手は尽くしてみたが、
勝算は五分五分と言ったところだね。
ひまり
仮に失敗したとして、それでも何かしらは
得られるじゃろう。
ひまり
今はとにかく足を動かす事じゃな。
仙狐王 紫音
でも、私達だけでいいんでしょうか。
仙狐王 紫音
詳しい情報を得られるかもしれないなら、
皆さんにも来てもらった方がいいような?
平賀源内
ああ、それに関してだが。
平賀源内
件の協力者が積極的な行動を「取らない」
のではなく「取れない」と仮定した場合に
懸念される諸々があってね。
平賀源内
詳しい説明は省かせてもらうが、
秘密の話は少人数で行うべき
との結論さ。
ひまり
下手に衝撃の事実が発覚しても
無用な混乱を生んでしまうからのう。
ひまり
で、その実証実験とやらは
いつ始めるんじゃ?
平賀源内
では始めるとしようか、
イタコ君、聞こえるかね?
イタコ
問題無いよ。
もう始めていいの?
平賀源内
ああ、よろしく頼むよ。
ひまり
伝声管か、イタコは別室に
控えておったのじゃな。
平賀源内
彼女の交信を補助すべく、ありと
あらゆる媒介を集めたからね。
平賀源内
結果、この部屋に収まる量ではなく、
専用の場所が必要となってしまったのだよ。
イタコ
…………そろそろ掴めそう。
仙狐王 紫音
わっ、行けそうな感じですよ、
ひまり様。
ひまり
頼むぞイタコよ……
イタコ
掴んだ、もういつでも降ろせるけど?
平賀源内
頼む、やってくれたまえ。
イタコ
うん、後はよろしくね……
イタコ
…………
イタコ
……
イタコ?
いやはや、まさかこんな方法があるなんてね。
ひまり
おお! こいつは大当たりか?
仙狐王 紫音
男の人の声がする……
イタコさんって凄いんですね。
イタコ?
既存の概念に落とし込みさえすれば、
あくまでこの世界の中の事象となるか。
イタコ?
流石は君達だ……いや、
君達だからこそと言うべきかな。
ひまり
むむむ、勿体を付けるような
面倒臭い言い回し……
ひまり
さては貴様、源内の同類じゃな!
仙狐王 紫音
ひまり様は源内さんにそんな評価を
下していたんですね……
平賀源内
出会って早々だがまずは一点だけ、
重要な部分を確認したい。
平賀源内
このような状況が続く場合、私達や君
にとって、何らかの不都合が発生するか?
イタコ?
ああ。面白い手段を用意してくれたおかげで
かなり余裕は生まれたが、それでも有限だよ。
平賀源内
やはり何らかの要因で、
積極的な手段を「取れない」状況に
置かれていたと言う事か……
イタコ?
だね、話が早くて助かるよ。
仙狐王 紫音
(ひまり様、お二人が何をお話してるか
わかりますか?)
ひまり
(かろうじてと言った所かのう……
まあ、基本的には源内に任せておこう)
イタコ?
と言う訳だ、あまりのんびりも
していられないので手短に行こうか。
イタコ?
既に警告を送っているように、
君達に未曾有の危機が迫っている。
イタコ?
君達の世界に生きとし生けるもの、
全てにとってだ、例外は無い。
平賀源内
その危機とは、ある種の武力侵攻と
考えて間違いないかね?
イタコ?
ああ、僕達は彼らを混沌と呼んで
いるが、君達と同じように社会生活を
営む知的生命体さ。
イタコ?
その混沌に次なる標的と見定め
られてしまったのが、君達の世界だね。
イタコ?
(正確には今回で2回目なんだが、
それを説明している時間までは
無さそうだ……)
平賀源内
では次だ。
平賀源内
手を差し伸べると言うことは、
我々にはまだ希望が残っていると
考えてもいいのかね?
イタコ?
かなりの綱渡りを強いる
事にはなるけど、まだ手遅れ
ではないよ。
平賀源内
それは何よりだ。
平賀源内
避けられない破滅を伝える事で、
覚悟を決める時間を提供して
くれているだけ……
平賀源内
そういった説も上がっては
来ていたからね。
イタコ?
そしてここからが重要なんだけど。
イタコ?
混沌と正面切って戦っても
君達が勝てる望みは無い。
イタコ?
なので、君達の勝利条件はただ一つ、
混沌との戦いを回避する事だ。
イタコ?
彼らは世界を渡る手段として、
とある船を用いるんだけど。
イタコ?
これは死者の爪を原動力としていてね。
イタコ?
爪と言っても概念の話だから、
実際に爪を集める必要は無いんだけど……
イタコ?
まあ、この世界で発生する死者の数が
閾値を超えると船が発動して、混沌が
大挙してやってくる。
イタコ?
そう考えてくれた方が
分かりやすいかな。
ひまり
死者の数を減らせと来たか……
であれば、争いなどは
もっての他じゃな。
イタコ?
だからこそ混沌は、この世界に
尖兵を送り込んで争いが起きる
ように仕向けているんだ。
ひまり
先兵を送り込むじゃと?
まさか……
イタコ?
そう、君達は黒衣の男と呼んでる者さ、
名はロキと言うよ。
平賀源内
これで合点が行ったよ。
平賀源内
争いの場においては目撃証言が
絶えないが、その正体も目的も
一切不明。
平賀源内
火種を振りまく事こそが、
奴の目的だったのか。
イタコ?
ロキは鬼道衆にも肩入れしててね、
彼らの勢いが未だに衰えないのも
それが原因さ。
イタコ?
その点からも、この世界の死者を
減らすには鬼道衆を何とかするのが
一番手っ取り早いね。
ひまり
争いが長引けば長引くほど、
無駄な血が流れ、混沌の連中を
喜ばせるということか。
仙狐王 紫音
鬼道衆の事まで知ってるなんて、
私達の事情をよくご存じなんですね。
イタコ?
まあね、直接的な積極は難しいが、
観測させてもらう分には安全なんだ。
イタコ?
一方的に覗き見される君達から見れば、
これも迷惑話だろうけどね。
平賀源内
こうして協力してくれるのであれば
問題は無いよ、命あっての物種さ。
平賀源内
では、我々はこの世界における死者の
総量を減らすべく、鬼道衆の鎮圧を
進めるのが当面の目的で相違無いかね?
イタコ?
うん、それが一番合理的だ。
イタコ?
多少の戦乱や天変地異程度じゃ船は
発動しないけど、鬼道衆の存在だけは
看過出来ないからね。
ひまり
鬼道衆の奴らに関しては、
受け身ばかりで苦汁を
飲まされて来たからのう。
ひまり
攻勢に転じなければならんとは
考えていた所じゃ、むしろ
良い機会じゃろう。
イタコ?
……そろそろ時間みたいだ、
これ以上の交信は混沌に
嗅ぎつけられてしまう。
イタコ?
ほとぼりが冷めた頃にまた
情報を交換しようか、詳細は
天道に伝えておくよ。
仙狐王 紫音
何からなにまで親切にありがとう
ございます。
仙狐王 紫音
えっと……お名前はなんでしたっけ?
イタコ?
これは失礼した、僕から見れば
君達は旧知の知り合いみたいな
ものだからね……
ヘルメス
僕の名は ヘルメス・トリスメギストス。
理不尽に抗い、混沌に牙を剥く者さ。
#endregion
第2話
#region
檀上の男
……であるからして、
管理無き力とは
単なる暴力に他ならず……
雑賀衆 小雀
ふわああ……
話が長すぎなんだけど。
雑賀孫六
あくびなんかして……
ほら、ちゃんと聞かないと駄目でしょ?
背も伸ばしなさいって。
雑賀衆 下針
でも退魔師の理念なんてどーでもよくね?
さっさと本題にはいりゃいいのに。
雑賀衆 無二
年寄りの話は長いってのが相場だからな、
まあ、しばらくの間は辛抱しとこうぜ。
偉大な退魔師が遺した武器を
巡り、候補者達が競い合う継承の儀式。
儀式も後半戦を迎え、会場となる
城の入口では関係者が一同に介し、
式辞が執り行われていた。
雑賀衆も対外的には鈴門家の
関係者として同行している以上、
列席を余儀なくされている。
雑賀孫六
ちょっ、ちょっと大騎、
なんで立ちながら寝てるのよ!
雑賀孫六
真理亜達の印象が悪くなるでしょ、
全く………ほら、さっさと起きる!
雑賀狐 大騎
ふええっ……へっ?
しゅ、しゅみません……
雑賀孫六
もう、みんなしっかりしなさいよ……
兄さんもちゃんと言ってやってよね。
雑賀孫市
…………
雑賀孫六
あれ……どうしたの兄さん?
雑賀孫市
(あの長髪は間違いねえな……)
雑賀孫市
(紗於奈と言ったか、あの晩の
女も候補者だったとはな)
雑賀孫六
兄さん?
雑賀孫市
お、おっと!
どうした、何かあったのか?
雑賀孫六
何かあったのかじゃないわよ……
雑賀孫六
私達は一応鈴門の関係者だし、
行儀良くしてもらっててもいいかしら?
雑賀孫市
確かに、真理亜達の顔に泥を
塗る訳にはいかねえからな。
雑賀孫市
と言う訳だお前ら、フリでも構わん
から大人しくしとけよ。
雑賀孫六
もう、贅沢言ってられないし
それでもいいわよ……
檀上の男
では、此度の儀式にて候補者達に
課せられし試練の内容を発表する。
檀上の男
候補者には、城の最奥に存在する、
試しの間を目指してもらう事に
なるが……
檀上の男
此度の試練においては、唯一人として
脱落者を出すことは許されぬ。
檀上の男
必ず、候補者の全員が試しの間まで
辿り着くこと。
檀上の男
それが叶わぬ場合、聖鞭を手にする
資格無しとみなし、全員が失格した
として扱う事とする!
雑賀孫市
ふーん、連帯責任ってか?
争奪戦でもおっぱじめると
思ってたんだがな。
雑賀孫六
確かに意外よね……
周りもざわめき始めたみたい。
退魔師の男
ひとつよろしいか、房善殿。
檀上の男
構わぬよ。
退魔師の男
継承の儀式とは、聖鞭を巡って、
各々が磨いた技を持って競い合う、
あくまでも競争の場だ。
退魔師の男
聖鞭は一本、候補者は五人、
これでは数が合わないが、
どうされるおつもりだ?
檀上の男
無論、試しの間に全員が辿り着いた
後も儀式は継続される。
檀上の男
じゃがその内容は、この場で
明かす事は出来ぬ。
檀上の男
以後の試練については、
実際に到達した候補者にのみ
その内容が明かされるのじゃ。
退魔師の男
何だと!?
そんな前例は今まで……
檀上の男
無論、此度の儀式の内容ついても、
儂の独断ではなく、各派閥の承認
を持って決定されておる。
檀上の男
前例無き事は十分承知!
儂らも古き因習に縛られず、
変化を受け入れる勇気を持たねばならぬ。
檀上の男
一握りの天才が全てを解決する、
そんな時代はもう既に終わりを
告げたということじゃ……
雑賀孫市
へえ、あの爺さん……房善だったか?
見た目の割に、なかなかやるじゃねえか。
雑賀孫市
普通は歳を食っちまったら変化を
恐れるもんだが、それを自ら変えて
いこうなんてな。
雑賀孫六
彼、退魔師の中では急進派の
代表格として知られてる人物よ。
雑賀孫六
協会の代表も務めていて、
その発言力は鈴門も無視が
出来ない程になっているんだって。
雑賀孫六
ただ、黒い話も尽きないらしいし……
真理亜からは、老獪な人物だから
注意してと聞いてるわ。
雑賀孫市
相変わらず耳聡い奴だな、
女ってのはどうも噂好きで困るぜ。
雑賀孫六
兄さんも雑賀衆の代表なんだから、
これくらいの情報は頭に入れて
おいてもらいたいんだけど?
雑賀孫市
まあ、小難しい政治の話は、
頭の回転が早いお前が適任だろう。
雑賀孫六
はいはい。相変わらず
馬の耳に何とやらなんだから。
雑賀孫市
お? 周りが拍手してるし
ようやく終わりか?
雑賀孫六
そのようね。
雑賀孫六
真理亜達も出発するみたいだけど、
最後に顔でも見せに行く?
雑賀孫市
ああ、仲間が頑張ろうってんだ、
冷やかしに行くのが礼儀だな。
雑賀衆 無二
そこは素直に激励するか。
でいいでしょうに……
相も変わらず捻くれていらっしゃる。
雑賀衆 小雀
それでこそ孫市様って気も
するけどね。
雑賀衆 蛍
同意する。
----------
真理亜、桜の二人を見送るため、
継承候補者達が控える開始地点
にやってきた雑賀衆。
他の候補者達の縁者も同様に
集まった結果、辺りには
人だかりが出来ていた。
退魔師 桜
わざわざ見送りに来るなんて、
傭兵の割には義理堅いのね。
雑賀孫市
知らなかったか? 雑賀衆の旗印は
義理と人情なんだぜ。
雑賀孫市
単に金に欲しさで殺して回るような、
一山幾らの傭兵と一緒にされちゃ
困るな。
退魔師 真理亜
それは素晴らしい。
また一つ、皆さんについての
理解が深まりました。
雑賀孫六
(私も知らない旗印の話は
ほっとくとして……)
雑賀孫六
急に来ちゃってごめんね二人とも、
お邪魔じゃなかった?
退魔師 桜
別にいいよ、騒がしいのも
嫌いじゃないし……
だよね? 真理亜。
退魔師 真理亜
はい。
この度はご足労いただき
ありがとうございました。
雑賀衆 無二
ま、俺達も城では同じ釜の飯を
食ってる訳だしな。
雑賀衆 無二
仲間の門出ってんなら、
そこは駆け付けねえとだ。
雑賀衆 下針
そう言うことだ、アタシらは
ここで留守番してるが、
気張ってこいよ!
雑賀衆 蛍
聖鞭の入手は戦力の向上に
大きく寄与するのは間違いない。
雑賀衆 蛍
戦術的な観点からも、
お二方には奮戦していただきたい。
雑賀衆 小雀
桜は個人的にも応援してるし、
頑張ってよね?
雑賀衆 坦中
んん? 個人的って何の話だい?
雑賀衆 小雀
やばっ……
いや、別にそんなのどうでも
いいじゃない。
雑賀衆 小雀
ほら、坦中も見送りの……
雑賀衆 下針
ああ、前に言ってたアレだろ?
桜とは身長がどうのこうの。
雑賀衆 小雀
うっさい馬鹿! 黙ってろ!
雑賀孫六
なるほど、妙な所で共感して
いたのね……
雑賀衆 発中
とってもお強いお二人です、
この先も問題ないと思いますが、
どうか気を付けてください。
雑賀狐 菊華
だね、二人は鬼強いけど、
だからこそ足元を
すくわれないようにね。
雑賀狐 大騎
この先は応援しか出来ませんが、
お二人なら大丈夫です、
頑張ってください!
退魔師 真理亜
みなさん……ありがとうございます。
退魔師 桜
だね、たまにはこういう
暑苦しいのも悪くないかな?
雑賀孫市
と言う訳だ、俺達も良い経験を
積ませてもらったし、後は儀式を
勝ち抜いて大団円と行こうぜ。
退魔師 桜
任せておいて、私と桜の二人が
挑む以上、鈴門の勝利は揺るがないわ。
退魔師 真理亜
ええ、必ずや結果を持ち帰って
見せます。
雑賀孫六
ふふ、じゃあ私達は大船の上で
待たせてもらっているね。
雑賀孫市
ところで、儀式の開始はいつに
なるんだ?
退魔師 真理亜
そろそろかと、あの跳ね橋が
降りるのが合図になります。
雑賀孫市
やっぱりあそこから城に乗り込んで
行く訳か、いかにもな跳ね橋だからな。
雑賀孫市
……じゃあ、まだ開始までは
若干の猶予があるって事か。
退魔師 真理亜
ええ、それが何か?
雑賀孫市
いやなに、他の候補者の様子でも
見て回ってみようかなってさ。
雑賀孫市
別に野次馬は禁止されてないだろ?
退魔師 桜
そこは問題ないけど、物好きな
奴だね。
雑賀孫市
まあな、俺はいつまでも好奇心を
忘れない男で居たいのさ。
雑賀孫市
じゃあ俺はここまでだ、
頑張れよ二人とも。
#endregion
第3話
#region
城へと続く跳ね橋の付近は、
開始の合図を待つ継承候補者と、
その縁者達でごったがえしていた。
また、各所では先ほどの真理亜、
桜らと雑賀衆のように、見送りの
言葉が交わされている。
そんな中、孫市は人の輪から外れた
場所に目的の人物を見つける。
雑賀孫市
やはりあの髪は紗於奈だったか、
悪いな、邪魔するぜ。
紗於奈
貴方は誰ですか?
協会の者は房善様以外に
来ていないはず……
雑賀孫市
俺は雑賀孫市ってもんでな、
あの晩は世話になったぜ。
雑賀孫市
おかげで風邪をひく事も、
虫に刺される事も無く、
布団で気持ちよく眠れたぜ。
紗於奈
孫市……ああ、
あの時のお調子者ですね。
雑賀孫市
冷静な表情のままで
面と向かって言われるのは
意外と堪えるな……
雑賀孫市
だが俺の見立ては正しかった、
やっぱり声の印象そのままの、
見事な別嬪だったぜ。
紗於奈
要件はなんでしょうか。
紗於奈
まさか、私の顔の造りを
確認されに来たのでは
ないでしょう?
雑賀孫市
まあそれもあるが……
そんな大層な要件はねえよ。
雑賀孫市
ただ、見知った奴を見かけたから
声をかけてみただけだ。
紗於奈
言葉を多少交わしただけのような
気もしますが?
雑賀孫市
まあまあ、それはそれとしてだ。
雑賀孫市
この拠点に居る時点で
儀式の関係者には間違いないが。
雑賀孫市
まさか継承候補者だったとはな。
雑賀孫市
真理亜と桜に悪いから、
正面切って応援は出来ねえが、
お前さんも頑張れよ。
紗於奈
真理亜と桜……
紗於奈
孫市は、鈴門の縁者だったのですね、
その身なりで退魔師とは。
雑賀孫市
まあ、その辺の事情はややこしいんだが……
雑賀孫市
俺は鈴門の縁者ってより、桜と真理亜の
戦友って所だな。
紗於奈
戦友? よく分かりませんが、
いいでしょう、私には関係ありません。
雑賀孫市
相変わらず連れないねぇ、
そんな態度がまたそそるんだが……
雑賀孫市
ところで、見送りの方はもう済んだのか?
この辺は他に人が居ないみたいだが。
紗於奈
単身で参加しておりますので、
私以外に協会の人員は派遣されて
おりません。
雑賀孫市
こんな辺境に単身だと?
協会ってのは世知辛い連中だな。
紗於奈
私は単独で運用された方が結果を出せます。
紗於奈
今回のように失敗の許されない重大任務
であれば、協会の采配は当然と言えます。
雑賀孫市
単独の方が戦果を上げられると……
ウチの下針みたいな奴だな。
雑賀孫市
それなら丁度良かった、
協会の奴らの変わりに、俺が
見送りさせてもらうぜ。
紗於奈
見送りは求めていませんが。
雑賀孫市
まあそう言いなさんな、
こんなに賑わってる中で
一人ってのも寂しい話だ。
雑賀孫市
立場上、お前の勝利を祈るのは
無理だが、無事に関しちゃ祈ら
せてもらうぜ。
雑賀孫市
道中は気をつけてな。
雑賀孫市
そんでもって、無事に戻って
来た後は俺と更なる親睦を
深める事としようぜ?
紗於奈
全く強引な人です……
紗於奈
まあいいでしょう、事を成した暁には、
協会より暇を与えられるはずです。
紗於奈
あり余る時間を持て余すのは
目に見えているので、貴方を
利用し、暇を潰しましょう。
雑賀孫市
おっしゃ約束だぜ!
忘れんなよ?
雑賀孫市
……って、そうなると
お前が勝ち抜く必要があるのか。
雑賀孫市
参ったな、桜と真理亜には
勝って欲しいが、そうなると
紗於奈と遊べないのか……
雑賀孫市
実に由々しき問題だ、
俺は一体どうすりゃいい?
紗於奈
……それは知りませんが、
儀式を勝ち抜き
聖鞭を手にするのは私です。
紗於奈
敢えて告げるとするなら、そう
紗於奈
勝つのが私である以上、
孫市の悩みは杞憂となるでしょう。
雑賀孫市
ほう……その表情を見るに、
冗談の類は無さそうだな。
紗於奈
私は冗談は苦手です。
雑賀孫市
ま、個人的にはどっちに
転んだとしても、俺は構わない
からな。
雑賀孫市
傍観者は傍観者らしく、
ここでお前達の帰りを
待たせてもらうか。
雑賀孫市
お……跳ね橋が下がって
きやがったぞ!
紗於奈
儀式が再開されたようです、
では私はこれにて。
雑賀孫市
おうよ、桜も真理亜も恐ろしい
ほどの使い手だ、紗於奈も気張れよ!
紗於奈
ええ、ではこれにて。
雑賀孫市
(さてと、後はここでのんびり
待たせてもらうか)
雑賀孫市
(桜と真理亜が相手となりゃ
苦戦は必至だと思うが、紗於奈にも
頑張ってほしいもんだな)
#endregion
第4話
#region
伝説の退魔師が愛用していた武器
「聖鞭」を巡り、継承の儀式に
挑む五人の継承候補者達。
分家筋ではありながら、近年
は優秀な人材を輩出している
「森栖家」の候補者、丈二。
退魔師の中でも指折りの武闘派
として恐れられる「月風家」
の候補者、太郎丸。
血筋を重視する退魔師において
唯一、実力主義を貫く異質の集団
「協会」の候補者、紗於奈。
そして、現存する退魔師一門の
中でも頭一つ抜けた実力者集団、
「鈴門」からは真理亜と桜。
当面の目的地となる「試しの間」
を目指し、城の探索を進める彼らは、
魔獣の群れを相手取っていた。
退魔師 真理亜
丈二の持ち場が押されています、
誰か救援は可能ですか?
丈二
問題無い!
耐えてみせる!!
退魔師 桜
……らしいね。
まだまだ元気だし、
ほっとこうよ。
退魔師 桜
先行してる月風家の彼、
あれは大丈夫なの?
退魔師 真理亜
あちらは太郎丸さんであれば……
退魔師 真理亜
いえ、太郎丸さんだからこそ
お任せ出来るかと。
退魔師 桜
確かに、鎧をまとった大男を
投入すべきはあそこか。
退魔師 桜
協会の秘蔵っ子はどんな感じ?
退魔師 真理亜
紗於奈さんであれば、その……
退魔師 真理亜
見てもらった方が早いかと。
退魔師 桜
うわ、えっぐい……
退魔師 桜
骨の奴らなんてバラバラどころか
粉々にされてるし。
退魔師 桜
あんな珍しい武器を抱えて、
よくやるわ。
退魔師 真理亜
弦楽器と斧を組み合わせた
特注品のようですね。
退魔師 真理亜
攻撃と同時に奏でられる曲で
身体能力の向上を図る術理のようです。
退魔師 真理亜
昨今は使い手も減っていると聞きますが、
彼女の動きを見るに未だ健在のようですね。
退魔師 桜
じゃあ役割としては支援寄りか……
仲間としてみれば心強いね。
退魔師 真理亜
もっとも……奇妙かどうかで
言えば、貴女の武器も大概
かと思いますが?
退魔師 桜
別に奇をてらうつもりは無いし、
たまたまこの形が最適なだけなの。
退魔師 桜
こうやって、斬りつけて。
魔獣1
グギャアアァァ!
退魔師 桜
ぶっ叩いて。
魔獣2
ギャアアアァァッ!
退魔師 桜
投げつけてと、
よし、我ながら完璧。
退魔師 真理亜
(流石は桜ですね、
でも私も負けてられません!)
退魔師 真理亜
せいっ、やああ!
退魔師 桜
(へえ……真理亜もやるじゃん、
そっちがそう来るなら、私も!)
退魔師 桜
はああっ!
互いの動きに感化される桜と
真理亜は次第に口数を減らし、
技の鋭さが増す。
そんな彼女達を横目に、
他の候補者達も危うげ無く
魔獣を撃破する。
継承の儀式は何一つ滞り無く
進行していた。
--------
一方、拠点で真理亜達の帰りを
待つ雑賀衆。
万が一に備え、拠点の構造を確認すると
申し出た蛍は、案内役に連れられ、
方々を巡っていた。
案内役の退魔師
出入り口はここを合せて二か所です
案内役の退魔師
守る分には不利ですが、利便性も
考えるとこの辺が落とし所と
なりました。
雑賀衆 蛍
周囲を覆う外壁は堅牢な作りだ、
そう易々とは、侵入を許さない
だろうな。
案内役の退魔師
強力な結界も併用してますし、
魔術に対する備えも万全です。
雑賀衆 蛍
魔術に関しては専門外だが、
その語り口を見るに、信頼が
おけるものと判断しておく。
案内役の退魔師
でも実のところは結界の方
こそ本命でしてね。
案内役の退魔師
拠点を全て覆うとなると、
手練れの術師が何人も
必要ですが……
案内役の退魔師
あれが見えますか?
雑賀衆 蛍
……尖塔のような施設が
見えるが。
案内役の退魔師
あの塔が魔術の増幅器に
なっていてます。
案内役の退魔師
あれが、結界の効果を
何倍にも引き上げて
くれるのですよ。
雑賀衆 蛍
では、あの施設が落とされた
場合は致命的な打撃を受けると?
案内役の退魔師
はい、外壁が届かない
空や地中は丸裸になります。
案内役の退魔師
もっとも、はぐれ魔獣が
ちょっかいかけてくる以外に
敵らしい敵は来ませんし。
案内役の退魔師
大規模な防衛戦なんてのは、
そもそも想定してませんけどね。
雑賀衆 蛍
あれは?
案内役の退魔師
あれは食糧や武器を保管
している貯蔵庫になります。
案内役の退魔師
見ての通りここには畑も
あるので、食糧はある程度
賄えますけどね。
雑賀衆 蛍
(拠点と言うだけあって、
必要な物は概ね揃っているか)
雑賀衆 蛍
(それにしてもこの胸騒ぎ
はなんだ?)
雑賀衆 蛍
(坦中を捕まえ、奴の勘を
頼ってみるのも悪くないか)
#endregion
第5話
#region
退魔師 桜
ったく、なんでこう吸血種は
城に時計塔を作りたがるんだか……
退魔師 真理亜
私も初めて挑んだ時は面食らった
ものですね、この足場を進むのかと。
退魔師 桜
なんでいつも似たような城に
なるのか、倒す前に洗いざらい
吐かせてみようかな。
紗於奈
待って、一人遅れている。
退魔師 真理亜
確かに、丈二の姿が見えませんね。
退魔師 桜
ん? ……って、あいつまだあんな
下の方に居るじゃないの。
退魔師 桜
ちょっと森栖の人! のんびり
してると追いつかれちゃうでしょ!
丈二
大丈夫だ、すぐに追いつく!
せいっ!
退魔師 桜
はぁ? そんな距離飛べる訳……
丈二は道なりに並ぶ歯車を
無視し、垂直に飛び上り大胆な
ショートカットを狙う。
丈二
しくじった!
しかしながら跳躍が足りず、
伸ばした手は空を切ってしまう。
退魔師 桜
あの馬鹿なにやってんのよ……!
咄嗟に振るった鞭を歯車に巻きつけ、
落下を免れる丈二であったが、
不安定な宙吊り状態となってしまった。
丈二
……すまないが見ての通りだ、
救助を頼めるかい?
退魔師 桜
面倒臭い奴、もういいから
置いてかない?
退魔師 真理亜
駄目です、全員で辿り着かねば
儀式は失敗したとみなされてしまいます。
退魔師 桜
分かってるって……言ってみただけ。
文句を言いながらも、丈二を手際よく
救助する桜。
その後、時計塔を登り終えた候補者達は
小休止を取っていた。
退魔師 真理亜
かなり進んできましたし、
そろそろ目的地でしょうか。
丈二
そうだな、後は次に死神
あたりが来て、最後の階段が
待っているとみたね!
退魔師 桜
足引っ張ってる割には、
随分と元気が余ってるみたい。
丈二
まあそう言うなって!
俺も時としてしくじる事はあるさ。
丈二
それにさっきはありがとうな、
真っ先に駆け付けてくれたじゃないか。
退魔師 桜
あのまま落っこちたら、
連帯責任で私達まで失格だからよ。
退魔師 桜
だったら、一番身のこなしが軽い
私が行くのが筋じゃない。
丈二
理由はともあれだ。
お前は俺を救ってくれた、
その事実は変わらないよ。
丈二
だったら俺は感謝するしかない、
何度でも言うよ桜、
助けてくれてありがとうな!
退魔師 桜
だから暑苦しい笑顔を向けるな!
退魔師 真理亜
しかし、このような人数で
城の攻略を進めるのは珍しい経験です。
退魔師 真理亜
皆さんはいかがでしょうか?
丈二
過去に二人で組んだ時はあったが、
それ以上の経験は無いね、
そちらさんは?
紗於奈
私は常に単独で動いてきました、
故に、連れ立っての攻略は初めてです。
退魔師 桜
今の月風家って、腕利きの兄弟が
ささえてるんでしょ?
退魔師 桜
だったら一緒に組んで動くことも
あるの?
太郎丸
……否。
退魔師 桜
お、反応した!?
退魔師 桜
もしかして城で喋ったの初めて
じゃないの?
退魔師 真理亜
失礼ですよ桜、
申し訳ありません太郎丸様。
太郎丸
……構わぬ、性分だ。
丈二
見事なガタイに、
悠々たる佇まいか……
兄さん、いい男だね。
丈二
それに、協会のお嬢さんも
見事な戦いぶりだ!
丈二
あんなに優雅に、舞うが如く
戦う退魔師なんて、俺は今まで
お目にかかった事が無い。
丈二
そして、鈴門のお二方に
至っては、今更語るまで
もない程の実力者だ。
丈二
もしかして俺達、
即席で組まされた割には、
かなりいい感じなんじゃないか?
退魔師 桜
ちなみにアンタの役割は?
丈二
俺!? あ、えーと……
紗於奈
騒がしさも、時として戦意高揚に
結びつく場合もあります。
紗於奈
そうですね、太鼓持ちの役割を
担っていただいてはいかがでしょう。
丈二
いええ? そりゃないぜ……
退魔師 桜
へえ、協会のお人形さんだと
ばかり思ってたけど、
冗談も言えるんだね。
紗於奈
冗談をいったつもりはありませんが?
そもそも、冗談は苦手です。
退魔師 桜
じゃあ本気でそう思ったってこと?
あはっ、なにそれ笑えるじゃん。
太郎丸
……ふっ
丈二
おいおい、太郎丸の兄さんまで……
真理亜、お前は笑ったりしないよな?
退魔師 真理亜
戦場における役割に
貴賎は無いと考えます。
退魔師 真理亜
事実、丈二のおかげで場の空気が
和らぎ、より質の高い休息を取る
事が出来ています。
退魔師 真理亜
貴方の立ち振る舞いは
褒められこそすれ、
責められる云われは無いでしょう。
丈二
なーんか話が途中ですげ
変わってる気もするが……
まあいっか。
丈二
身体も休まった事だし、
そろそろ向かおうか?
退魔師 桜
だね、試しの間だっけ?
どうせいつもの階段昇った
後にあるんだろうし。
退魔師 真理亜
ちゃっちゃと行って、
次なる試練に備えるとしますか。
#endregion
第6話
#region
雑賀孫市
どうした蛍? 急に
こんな所に呼び出しやがって。
雑賀衆 蛍
至急お耳に入れたい事がありますが、
人目をはばかる内容でして……
城内での試練が終盤に差し掛かる頃、
宿で身体を休めていた孫市は、蛍に
拠点の外れまで呼び出されていた。
雑賀孫市
その様子じゃ茶化して遊ぶ暇も
無さそうだな……聞かせてくれ。
雑賀衆 蛍
この拠点に足を踏み入れた当初は
特に感じなかったのですが。
雑賀衆 蛍
時が経つにつれて違和感のような
物を覚えるようになったのです。
雑賀孫市
そうか? 俺はちっとも感じないな。
雑賀孫市
そもそも、こんな見知らぬ場所じゃ
違和感も何も無いだろうよ。
雑賀衆 蛍
私も当初は単なる気の迷いだろうと
考えていたのですが、違和感は膨れる
一方でして。
雑賀衆 蛍
念のため、坦中の元を訪れて意見を
交したのですが……
雑賀衆 蛍
奴も、キナ臭い空気が漂って
来たと言っておりました。
雑賀孫市
……あの坦中がか?
雑賀衆 蛍
奴の神がかり的な勘については、
未だ原理も分かりませんが。
雑賀衆 蛍
何度も不測の事態を救われているのは
事実です。
雑賀孫市
ああ、そうなってくると、
ちょっと雲行きが怪しくなって
来たな。
雑賀衆 蛍
そのため、拠点の動向について
可能な範囲で調べたのですが。
雑賀衆 蛍
物資の流れと人員配置に
不自然な点が見受けられました。
雑賀孫市
そうするとつまりはアレか。
雑賀孫市
この拠点には悪意を持った
不届き者が紛れ込んでいると?
雑賀衆 蛍
その可能性が高いと思われます。
雑賀孫市
だがまあ、よく調べ上げた物だな。
雑賀衆 蛍
たまたま私の部下に退魔師と
懇意にしている者がおり、
そのツテを辿りました。
雑賀衆 蛍
防衛計画書でも入手出来ればより、
確かな調査が進められますが、
流石にそこまでは難しいかと。
雑賀孫市
嗅ぎまわり過ぎても今度は
こっちが疑われちまうからな。
雑賀孫市
今の所は寝首をかかれない
程度に、各々警戒する他無いか……
雑賀孫市
ご苦労だった、この件は
孫六を通して他の連中にも
伝えてくれ。
雑賀衆 蛍
承知いたしました、では。
雑賀孫市
やれやれ、一難去ってまた一難か、
桜と真理亜が戻り次第、
詳しく調べる必要がありそうだ。
----------
一方、城内の候補者達はその後も
順調に探索を進め、目的地となる
試練の間の目前まで迫っていた。
丈二
いやあ、勝手が分かってる者達が
手を組んでる以上、死神も恐れるに
足りずだったね!
退魔師 桜
あいつも毎回似たような動きしか
しないし、別に一人でも困らない
でしょ?
丈二
それはそうだが、あそこまで手際良く
処理出来るとは思わなかったろ?
丈二
一騎当千の猛者達が徒党を組めば
さもありなん、見事なまでの舜殺さ!
丈二
はたしてこれじゃあどっちが
死神なのか……分かったもんじゃないね。
退魔師 真理亜
本当によく舌が回る方ですね、
ある意味では尊敬します。
退魔師 桜
確かに口やかましい奴だけど、
そっちの二人が無口な分、
釣り合いは取れてていいんじゃない?
丈二
ほほう? では私達は互いの欠点を
補いあえている間柄という訳か。
丈二
固い絆の下に互いに背を預けあい、
難敵を打ち破る間柄……
丈二
素晴らしい! 我々は気が付けば
そんな関係にまで至っていたんだね。
退魔師 桜
私としては不本意だけど、
結果だけを見ればその通りなんだよね。
丈二
そうだ! 試練が終わった後も
我々は行動を共にするのはどうだ?
退魔師 桜
私はお断りだよ、暑苦しいし。
退魔師 桜
それに、退魔師が肩並べて戦うなんて、
この世の危機でも訪れない限り
ありえないでしょ?
退魔師 真理亜
ですね、細分化した昨今の退魔師に
横の繋がりを求めるのは
無理があるかと思います。
丈二
まあね、分かっちゃいるがそれでも
語らせてもらいたかったんだ。
丈二
よし、一期一会の関係ながらも、
それでもこの瞬間は我々は仲間だ!
丈二
さあ行こう、次なる試練の待ち受ける
試しの間はすぐそこさ!
退魔師 桜
(こいつもしかして
友達居ないのか……?)
その後も一行は、散発的な魔獣の
襲撃を退けつつ、城内を進む。
やがて、巨大な両開きの扉を
備える部屋の前までたどり着いた。
退魔師 桜
あからさまに怪しい扉だね。
退魔師 真理亜
他に道もありませんし、ここが
試しの間に違いないでしょう。
退魔師 真理亜
では、参りましょうか。
真理亜が手を伸ばすと、
どういった仕組みなのか、
自然と扉が奥に開いて行く。
扉の先には城の中とは思えない程に、
広大な空間が広がっていた。
紗於奈
これは……空間が弄られていますね。
丈二
これから次なる試練が始まるんだ、
狭い部屋の中では不都合もあろうだろうしね。
丈二
これだけ広ければ、何をやらされようが
不都合はなかろうさ。
丈二
……で、肝心の試練の内容は
一体何なんだ?
退魔師 真理亜
我々候補者全員が試練の間に辿り
つけば、明かされるとの話でしたが。
???
よくぞやった候補者達よ、
誰の一人も欠ける事なく
辿りつけたようじゃな。
真理亜の疑問に答えるように、
部屋の中央に位置する祭壇の影から
初老の男が歩み出る。
その男は、紗於奈が所属する退魔師集団
「協会」の代表を務める男、房善であった。
紗於奈
房善様? 何故このような場所に。
丈二
城の入口で挨拶してたはずなのに、
何で俺達より先に居るんだ?
退魔師 桜
さあ? 儀式の運営側しか知らない
秘密の通路でもあるんじゃないの。
房善
こちらへ参れ候補者達よ、
次なる試練に関する、重大な
説明を執り行うでの。
退魔師 真理亜
いよいよ試練も大詰めですね……
ん? 桜、どうしましたか?
退魔師 桜
あ、うん……ちょっとね。
退魔師 桜
あの祭壇に刻まれてる文字、
見たことがなくてさ、
何なんだろうって。
退魔師 真理亜
確かに……あのように直線だけで
構成されている物は見覚えがないですね。
退魔師 桜
だよね……まあいっか、
私達が分からないならその程度、
取るに足らないって事でしょ。
退魔師 桜
(とは言っても、知らないまま
なのは癪だし……帰ったら調べて
みるかな)
未知なる文字に興味を惹かれつつも、
桜と真理亜も他の候補者達と
同様に部屋に中央の祭壇へ向かう。
やがて全員が祭壇に辿り着くと、
房善は懐から古めかしい一本の
短刀を取り出した。
房善
この場に立つ者いずれもが、
退魔師としての研鑽に励み、
その技と魂を磨きぬいた者じゃ。
房善
そして此度継承の儀、
気高き退魔師の血肉を持って、
結実するのじゃ……
房善は取り出した短刀を
紗於奈に放り投げる。
紗於奈
房善様、一体これは?
試練についての説明が行われず、
頭に疑問符を浮かべる候補者達を
無視し、房善は紗於奈に告げた。
房善
貴様ら、実に大義であったぞ……
さあ、これで終いじゃ紗於奈よ。
房善
貫け。
紗於奈
かはっ! あっ、ああぁ……
そして紗於奈は、何の躊躇いもなく
受け取った短刀を自らに突き立て、
その場に崩れ落ちた。
退魔師 真理亜
なっ!? 何をしているんですか!
突然の出来事に目を丸くする
候補者達を尻目に、房善は大きく
高笑いする。
房善
クカカカカッ! 成れり!
我が事成れりいいぃぃ!
房善の異様な行動に困惑しながらも、
素早く紗於奈を回収した候補者達は
彼から距離を取る。
退魔師 桜
ちょっと理解が追い付かないけど、
まともな状況ではなさそうだね。
丈二
……よし、大丈夫だ、
傷は浅いみたいだぞ。
退魔師 真理亜
協会を代表しておきながらこの凶行、
説明を求めますが?
房善
でかしたぞ餓鬼共!
さあ、その身を捧げるのじゃ!
退魔師 桜
見てよあの眼、もう完全にイカれてるみたい。
太郎丸
…………備えよ。
退魔師 桜
備えよ? って、何に備えるのよ。
それまで沈黙を守っていた
太郎丸の視線を追った先には、
部屋の中央に備えられた祭壇が映っている。
目を凝らして祭壇を見ると、
先ほど紗於奈から流れ出した血が
溝に流れ込んでいた。
退魔師 真理亜
この妖気……いけません!
何かが来ます!
房善
ここまで幾年月かかった事か……
さあ、我らが宵の君よ!
ご降臨なられませい!
丈二
宵の君だと!?
おい、まさか……
退魔師 桜
ありえない、あいつは既に
討滅されてるはずでしょ!
太郎丸
…………真祖、ヴラドリクス。
#endregion
第7話
#region
部屋の中央に位置する祭壇が、
まるで生き物のように、
紗於奈から流れた血を吸い上げている。
血が祭壇に染み込むに連れ、
試しの間の妖気は濃度を増し、
候補者達は警戒態勢を取った。
そんな中、房善の口から零れた
単語が大きな波紋を呼んでいた。
退魔師 真理亜
宵の君……
退魔師 真理亜
真祖の中でも最悪の
存在とされるヴラドリクス、
奴の二つ名に相違ないですね。
退魔師 桜
じゃあ、遠い昔に滅んだはず
の奴が蘇るって事?
こんな退魔師のお膝元で。
丈二
そんなの万に一つもありえないぜ!
奴の灰は持ち帰られ、完全に
処理が済んでるはずなんだ。
混乱の渦中にある候補者達に対し、
一人、祭壇に祈りを捧げていた
房善が向き直る。
房善
さよう、不滅を滅するからには
相応の手順と道具が必要じゃからな。
房善
さすればこそ付け入る隙も生まれる……
我が協会の先達が見事に成し遂げ
くれたと言う訳じゃ。
丈二
何てこった……じゃあ協会が
横やりを入れた結果、処理は
不完全だったのか。
候補者達は自然と紗於奈の
方向に目を向けるが、既に
彼女は意識を失っていた。
房善
案ずるな、その女は我らが傀儡。
尊き使命も知らず、使い捨ての
道具として生かされていた哀れな女よ。
房善
もっとも、協会の使命を知る者も
今となってはほんの一握りしか
おらぬがのう……
退魔師 桜
退魔師の裏の顔は奴らの
信望者って事ね。
退魔師 桜
全然笑えないし、
悪趣味過ぎなんだけど!
丈二
くそっ、いくら傷が浅いとは言え、
紗於奈の治療が必要だ。
丈二
どうする? この場に居ても
やれる事は限られてるぜ。
退魔師 真理亜
本当にヴラドリクスが復活するなら、
それを阻止しないと大変な事になります。
退魔師 真理亜
あの祭壇が鍵になっているようなので、
あれを破壊出来れば、あるいは。
房善
させると思うかね?
真理亜の考えを見越した房善が
片手を上げた瞬間、室内に濃密な
魔獣の気配が漂った。
退魔師 桜
……まあそうなるよね。
退魔師 桜
紗於奈をほっとく訳にもいかないし、
ここは一旦退いて出直した方が
良さそう。
退魔師 真理亜
次善の策としては申し分ありませんね。
丈二
でもこの数だし、今まで来た道を
辿って戻るってのも大変だぜ?
退魔師 桜
それも仰る通り。
逃げるとして手段をどう用意
したものかな……
太郎丸
…………見ろ。
退魔師 桜
あれは扉……?
あっ、もしかして!
太郎丸
…………賭ける価値はある。
退魔師 真理亜
まさかあれが、拠点に通じる
秘密の通路?
退魔師 桜
秘密って割には堂々としてる気も
するけどね。
退魔師 桜
仮にハズレだとして、こんな広い
場所でやりあうよりも状況は
マシになるはず。
退魔師 桜
怪我人も抱えてる事だし、
やってみない?
紗於奈を除く候補者達は、
無言で互いの顔を見て
頷き合う。
そして、いずれもが熟達の
使い手であるからこそ、
各々の役割も瞬時に理解した。
退魔師 桜
ごめんね、私が一番早く動けるから
やっぱりこれしかないみたい。
退魔師 真理亜
気にしないでください、
私達が道を切り開きます。
丈二
そんでもって殿も任せてもらうよ。
丈二
さっき話してたろ? 俺達は背中を
預けあう仲間だってな。
太郎丸
…………後は任せろ。
退魔師 真理亜
私達もある程度粘ったらすぐに離脱します、
なので桜は一刻も早く、城を出てください。
退魔師 桜
分かった、そうする。
退魔師 桜
でも一番戦えるのは私なんだし、
場合によっては丈二辺りに
紗於奈担いで逃げてもらうから。
退魔師 桜
この先は臨機応変にね?
退魔師 真理亜
分かりました、
必ず生き延びましょう。
退魔師 桜
うん……じゃあ、行くよ!
退魔師 真理亜
(今度は私が貴女を守る
番です……桜、絶対に
守ってみせます!)
ふと、在りし日の光景が脳裏に
浮かんだ真理亜は愛用の
鞭を堅く握りしめるのだった。
#endregion
2022-02-18T12:16:18+09:00
1645154178
-
仙狐修練-退魔師-/二章 合同作戦/ 後半
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/1045.html
**二章 合同作戦 6話~10話
第6話
#region
雑賀孫市
や、やっと着きやがった……
波のように押し寄せる魔獣を撃退しつつ、
からくも桜との合流地点まで到達する
孫市達。
銃を使えない不慣れな戦闘が続いたからか、
各員の表情には疲労が色濃くが浮かんでいる。
退魔師 桜
へえ、思ってたよりもずっと早いし、
優秀なんだね、雑賀衆。
雑賀孫市
ちくしょう、言い返す
余裕すら残ってねえぜ……
雑賀孫市
見ての通り俺達は限界が近い、
この場所は安全なのか?
退魔師 桜
露払いしといたからしばらく安全だよ。
退魔師 桜
私もお腹が空いてきたし、
ここで一旦休んでいこっか。
雑賀孫市
聞いたかお前ら、休めるぞ、
ようやく休め……
雑賀衆 発中
あ、倒れた。
雑賀衆 蛍
見ての通り孫市様はお疲れだ、
我々も戦力回復に努めよう。
退魔師 桜
ここは破棄された砦だけど、
井戸は今も生きてるから自由に使って。
退魔師 桜
私は準備があるからちょっと
席を外すね。
雑賀衆 小雀
準備?
退魔師 桜
鈴門流のおもてなしってとこ、
まあ期待しないで待っててね。
言うが早いか、桜はその場から
跳躍しあっという間に姿を消した。
雑賀衆 小雀
頭に鈴門の、ってつくと
物騒に聞こえるのは私だけ?
雑賀衆 坦中
いや……その点は私も同意しとくかな。
雑賀衆 坦中
しかしこの蛮刀、あれだけ酷使しても
刃こぼれが無いなんて、大したもんだね。
雑賀衆 蛍
伊達に雑賀衆正式採用を名乗って無い
という事だ。
雑賀衆 蛍
だが、それでも損耗は見られるだろう、
この期に整備を済ませておくべきだ。
雑賀衆 蛍
今となっては、これが我々の
命綱なのだからな。
雑賀衆 発中
はーい。
雑賀衆 発中
それになんだか、愛着も
湧いてきちゃったな……
坦中はどう?
雑賀衆 坦中
まあね、思ってたよりはずっと
使い物になると分かったよ。
雑賀衆 坦中
今後もまあ、装備に空きが
出来そうなら持ち歩くかもね。
雑賀衆 蛍
まったくお前達は。
そもそも携行が義務付けられてる
であろうに……
雑賀衆 蛍
まあいい、休むとしようか、
孫市様は私に任せて各員
好きにしてくれ。
雑賀衆 小雀
蛍が見ててくれるなら安心か、
お言葉に甘えるね。
度重なる戦闘で満身創痍といった
雑賀衆の面々は、思い思いの
場所で休息を取ることとなった。
----
雑賀孫市
んあ? ここは……
雑賀衆 蛍
お早うございます、孫市様。
雑賀孫市
おはようさんっと、
ああ……あの後俺は。
雑賀衆 蛍
よくお休みでいらっしゃいました、
各員も戦力回復に努めております。
雑賀孫市
そうか、手を煩わせちまった
ようで悪かったな、蛍。
雑賀衆 蛍
いいえ、不慣れな戦闘を強いられる中、
適切な指示をいただけたので我々も
生き延びることができました。
雑賀衆 蛍
装備も一通り点検を終えていますので、
今はお身体をお休めください。
雑賀孫市
くううっ! 持つべきは有能で上司
想いな部下だぜ。
雑賀孫市
お前みたいに、他の連中ももう少し
ばかり俺に優しくしてくれりゃなぁ。
雑賀衆 蛍
そうですね……孫市様の好色癖が改善
されれば、そのような展望も期待できるかと。
雑賀孫市
……あれだ、せめて女好き
ぐらいの表現にしてもらえると、
俺の精神が助かる。
雑賀衆 蛍
追々で結構ですが改善を期待します。
雑賀衆 蛍
ですが……
雑賀孫市
ん?
雑賀衆 蛍
実際の所、此度の戦闘における
孫市様の立ち振る舞いは満点に近いです。
雑賀衆 蛍
ご自身も不慣れな近接戦闘を強いられる中、
戦況を把握した上で適切に指示を行う。
雑賀衆 蛍
時には敵の矢面に立ち味方を鼓舞しながら、
戦果も上げる……
雑賀衆 蛍
正直なところ、誰かしら犠牲者が出ても
おかしくはない、それほどまでの激戦でした。
雑賀衆 蛍
そんな極限状況において全員の生還が叶ったのも、
他ではない孫市様のおかげです。
雑賀衆 蛍
皆の者も態度にこそ出しませんが、いずれも
孫市様には感謝しております。
雑賀衆 蛍
そのため私が代表し感謝を申し上げます、
此度の戦闘では、我々を導いてくださり
誠にありがとうございました。
雑賀孫市
…………
雑賀衆 蛍
孫市様?
雑賀孫市
いや、今は喜びを全身で
噛みしめてるところだ。
雑賀孫市
これでこそ、命を張った甲斐が
あるってもんだよな。
雑賀衆 蛍
はい。我ら雑賀衆の絆もより一層
強固に結びついたと推測されます。
雑賀孫市
どうなる事かと思った遠征だが、
遠路はるばる足を伸ばしてきた
成果は上げられそうだな。
雑賀衆 蛍
そうですね。
雑賀孫市
ところでだ、さっきから何か
いい匂いがしてこないか?
雑賀衆 蛍
そういえば微かに……
香ばしいかと。
雑賀孫市
だよな。ぐっすり眠って
疲れは取れたが、急に腹が
減ってきやがった。
雑賀衆 蛍
そういえば、桜が何か準備を
すると言って姿を消してます。
雑賀衆 蛍
確か……もてなしがどうとか。
雑賀孫市
って事はだ、もしかして
もしかするかもしれねえな!
雑賀孫市
蛍、匂いのする方に行って
みようぜ、あっちから漂って
きやがる。
雑賀衆 蛍
了解しました。
---------
孫市らが向かった先には、
即席の器具で巨大な肉を焼いている
桜の姿があった。
退魔師 桜
おっ、来た来た、
これで呼びに行く手間が省けたね。
雑賀孫市
何だこの美味そうなやつは?
退魔師 桜
鈴門に伝わる伝統の回復食だよ、
あと少しで焼きあがるから
待っててね。
雑賀衆 発中
わ、わっ! すごーい!
大きなお肉だ!
雑賀衆 坦中
これが件のおもてなしね……
いやはや、こりゃ壮観だわ。
雑賀孫市
おう、お前らも来たか!
もう少しで焼きあがるってよ。
雑賀衆 小雀
やだなにこれ……
もしかして最高?
匂いに誘われた面々が桜の元に
集っては、食欲をそそる光景に
唾を飲む。
退魔師 桜
獲物はまあ……牛に近い物だけど
疲労軽減効果のある香草と、鈴門
秘伝の香辛料で味付けしているわ。
退魔師 桜
鈴門の一門は、代々この肉を食べて、
現場での英気を養ってきたのよ。
退魔師 桜
大先輩の足跡を辿るんだったら、
この肉もちゃんと食べないとだからね。
雑賀衆 小雀
へえ……この美味しそうなお肉も
由緒正しい伝統のお肉なんだね。
退魔師 桜
匂いで分かると思うけど
味も保障するよ……っと、
はい、焼き上がり。
退魔師 桜
今から切り分けるから、
どんどん食べてってね。
雑賀孫市
いいねいいね!
こんな儀式ならいつでも歓迎だぜ!
雑賀衆 発中
いつものパサパサ糧食じゃなくて、
肉汁溢れる焼きたてだなんて……
雑賀衆 発中
これはもしかして夢……
幸せな夢なんですか?
雑賀衆 発中
夢なら覚めて!
いや覚めないで!?
雑賀孫市
やかましいな、さっさとこれ食って
戻ってきやがれ。
雑賀衆 発中
んぐっ!? んっ……
んんんん!
雑賀孫市
どうだ、天にも昇る心地だろう?
退魔師 桜
はっ、はひいぃ……
おいし、しあわせぇぇ……
雑賀衆 蛍
確かにこれは素晴らしい。
雑賀衆 蛍
うむ……焼き加減もさることながら、
この独特の香りに食欲を促進させる
効果もある。
雑賀衆 蛍
食事の質は兵の士気を左右する以上、
これは思わぬ拾いものかもしれない。
退魔師 桜
門外不出の味だから詳しくは教えて
あげられないけどね。
退魔師 桜
ま、舌で盗んでもらう分には
目をつぶるからお好きにどうぞ。
雑賀衆 坦中
何これうんまっ!?
雑賀衆 小雀
確かに、これは見事なお手前だね。
雑賀衆 小雀
それになんだか、
身体も軽くなってきたような……?
雑賀孫市
そういや回復食だって言ってたな。
退魔師 桜
肉は滋養があるし、食べ応えも
十分だからね。
退魔師 桜
鈴門は代々、出先で肉を食べる事が
多かったから、調理法も磨かれて
いった感じだね。
雑賀衆 発中
身体が軽いどころか……
うそ、傷がもうふさがりかけてる。
退魔師 桜
その結果、妖術に片足突っ込むくらい、
怪しい料理に変貌したんだけどね。
退魔師 桜
って、そんな顔しなくても
別に身体に害はないよ。
退魔師 桜
身体の働きを活性化させて、
治癒力を高めてるだけだから。
雑賀孫市
なるほどね、
鈴門の肉は医者要らずって訳か。
雑賀孫市
仮に害があったとしても
この味だ、俺は迷わず食い続けるがな。
雑賀衆 小雀
食い意地の張った頭領様はほっとくとして、
ごめんね桜、私って誤解してたみたい。
退魔師 桜
誤解って何が?
雑賀衆 小雀
だって、儀式の開始と同時に
居なくなっちゃったじゃない。
退魔師 桜
ああ、あの事ね。
雑賀衆 小雀
不慣れな私達をほっぽり出して、
自分勝手な奴だなって思ってたのよ。
雑賀衆 小雀
でもこうして休める場所を確保
して、素敵な食事まで用意
してくれたでしょ?
雑賀衆 小雀
今にして思えば、ここまでの
道中も死ぬ思いだったけど……
雑賀衆 小雀
あの経験は、雑賀衆にとっても
大きな糧になるわ。
雑賀衆 小雀
だからさ、ありがとね。
退魔師 桜
……別にいいよ、
儀式のついでに貴方達を鍛えて
欲しいと、紫音に頼まれてるから。
退魔師 桜
それに私は真理亜みたいに
教えるのが上手くないから、
こんな形になってるだけだけどね。
雑賀孫市
俺からも感謝しとくぜ桜、
ありがとよ。
雑賀孫市
ただまああれだ、
大蝙蝠の件だけは物申しとくぜ。
雑賀孫市
時と場合によっちゃ、
獣は手負いの方が厄介だからな。
雑賀孫市
おかげで苦労したぜ、
野郎、片目潰されて怒り
狂ってたからな……
退魔師 桜
なるほどね……
じゃあ大物を相手にしてもらう
場合は、助言に留めておくね。
雑賀孫市
おう、そうしてもらえると
助かるぜ。
退魔師 桜
奴らはも結局は訓練用の魔獣だから、
規則的な動きしかしてこないの。
退魔師 桜
一撃でももらうと致命的だから、
そこは上手く避けつつ、まずは
よく観察することだね。
退魔師 桜
ま、同時にしかけてくる時はかなり
しんどいけど……上手く捌いた後は
隙を見せるから、そこが狙い目かな?
雑賀孫市
ん? 急に何の話だ。
退魔師 桜
助言だよ、大物相手の。
そろそろかなって思うから。
雑賀衆 発中
孫市様、さっきから辺りの木が
揺れてません?
雑賀衆 坦中
それになんだか、嫌な気配が
近づいて来る気がするよ。
雑賀孫市
おいおい、まさか……
雑賀衆 蛍
かなり遠方ですが、
視認できました。
雑賀衆 蛍
巨大な戦斧を抱えた、
牛頭の大男です。
雑賀衆 蛍
それに……
木々の間を縫うように、
狼でしょうか? 獣人も迫ってきます。
雑賀衆 蛍
いずれも難敵に見受けられます、
急ぎ迎撃態勢を整えねば!
退魔師 桜
じゃあ助言も終わったし、
そういう事で。
退魔師 桜
あいつらさえ倒せば、
後の道中はみんな雑魚だから、
頑張ってね。
雑賀孫市
桜! お前まさかまた!
退魔師 桜
思ったより時間食っちゃったな、
ここから先は巻きで行くよ!
桜はその場で大きく跳躍し、
手頃な木に飛び移ると、
城のある方角へ向けて一直線に進んでいった。
雑賀孫市
かああ! またこの流れかよ、
しかも厄介そうな奴を押し付けやがって。
雑賀衆 小雀
桜に悪気が無いのは分かったけど、
分かったけど……やっぱり複雑だわ。
#endregion
第7話
#region
■■■■と紫音の父にして先代の王となる、
天道によりもたらされた外敵の存在。
未知なる驚異への対抗手段が模索
される中、紫音とひまりは源内に
呼び出されていた。
源内いわく、ようやく報告に足る
情報が出揃ったとのことであった。
ひまり
この忙しい時に源内の奴め、
藪から棒に呼びつけおってからに。
当代仙狐王 紫音
急を要する事態かもしれませんし……
とりあえずお話を聞いてみましょう。
ひまり
しかしなんじゃこの部屋は?
ひまり
狭苦しい場所に机など並べおって、
これではまるで寺子屋ではないか。
当代仙狐王 紫音
寺子屋……?
じゃあもしかして。
平賀源内
ご明察だ紫音君。
当代仙狐王 紫音
源内さん!
平賀源内
今日の報告は扱う情報の量が多く、
その内容も難解でね。
平賀源内
そこで一計を案じさせてもらった、
手前味噌な内容で申し訳ないがね。
当代仙狐王 紫音
なるほど、では今日の源内さんは
源内先生ということですね。
平賀源内
うむ、よろしく頼むよ。
ひまり
まてまて、わしを置き去りに
するでない、話が全く見えんぞ。
平賀源内
これは失敬した。
紫音君、頼めるかね?
当代仙狐王 紫音
はい、了解です!
当代仙狐王 紫音
源内さんは物知りなので、
家臣の皆さんがよく質問しに
行くんですが。
当代仙狐王 紫音
その都度、源内さんは丁寧に
対応してくれるですよ。
ひまり
ほほう、忙しい身分でありながら、
なかなかマメな奴だったんじゃな。
当代仙狐王 紫音
その評判が評判を呼んだ結果、
源内さんが定期的に勉強会を
開いてくれるようになったんです。
平賀源内
そうだな、差し当たり本日の会は
源内先生の外敵講座……
とでも称しておこうか。
ひまり
まあ結局のところもよく
分からぬが……実のある報告を
期待しておるぞ。
当代仙狐王 紫音
よろしくお願いします、
源内先生。
平賀源内
過日、天道君と天照君の証言により
その存在が明かされた敵性存在、
通称「外敵」だ。
平賀源内
調査を進めるべく、その後
天道君に聞き取り調査を行っては
みたが、これは空振りに終わった。
平賀源内
天道君によると、夢を介した
お告げのようなものであったらしくてな。
平賀源内
声はすれども姿は見えず、
双方向の意思伝達も不可能な
状況であったと聞いている。
ひまり
天道の奴め、そんな不確かな情報で
王の座を放り投げ、旅立っておった
とはのう……
平賀源内
次に接触したのは天照君だが、
こちらも結果は芳しく無かった。
平賀源内
彼女は外敵についての情報を
知り得てはいるが、何らかの要因により
それを他者に伝達出来ない状態にあるらしい。
平賀源内
彼女はそれを抑止力と呼んでいたが、
この件については君達も知る所だろう。
当代仙狐王 紫音
はい、途中から天照さんの声がガリガリって
音に変わっちゃうやつですよね。
平賀源内
ああ、その後も筆談や催眠療法等、
様々な手段を試してみたが
結果は振るわず。
平賀源内
手段を問わず、情報の伝達行為
そのものが阻害されてしまうとの
結論に至った。
ひまり
では、その抑止力とやらについて
対策する算段がついたのか?
平賀源内
いや、天照君のように強大な力を
持つ神族ですら抗えないのだ。
平賀源内
研究対象として見れば魅力的だが……
いかんせん、時間を食い過ぎる。
平賀源内
よって天照君ではなく、天道君の線で
調査を進める事とした。
平賀源内
夢と言うのは地に足のついた普遍的な
現象だ、抑止力なる未知に手を伸ばす
よりは、成果が期待出来るのでな。
平賀源内
そして夢に関する、大規模な
聞き取り調査を行ったのだが……
興味深い結果が出たのだよ。
平賀源内
妖魔界とも人間界とも異なる、
奇妙な世界の夢を見たと
答えた者が一定数居てな。
平賀源内
彼らの情報を統合した結果、
どうも同じ世界の夢を見ているよう
なんだ。
平賀源内
生まれた場所も種族も、
一切の接点を持たない、
赤の他人同士にも関わらずだ。
当代仙狐王 紫音
(奇妙な夢の世界と言えば……)
当代仙狐王 紫音
(黄昏姫さんもそんな事を
お話されてたような?)
平賀源内
ここまでの話を統合するとだ。
平賀源内
我々の世界とは異なる別の世界が存在する。
平賀源内
我々の世界を脅かす外敵が存在する。
平賀源内
外敵の存在を天道君に伝えた協力者が存在する。
平賀源内
この3点の情報が、夢といった
手段を介し、我々に
もたらされている事になる。
ひまり
夢を経由してか……
回りくどい話よのう。
ひまり
それに、注意を促すつもりで
あればもっと分かりやすく
出来んのか? その協力者とやらは。
平賀源内
そう、正にその点こそが
目下最大の謎だったのだよ。
平賀源内が、一歩前に
身を乗り出す。
平賀源内
ひまり君の言う通り、警鐘を
鳴らすつもりなら、もっと
派手に鳴らし続けるべきなのだ。
平賀源内
注意を促す相手に気がついて
貰えないなら、それは注意の
意味を成していないからね。
当代仙狐王 紫音
夢の内容なんて、普通は起きて
しばらくすると忘れちゃいますよね。
平賀源内
また、今回の件は外の世界だの
夢の話だのと、地に足のつかない
輩が相手だ……
平賀源内
当然、仮説は山のように積み上がり、
どこから崩したものかと難儀した
結果……我々は一つの結論に至った。
平賀源内
考えるだけ無駄だとね。
ひまり
…………紫音よ、
この先生とやらは大丈夫なのか?
平賀源内
まあ待ちたまえ、この話には
続きがある。
平賀源内
仮説を一つ一つ検証しては
キリが無く、そもそも検証する
ための材料も乏しい状況だ。
平賀源内
であれば……事情をよく知るであろう
人物に直接渡りを付ける方法を
考えるべきだとね。
当代仙狐王 紫音
それって、お父さんの夢に出てきた
あの?
平賀源内
ああ、正体不明の協力者だよ。
平賀源内
彼……いや、彼女かもしれないが、
とにかく彼の者に教えを請うのが
手っ取り早いのは間違いない。
平賀源内
そして我々が調査、研究を進めた
結果辿り着いたのが、人間界で
用いられている交霊術さ。
ひまり
そういえばおぬし、
霊媒師を用立ててほしいと
言っておったのう。
当代仙狐王 紫音
確か……イタコさんを
紹介したんでしたっけ?
平賀源内
ああ、腕の良い霊媒師は
自らが見知らぬ存在であっても
自在に降ろせるとの事だったのでね。
平賀源内
イタコ君の実力が申し分無かった
お陰で、その後の研究も実に
円滑に進んだよ。
平賀源内
そして、近々実証実験を
行うにあたり、紫音君とひまり君の
二人にご説明を差し上げたという訳さ。
ひまり
外様のわしには雲を掴むような話にも
聞こえるがのう……勝算はあるのか?
平賀源内
無論だ、前例が見つからないだけで
方法論としては至極真っ当だからな。
平賀源内
既存の定規で測れないのであれば、
まずは定規を取り替えてみる、
それだけの話さ。
当代仙狐王 紫音
よく分らないけどわかりました!
何かお手伝いできることはありますか?
平賀源内
手は十分に足りている状態さ、
気持ちだけもらっておくよ。
当代仙狐王 紫音
そうですか、でも必要になった時は
遠慮なくお願いしますね。
平賀源内
ああ、その時は頼らせてもらうつもりだ。
平賀源内
さて、私は最後の仕込みがあるので、
この場はお開きとしよう。
ひまり
これでようやく具体的な情報を
得られそうじゃな。
当代仙狐王 紫音
鬼が出るか蛇が出るかですね。
ひまり
うむ。実証実験とやらが失敗し
鬼も蛇も出ない展開だけは
御免蒙りたいところじゃがな。
#endregion
第8話
#region
雑賀孫六
到着っと、ここが
例の拠点で間違い無いのよね?
退魔師 真理亜
ええ、ここに辿り着けば儀式は
折り返しです。
とある偉大な退魔師が遺した武器を
継承すべく行われる継承の儀式。
儀式は実戦形式で行われるため、
近接戦闘の習熟を課題としていた
雑賀衆も隊を二つに分け、これに参加。
退魔師の真理亜と、雑賀孫六が率いる
班は道中の魔獣を退けつつ、当面の
目的地である拠点に辿りついたのであった。
雑賀衆 無二
へえ、辺鄙な場所にある割に、
中々どうして立派な施設じゃねえか。
退魔師 真理亜
この広大な修練場の管理を担って
いる関係から、相応の規模が
求められますもので。
退魔師 真理亜
慰労施設も用意されています。
儀式が終わるまでの間はどうぞ
おくつろぎ下さい。
雑賀狐 大騎
そういえば、俺達はここまで
なんでしたっけ?
雑賀孫六
そうよ、私達みたいな部外者の
同行が許されるのは儀式の前半戦だけ。
雑賀孫六
ここから先に進めるのは、
儀式の資格をもった退魔師にしか
許されてないらしいわ。
雑賀狐 大騎
となると真理亜さんはもう
出発されるんですか?
退魔師 真理亜
いえ、準備期間が設けられて
いるので、私もある程度は
こちらに滞在します。
退魔師 真理亜
あそこに城が見えますよね?
雑賀孫六
あるわね、私達の見知った
城とは意匠がかなり
異なるみたいだけど。
退魔師 真理亜
以後はあの中で儀式の続きが
行われるのですが……
退魔師 真理亜
これまでの道中とは比較にならない
程の困難が予測されます。
退魔師 真理亜
そのため、私も相応の備えを
進めるつもりです。
雑賀狐 菊花
私達はここまでだけど、
頑張ってね真理亜!
退魔師 真理亜
はい。今後は桜とも直接競いあう
事になりますが、出来るだけ食い下がっては
みるつもりです。
退魔師 桜
お互い頑張ろうね、桜。
退魔師 真理亜
貴方は桜!?
やはり先に到着していたのですね。
退魔師 桜
うん、散歩がてらその辺歩いてたら
真理亜達を見つけたの。
雑賀孫六
ねえ桜さん、兄さん達も無事に
たどり着けたの?
退魔師 桜
どうだろうね、たぶん大丈夫じゃないかな。
雑賀衆 無二
たぶんって……そっちの班は
お嬢ちゃんが先導してくれたんじゃねえのか。
退魔師 桜
私は放任主義だからね、
教え子の自主性を重んじるみたいな?
退魔師 真理亜
……桜、あなたまさか一人でここに?
退魔師 桜
そんな怖い顔しないでよ、ちゃんと
要所で面倒みたし、丸投げになんか
してないってば。
雑賀狐 大騎
え……その、じゃあ孫市様たちって、
大丈夫なんですかね?
雑賀衆 下針
あっちには小雀も居るし、
遅れを取る事は無いだろうけどさ。
雑賀衆 下針
まあ、心配っちゃあ心配だね、
いっちょ様子でも見に行くか。
雑賀孫六
そうね、大事を取って
それも……って、辺りが
騒がしくない?
雑賀衆 無二
確かに、その辺のやつに
話でも聞いてみますかね。
雑賀衆 無二
よお大将、この騒ぎはいったい
なにごとなんだ?
妖魔の男
ああ、西側の入口に人間の一団が
転がってたらしくてな。
妖魔の男
命にまでは別状は無いが、
救護室まで担ぎこまれたらしいぞ。
雑賀衆 無二
そりゃ難儀なこったなぁ、
ありがとよ。
雑賀衆 無二
てな事で、もしかしなくても、
孫市様の班ですかね?
雑賀孫六
そのようね、でも大事に至って無いなら
何も問題は無いわ。
雑賀孫六
兄さんったら、情けないんだから……
まだまだ鍛え直した方が良さそうね。
雑賀衆 無二
(何だかおっかねえこと言ってるなぁ……
孫市様もとんだ災難だぜ)
------
その後、連戦による過度の疲労は
見られたが、目立つ負傷は無しとの
所見により開放される孫市班の面々。
改めて再開を果たした雑賀衆は、
継承の儀式が完了するまで、
拠点に滞在する事とする。
孫市、無二、大騎の三人は、
道中の疲れを癒すべく、
慰労施設を訪れていた。
雑賀衆 大騎
まさかこんな所に来て、
温泉に浸かれるなんて
思ってませんでしたよ。
雑賀衆 大騎
薬湯に、滝湯に、壺湯、
温泉ってあんなに種類が
あったんですね!
雑賀衆 無二
変わり湯も結構だが、
俺はこの露天風呂が一番
気にいったね……
雑賀衆 無二
しかし、魔獣が闊歩してる所で
裸一貫ってのも落ち着かない話だがな。
雑賀孫市
そこは退魔師謹製のありがたい結界
が幾重にも……とは聞いてるし、
問題は無かろうよ。
雑賀孫市
しんどい任務をこなして
せっかく勝ち取った休暇だ、
悠々と楽しんどくのが吉だぜ。
雑賀衆 大騎
孫市様の班は大変だったって
聞きますからね。
雑賀孫市
おうよ、桜の奴は見た目こそ可愛いんだが、
とんでもない食わせ者でな。
雑賀孫市
死にそうな思いしながら、ようやく
辿りつけたぜ……
雑賀孫市
お前らの方は真理亜が手取り足取り
してくれたんだろ?
雑賀衆 大騎
はい。真理亜さんの指導は具体的だし、
凄く動きやすかったです!
雑賀衆 大騎
今回は良い経験積ませてもらいましたよ、
今度またお礼を言っとかないとなぁ。
雑賀孫市
まあ、経験積むって意味じゃあ、
こっちもかなりの収穫だがよ……
孫市が何の気なしに目を向けると、
大柄な男が浴場を歩いていた。
雑賀孫市
おい見ろよあの身体の傷跡、
きっとただもんじゃねえな。
雑賀衆 無二
こりゃすげえな……
傷跡もそうだが、何をどう鍛えれば
あんな身体に仕上がるんだか。
雑賀衆 大騎
お二人とも、そんなに見てると
失礼ですって!
雑賀孫市
まあまあ、これのまた眼の保養って
やつだろ、大目に見ろよ。
雑賀衆 大騎
うえっ!? 孫市様って女好き
だけじゃなくて、もしかして、
両方……
雑賀孫市
気持ち悪い事を言ってんじゃねえ!
雑賀孫市
そしてテメエの腹筋も隠すな、
別にハナから興味ねえから。
雑賀衆 大騎
せっかく鍛えてるのに、
面と向かって言われたらそれは
それで悲しいですよ!?
雑賀衆 無二
さて、くっだらねえ事してないで、
もう一回身体を洗っときましょうぜ。
雑賀衆 無二
湯に浸かって毛穴も広がり切ったんだ、
今こそが絶好の好機ってなもんさ。
雑賀孫市
へいへい、久々の風呂なんだ、
こうなりゃ隅々まで磨きぬいてやる
とするか。
雑賀衆 大騎
了解です、また俺がお背中を
流しますね。
雑賀衆 無二
いやいい、お前の馬鹿力で何度も
擦られると背中の皮が全部
剥けちまう。
雑賀衆 大騎
なんだか、さっきから俺に対して
冷たくないですか?
雑賀孫市
弟分の扱いなんてどこも
そんなもんだ、気にするな。
雑賀孫市
それよりさっきの御仁だ、
こんな所で見かけたのも何かの
縁かもしれん。
雑賀孫市
駄目元で勧誘してみてもいいか?
雑賀衆 無二
十中八九、退魔師でしょうし、
そいつはやめときましょう。
雑賀衆 無二
それに、こんな場所で仕事の話を
するのも野暮ってもんですぜ。
雑賀孫市
確かにな……
ここは引き下がっておくか。
雑賀孫市
(あの身体と風格だ、
是非ともウチの力になって
ほしかったもんだがな)
#endregion
第9話
#region
無二、大騎らと共に汗を流した孫市は、
慰労施設の片隅にある酒場で
盃を傾けていた。
雑賀孫市
(色々と想定外ではあったが、
大事に至る事も無しと)
雑賀孫市
(これも八咫烏様のお導きか……
いざと言う時は神頼みに尽きるな)
???
失礼だけど、隣空いてるかしら?
雑賀孫市
んん? まあ、美人のお誘いなら
いつでも……
雑賀孫市
って、なんだ孫六かよ。
雑賀孫六
かよって何よ、野郎の寂しい一人酒に、
美人が華を添えに来てあげたんだけど?
雑賀孫市
ま、美しいかどうかはさておきだ。
雑賀孫市
ケツの穴まで見た事があるような奴を、
いまさら女として扱えなんて、
難しいんじゃねえのか?
雑賀孫六
ちょ、ちょっと!
急に何言ってるの!?
雑賀孫市
ああ? お前がもっと小せえガキの
時、誰が座薬を入れてやったと……
雑賀孫六
なっ!? ざっ……
ああもう!
雑賀孫六
わかったから! もうこの話はおしまい!
もっとそっち寄って、座れないでしょ。
雑賀孫市
おい! 急に押すなって、
危な……いででで!
雑賀孫市
ったく強引な奴め……
雑賀孫市
せっかく一人でしっぽりと
飲み直してたってのによ。
雑賀孫六
隣にもう一人増えた所で別に問題
ないでしょ?
雑賀孫六
私はみんなみたいに馬鹿騒ぎする
気もないしね。
雑賀孫市
こと酒に関しちゃ、ウチの連中は
厄介なのが揃ってるからな。
雑賀孫市
絡む奴、泣く奴、笑う奴、怒る奴。
毎度毎度、酒癖の見本市かっての。
雑賀孫六
文句言ってるわりに、
なんでそんなに嬉しそうなの?
雑賀孫市
そんな奴らだが……
部下であり家族だからな。
雑賀孫市
今回も思いのほか苦労したが、
無事に切り抜けられたからよ。
雑賀孫市
こうして人心地つくことで、
何気ない日常ってのを
ありがたく感じられてるのかもな。
雑賀孫六
兄さんは何だかんだ言って、
皆の事が大好きだもんね。
雑賀孫市
よせよせ、背中が痒くなってくるだろ。
雑賀孫市
俺が好きなのは美人の女だけだ、
妙な勘違いを起こすのはやめとけ。
雑賀孫六
別にいいじゃない、それに蛍とか
坦中とか、綺麗どころも揃ってるでしょ?
雑賀孫市
馬鹿言え、身内にそんな気を
起こすほど俺は不自由してねえよ。
雑賀孫市
綺麗どころなのは認めるが、
ウチの連中は最初から勘定の外だ。
雑賀孫六
ふうん……じゃあ私は?
雑賀孫市
お前……実はもう酔っ払ってんのか?
雑賀孫六
違うわよ、さっきは私の事を
「美しいかどうかはさておきだ」って
濁したじゃない?
雑賀孫六
蛍と坦中と綺麗どころって認めるなら、
私についてもはっきりしろって話。
雑賀孫市
くだらねえなぁ……
んなことどうでもいいだろうが。
雑賀孫六
あのね、これは女としての沽券に
関わる極めて重大な話なの。
雑賀孫六
この際だから白黒はっきりさせて、
兄さんから見て実際どうなの? 私って。
雑賀孫市
ドブス。
雑賀孫市
……って、分かった!
真面目に答えるから拳を振り上げるな。
雑賀孫市
美醜の感覚は人それぞれだろうが、
俺から見た感じだと相当イケてるぞ。
雑賀孫六
もっと端的かつ具体的に。
雑賀孫市
すげえ可愛い。
雑賀孫六
ふーん、それでよしとしますか。
雑賀孫市
(いつにも増してめんどくせえな、
こいつやっぱり酔ってる気がする……)
雑賀孫市
そんな事よりもだ、この際だから
愚痴らせろよ。
雑賀孫六
別にいいけど、何かあったの?
雑賀孫市
あったもなにも、あの桜だよ、
全く、あいつとんでもねーぜ。
雑賀孫六
ああ、確か……放任主義が
過ぎたとか何とか?
雑賀孫市
その通りだ、あの野郎は試練が始まった
瞬間にさっさと一人で進んじまってな。
雑賀孫市
おかげでこっちの班は死に物狂いで
戦う羽目になったんだぜ?
雑賀孫六
桜さんって、お城でも一匹狼なところが
あったからね。
雑賀孫六
普段の彼女から考えると、
有り得ない話でもなかったかな?
雑賀孫市
濃密な訓練とはなったが、
それはそれとして恨むぜ、
桜のやつ……
???
君達ちょっといいかい?
雑賀孫市
(さっきから千客万来だな……)
雑賀孫市
別に構わんが。
???
ありがとう。
さきほどから桜、と言う
名前が聞こえるんだが。
???
もしかして君達は、
鈴門の縁者なのかい?
雑賀孫市
縁者と言うか……まあ、
知り合いみたいなもんだな。
???
じゃあここに来ているのも
継承の儀式が目的で?
雑賀孫市
おう、別に退魔師ではないんだが、
鍛練を兼ねて、従者って名目で同行
させてもらったんだ。
雑賀孫市
(って、こういう話はしてよかったか?)
雑賀孫六
(さあ、別に駄目とは聞いてないけど)
???
なんと……すばらしい!!
雑賀孫市
ああ?
???
退魔師でないにも関わらず
牙無き民を守るため、
研鑽に励むとは……!
雑賀孫市
いや、俺達は傭兵だから
しっかりとお代はいただく……
???
それに一目見れば分かる、
酒盛りの場に身を置いてなお、
油断を感じさせないその立ち振る舞い!
???
ここで出会ったのも何かの縁だ、
一杯奢らせてくれ!
???
しばらくそこで待っていてくれ、
そして語り明かそう、我が友よ!
雑賀孫六
……口を挟む暇も無かったわね。
雑賀孫市
特大に面倒くさそうなのがきやがったな、
この隙にズラかるか?
雑賀孫六
うーん……悪い人ではなさそうだし、
ご馳走になってもいいんじゃない?
雑賀孫市
まあな。
仕方ねえ、腹くくるとするか。
観念した二人の席に酒瓶を
抱えた男が戻ってきた。
???
さて、何に乾杯すべきだけど、
何がいいだろうか。
雑賀孫六
素敵な出会いに、とか?
???
それそれ! 立て板に水とは
まさに事か、流石は我が友だ。
???
では、素敵な出会いを祝して
乾杯!
孫市・孫六
乾杯!
???
んー! 良い酒だ、
君達もどんどんやってくれ。
雑賀孫市
良い酒なのは認めるが……
???
ん? どうしたんだい?
雑賀孫市
お前さんはどこの誰なんだ、
せめて名前だけでも聞かせてくれよ。
???
おっと! こいつは失敬、
私は丈二(ジョウジ)、
森栖に籍を置く退魔師さ。
雑賀孫六
森栖に……丈二?
雑賀孫市
なんだ孫六、お知り合いか?
雑賀孫六
桜達が言ってたでしょ、
継承の儀式には他に参加者が
居るって。
雑賀孫六
その名前が確か……
丈二
その通り、僕も候補者の一人でね、
今後の儀式に向けて英気を
養っているという訳さ。
雑賀孫市
へえ、儀式の参加者ってことは、
桜達とは競い合う訳か。
雑賀孫市
いいのか? 競争相手の関係者と、
酒を酌み交わしてもよ。
丈二
別に構わないさ、例え家が違えども
親交を深めるに何の咎があろうか?
丈二
それに私達は邪悪を滅し、
民を救うという共通の目的を持つ同士だ。
丈二
よって何も問題ない!
分かるね?
雑賀孫市
まあそういうことにしておくか。
雑賀孫市
ただ酒にありつけるなら文句はねえよ。
丈二
そっちの君も道中は大変だっただろう?
ささ、この命の滴で疲れを癒すといい。
雑賀孫六
注いでもらうなんて悪いわね。
丈二
問題ない!
さあ存分にやってくれ。
雑賀孫市
確かに道中はしんどかったぜ……
雑賀孫市
あまりにもしんどすぎて、しばらくは
夢にも出て来そうな勢いだな。
丈二
確かに困難だったよ……
だが、彼の方はこれよりも
厳しい道行を進まれたんだ。
丈二
安全な拠点で一息
つける我々は幸せ者だよ。
雑賀孫市
彼の方って、例の退魔師か?
丈二
ああ、我々が追い求める
聖鞭の初代使い手にて、
歴代最強の狩人さ。
丈二
彼の方は道中を踏破し、
休む間もなく城に乗り込み、
強敵を退け、目的を達成されたんだ。
丈二
全ての退魔師の憧れと言っても
過言ではないね!
雑賀孫六
そんなに凄い人だったんだね。
雑賀孫六
でも、あれ……?
雑賀孫市
どうした孫六。
雑賀孫六
うん、継承の儀式って
「過去の退魔師による討滅の足跡を
なぞる形で進行」するって聞いたじゃない。
雑賀孫市
らしいな。
雑賀孫六
でも過去の退魔師……丈二さんに
よると彼の方だっけ? その人が
結局最後に何をしたかは聞いてないわよね。
雑賀孫市
確かに、話のオチはあやふやだったな。
雑賀孫六
さっき「目的を達成された」
と聞いたじゃない?
雑賀孫六
彼の方の目的ってなんだっただろうって。
丈二
その部分は今回の儀式と関係は
無いからね、説明を端折られた
んじゃないかな。
雑賀孫市
ふうん、せっかくだから教えてくれよ。
丈二
ああ、彼の方が目指す目標にして、
そして見事達成された偉業なんだけど。
丈二
真祖の討滅なんだ。
雑賀孫市
ほう、あの出鱈目に強くて厄介な連中か。
雑賀孫六
(あれ? でも城に居るカミラさんって……)
雑賀孫市
(その辺はややこしくなりそうだから伏せとこうぜ)
丈二
真祖ヴラドリクス。
自分の世界に籠りがちな真祖の中でも
唯一、他者との闘争に執着を示した者さ。
丈二
真祖の力でもって他者を支配下に
置くのはもちろんなんだが。
丈二
自らの意思で奴に付き従う信奉者も
少なくは無かったらしい。
雑賀孫六
ふうん、物好きな連中も居たもんね。
丈二
でだ、一大勢力を築きつつあった奴を
驚異と捉えた退魔師達は、歴代最強
とも名高い彼の方を呼びよせ。
丈二
それに応じた彼の方が
単身乗り込んで討滅してしまうと、
お伽話もかくやと言う実話さ。
雑賀孫市
そんな化け物を討伐するなんて
確かに偉業だわな。
雑賀孫市
愛用の武器がこうして代々継承
されるってのも、頷ける話だ。
丈二
そうだろそうだろ!
やはり友は話が分かるな!
丈二
よし、次は彼の方の偉業を
称えて乾杯だ!
待っていてくれ、すぐに戻る!
雑賀孫市
ちょっと振れば酒が出てくる、
打ち出の小づちみたいな奴だな……
雑賀孫六
じゃあ私は行くけど、兄さんも
飲みすぎないでね。
雑賀孫市
は? 俺一人にあいつを
任せるってのか?
雑賀孫六
だって兄さん気に入られちゃった
じゃない。
雑賀孫六
私は他に仕事もあるし、
悪いけど失礼するね。
雑賀孫六
それとも……兄さんが仕事を進める?
雑賀孫六
別に私が丈二さんの相手してもいいけど。
雑賀孫市
分かった、ここは俺に任せて先に行ってくれ。
雑賀孫六
はいはい、後はよろしくね。
雑賀孫市
(仕事とタダ酒どっちを取るかなんて
のは愚問も甚だしいが……)
雑賀孫市
(あの厄介そうな男の相手も含まれると
あっちゃ、もう少し思案した方がよかった
かもな)
#endregion
第10話
#region
丈二と別れて以後、酔い覚ましを
兼ねて、一人で辺りを散策する孫市。
酒気を帯び、火照った体で歩を進めて
いると、外壁沿いに設けられた休憩所を
見つけ、腰を下ろす事にする。
しんと静まりかえる静寂の中、
頬に当たる冷たい夜風が
何とも心地良かった。
雑賀孫市
はぁああ、飲んだ飲んだ、
俺とした事が量を見誤るとはな。
雑賀孫市
だがまあ、悪くない酒だったな。
雑賀孫市
丈二の奴も癖は強いが、
話して見るといい奴だったしな……
雑賀孫市
ふわぁ……なんだか眠くなって
きやがったな。
雑賀孫市
宿に帰るのも面倒くせえ、
今日はここで寝ちまうか……
???
こんな所で寝るのは身体に障ります、
止めておいてほうがいいでしょう。
仰向けに寝転んだ視界の端に、
人影が映る。
薄らとした月明かりの下では
顔までは分からないが、夜風に
なびく長い髪が印象的だった。
雑賀孫市
んん? 先客か?
悪いな、こんな酔っ払いがきちまってよ。
???
いえ。私有地ならともかくここは
公共の場所です。
???
私が文句を挟む権利も、
貴方が気に病む理由もありません。
雑賀孫市
そいつはごもっともだな。
雑賀孫市
えっと……誰だっけか?
???
私の記憶を参照するに、
貴方とは初対面ですが?
雑賀孫市
そっかそっか、
わりいな、いまいち頭も回って
ないようだ。
???
過度の飲酒による酩酊状態と
推測されます、速やかに水分を
補給されるべきでしょう。
雑賀孫市
まったく仰る通りで。
雑賀孫市
だが……この不自由さもまた
酒の醍醐味ってやつだ。
雑賀孫市
おまけに、どこぞの親切な
美人ともお近づきになれそうだしな。
???
呆れました……
貴方は初対面で、顔も見えないような
相手を口説くと言うのですか?
雑賀孫市
まあ俺ぐらいの男となればな、
声音を聞くだけである程度の
見立てがつけられるのよ。
雑賀孫市
そうだな……若干掠れてはいるが、
不愉快どころか耳心地の良い声だ。
雑賀孫市
となりゃあ、声の持ち主は美人に
決まっている。
雑賀孫市
こいつも八咫烏様のお導きに
違いねえ……ありがてえことだ。
???
酔いが回り過ぎて前後不覚に
陥ってるのようですね……
???
仕方無い、誰か人を呼んでくると
しましょう。
雑賀孫市
いや待て待て冗談だ、
そんな大事にするんじゃねえって。
???
そうなのですか。
冗談、については縁が無く
理解が追い付きませんでした。
雑賀孫市
まあ、こう言っちゃなんだが
堅物な印象があるからな。
雑賀孫市
もう少しばかりな、
肩の力を抜いて、ふわーっと
してみたらどうだ。
雑賀孫市
一度きりの人生だ、
どうならなら楽しく気楽に
行こうぜ?
???
忠言は感謝いたします。
???
ですが、私は機能し続けなければ
ならないのです。
???
それが私の使命なのですから。
雑賀孫市
おっと、軽々しく踏み込んじ
まったか?
雑賀孫市
まあ、酔っ払いの戯言だ、
そんなに重く受け止めて
もらなくても大丈夫だぜ。
???
…………
???
問題ありません、
私が一方的に話しただけです。
???
……不思議ですね、今宵は
妙に口が動きます。
雑賀孫市
顔すら見えない行きずりの相手
だからこそ、話せる内容もあるだろう。
雑賀孫市
まあ、内に溜め込むだけじゃ、
そのうち潰れちまうからな。
雑賀孫市
お前さんの事情は分からんし、
興味も無いが、今夜くらいは
饒舌になっていいだろ。
???
なるほど……新たな知見を
得られました、感謝いたします。
雑賀孫市
そいつは結構だ。
???
では私はこれで。
重ねていいますが、休まれたいので
あれば宿に戻るべきです。
雑賀孫市
ありがとよ、もう少し酔いが
覚めたら戻るとするぜ。
雑賀孫市
っと、ちょっと待ってくれ。
???
何か?
雑賀孫市
袖触れ合うのも何とやらだ、
差し支え無いなら、名前くらいは
教えてくれよ。
???
私は紗於奈(シャオナ)と言います。
紗於奈
……貴方は?
雑賀孫市
俺は孫市、雑賀孫市さ。
紗於奈
記憶いたしました、
それでは。
雑賀孫市
(シャオナか、珍しい響きだが
良い名だったな……)
雑賀孫市
(色々と抱えてそうな奴だったが、
縁があればまた出会う事もあるだろうさ)
#endregion
2021-10-30T19:35:58+09:00
1635590158
-
仙狐修練-退魔師-/二章 合同作戦
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/1043.html
**二章 合同作戦 1話~5話
第1話
#region
翌日、各々の開始地点で儀式の
開始を待つ継承候補者達。
雑賀衆もまた、真理亜、桜らに
同行するため隊を二つに分けて
待機しているのだった。
雑賀孫市
ふーん、俺達の隊は坦中と発中、
それに蛍と小雀ねえ。
雑賀衆 蛍
孫六様の隊は無二、下針と、
菊花、大騎の両名ですね。
雑賀孫市
お前はどう見る? 蛍よ。
雑賀衆 蛍
そうですね……
雑賀衆 蛍
近接戦闘に得手のある小雀と
下針は分散させて然るべきでしょう。
雑賀衆 蛍
逆に、普段から組む機会の多い
坦中と発中、菊花と大騎を固めつつ……
雑賀衆 蛍
後は、孫市様と孫六様の適正を
踏まえれば、無二と私の扱いに
関しても妥当と考えます。
雑賀孫市
よし、満点だ。
雑賀孫市
だがまあ、無二じゃなく蛍が
こっちに寄こされた理由を考えると、
肩身が狭くなるんだがな。
???
だって無二と孫市様って、
近接戦闘はからっきしだもんね。
雑賀衆 小雀。
雑賀衆に所属する異名持ちの一人、
二丁一組の短銃と武道を組み合わせた、
独特な戦い方を得意としている。
雑賀衆 小雀
向こうは孫六様が居るから
いいけど、こっちは孫市様が居るから
その分、蛍にも頑張ってもらわないとね。
雑賀衆 蛍
孫市様をお荷物扱いするのは
止めるんだ蛍。
雑賀衆 蛍
事実がそうであれ、至らない
部分があれば、それは仲間が
補えばいい。
雑賀衆 蛍
孫市様が役立たずでも、私が
二人分の働きを見せれば済むこと、
これはそのための特殊兵装だ。
雑賀衆 蛍
そうでしょう孫市さ……
雑賀衆 蛍
ん? どうかされましたか、
そんな所でうずくまって。
???
あっはっはっ!上司を
正論で殴る部下だなんて、
こりゃ面白い見世物だね!
雑賀衆 坦中。
雑賀衆に所属する異名持ちの一人、
同じく異名持ちの発中とは同郷の仲。
雑賀衆 発中
ちょ、ちょっと坦中やめなよ。
雑賀衆 発中
何の事か分かって無い蛍さんも
含めてかなり面白いけど、
そんなこと言っちゃ孫市様が可哀想だよ。
雑賀孫市
ぐはああぅっ!
雑賀衆 小雀
そういうアンタも大概だけどね……
退魔師 桜
はいはい、そんなところで
弱い者いじめしてないで、
雑賀衆の人たち、注目!
装備の確認を済ませた桜が、
少し遅れて雑賀衆に合流する。
退魔師 桜
あなた達の訓練役を務める桜よ。
仙狐のお城であった人もいるけど、
今日からよろしくね。
雑賀衆 蛍
了解です桜様、此度はご指導の程、
よろしくお願いいたします。
退魔師 桜
別に呼び捨てでいいわよ。
私って真理亜と違って
堅苦しいのが苦手だから。
雑賀衆 蛍
とは言いましても、この作戦行動に
おいては貴女が上官だと
聞いておりますので……
雑賀衆 坦中
まあ、そいつは年中そんな感じ
だから気にするなよ。
んじゃ桜、道中はよろしく頼むわ。
雑賀衆 発中
桜さんよろしくね! 私も今回は
色々と学ばせてもらうつもりだから。
退魔師 桜
うん、私って人に教えるの下手だから
あんまり期待されても困るけどね。
雑賀孫市
俺達も戦いに関しちゃあ専門家だ、
その辺は横から見て盗むから気にするな。
雑賀衆 小雀
あ、復活した。
雑賀孫市
やかましいわ!
んじゃお前ら、さっそくだが弾を寄越せ。
雑賀衆 坦中
弾って……全部?
雑賀孫市
そうだ。
雑賀衆 蛍
予備も含めてですか?
雑賀孫市
ああそうだ、弾は全て桜に
預ける。
雑賀衆 発中
そんなことしたら……
私たち戦えなくないですか?
雑賀孫市
俺も正気の沙汰とは思えんが、
孫六に押し切られちまったからな。
退魔師 桜
弾が尽きて補給も見込めない、
そんな極限状態を想定するんだっけ?
雑賀孫市
おうよ。正直な話そんな状況に
なればもう詰みなんだが……
雑賀孫市
真の傭兵たるもの、その先を
生きぬく術も身に付ける必要があるからな!
雑賀衆 蛍
孫市様の仰ることは理解しました。
雑賀衆 蛍
ですが、銃を扱えないとなると、
私と小雀以外の人員は交戦手段が
無いのでは?
雑賀孫市
という訳でこいつを支給する、
どうせお前達は持ち歩いてない
だろうからな。
孫市が足元の荷を解くと、
全く同じ意匠の蛮刀が何本も
転がり出てきた。
雑賀衆 坦中
んげ……それは。
雑賀衆 発中
携行が義務付けられながら、
誰一人としてそれを守らない……
雑賀衆 蛍
重い、大きい、切れないの
三重苦を背負う……
雑賀衆 小雀
藪払いにしか使い道が無い、
あの伝説の……
雑賀孫市
あー、散々な言われようだが、
そうだ、雑賀衆正式採用蛮刀だ。
雑賀孫市
弾が無くても戦える蛍と小雀以外は、
こいつを相棒にしてもらう、
無論、俺もだがな。
雑賀衆 発中
えええ! 無理です無理です!
こんなのじゃ、猪にすら
勝てませんよ!?
雑賀衆 坦中
棒きれに毛が生えたような
得物でやり合うのは無理だね、
私は待遇の改善を要求するよ。
孫市の発表に雑賀衆の面々が
不満を漏らすなか、桜は転がっていた
蛮刀の一本を手に取った。
熟練の目利きのような手付きで
それを検め、一振り、二振りと
振るってもみる。
退魔師 桜
……ふーん、
言うほど悪くないよ、これ。
雑賀衆 発中
え? そうなんですか?
退魔師 桜
うん。雑に扱っても重心がブレにくいし、
ここの持ち手、無駄な力を逃がせるような
工夫がしてあるね。
退魔師 桜
あと、切れ味に頼る造りでもないから、
整備が楽なのも加点だね……
退魔師 桜
扱いやすさに特化させると、
多分こんな形に近づいていくんだと
思うよ、正直感心した。
雑賀孫市
まあな。
正式採用の名は伊達じゃないって
ことよ。
雑賀衆 坦中
やれやれ、専門家のお墨付きが
出たなら、従うとしますかね。
雑賀衆 小雀
ま、道中は私と蛍が前に出るしね。
討ち漏らしの相手するくらいだから、
以外と何とかなるかも。
雑賀孫市
よし、おのおの合点が行ったところで
そろそろ始まりそうか?
退魔師 桜
うん、始まったら合図の狼煙が上がるから、
それを確認しだい出発だね。
雑賀孫市
普段と毛色が違った任務ではあるが、
こいつも立派なお仕事だ。
雑賀孫市
雑賀衆の名に恥じぬ働きを
期待してるぜ、お前ら!
#endregion
第2話
#region
雑賀孫六
そっちに行ったわよ無二!
雑賀衆 無二
了解だ……あらよっとぉ。
次はてめえだ、やっちまえ大騎!
雑賀衆 大騎
行きます!
でりゃああぁっ!
継承の儀が始まり、
修錬場を進む孫六の隊。
廃村に辿り着いた彼女らは
魔獣の群れと交戦するが、
その戦いも終わりを迎えようとしていた。
雑賀孫六
こっちは片付いたか……
菊華達の方も落ち着きそうね。
退魔師 真理亜
今です、トドメを。
???
とと……えいやっ!
退魔師 真理亜
お見事です菊華さん、
かなり動きが洗練されてきましたね。
雑賀狐 菊花。
仙狐族の生まれながら、雑賀衆に身を置く妖魔。
とある事情から妖術に深い恨みを抱いている。
雑賀狐 菊花
真理亜がしっかり弱らせてくれてるからね。
おかげ様で私みたいなのでも、
そこそこやれてはいるよ。
退魔師 真理亜
そうですか? 目立っておかしな動きは
見受けられませんが。
雑賀狐 菊花
鉄砲撃ちと言っても、
基礎的な訓練は受けてるからね。
雑賀狐 菊花
近接戦闘は実践の場が無かったから、
経験が全然足りないんだけどね……っと!
雑賀狐 菊花
へへ、馬鹿にしてたこの蛮刀も
案外悪くないじゃない。
退魔師 真理亜
こちらも片付きましたし、
下針さんが戻り次第、休憩
としましょうか。
雑賀孫六
そうね……慣れない戦闘は疲労が
蓄積しやすいし、それが懸命ね。
雑賀衆 無二
お、噂をすれば何とやらだ。
雑賀衆 無二
おーい下針、そっちの首尾はどうだ?
???
綺麗さっぱりと始末してきたよ。
雑賀衆 下針。
傭兵集団雑賀衆に所属する異名持ちの一人、
一対多の戦闘に特化した、特殊な銃技を使う。
雑賀衆 下針
ま、アタシ相手に数で挑んだ次点で
連中の末路は決まってたんだけどね。
雑賀孫六
お疲れ様下針、辺りの掃討も終わったし、
いったん休憩にするわよ。
雑賀衆 下針
アタシは遠慮しとくよ。
体があったまって来たと思いきや、
急に打ち止めでさ……
雑賀衆 下針
全然やりたいないから、
周囲の偵察兼ねて、
もうひと暴れしてくるさ。
雑賀孫六
そっか、貴女なら遅れは
取らないだろうし……
お願いね。
雑賀衆 下針
んじゃ失礼するよ、
いやあ、今日は実に良い日だね!
雑賀衆 無二
あいつ、水を得た魚みたいに
なってやがんな。
雑賀衆 大騎
下針さんは俺達と違って、
距離を詰められてからが
本領発揮ですからね。
雑賀衆 大騎
それに加え、敵に囲まれれば
囲まれるほど強くなるなんて、
俺も見習いたいです。
雑賀衆 無二
いやいい、これ以上訳の分らん
戦い方する奴が増えたら、組まされる
方は大変だからな……
更なる獲物を求め立ち去った下針を
見送った一行は、思い思いの場所で
休憩している。
少し離れた場所に腰かける
魔理亜の元に、孫六が訪れた。
雑賀孫六
こんな規模の修錬場を用意できるなんて、
退魔師は相当繁盛してるみたいね?
私達もあやかりたいものだわ。
退魔師 真理亜
確かにここの修錬場は立派ですが、
常闇王の口利きあってこそですね。
退魔師 真理亜
我々は食べるに困らない程度の稼ぎが
あればそれで由としています。
退魔師 真理亜
孫六さんが考えるような、
華やかな世界とは無縁かと。
雑賀孫六
そう言えば、鈴門家は常闇王と
繋がりがあったんだっけ?
雑賀孫六
前にお城でエリカと話した時に、
そんな話題が出てきたような……
退魔師 真理亜
はい。鈴門の祖先には伝説的な
方がいるのですが、その方が常闇王と
婚姻を結ばれてしまいまして……
退魔師 真理亜
以後、我ら鈴門と常闇王の間には
奇妙な縁が結ばれ、今日に至るのです。
雑賀孫六
それはまたとんでもないご先祖様ね、
倒すべき相手と結ばれちゃうなんて。
退魔師 真理亜
はい。それに……
桜には笑われてしまったのですが。
退魔師 真理亜
立場や種族の壁を越え、
結ばれるに至った二人の事を
考えると、その……
退魔師 真理亜
素敵だなと。考えてしまうのです。
雑賀孫六
そうね……
雑賀孫六
きっと、あらゆる物を天秤に
かけた上で、二人の想いを
優先した結果じゃない?
雑賀孫六
それを素敵だと考える事って、
全然おかしくないし、
私もそう思うわよ?
退魔師 真理亜
………!
退魔師 真理亜
初めてです、そんな事を
言っていただけたのは。
退魔師 真理亜
孫六さんはお優しい方なのですね。
雑賀孫六
別に優しくもないし、
さっきの話みたいな考え方も
至って普通の話よ。
退魔師 真理亜
普通……ですか?
雑賀孫六
そうそう、全然普通の話ね。
雑賀孫六
ただまあ……私達って傭兵だの
退魔師だの、命のやり取りを商売に
してるじゃない?
雑賀孫六
特別な環境に身を置く以上、
「普通」を持ち合わせてない
変わり者の方が多くなるのかもね。
雑賀孫六
っと、別に桜さんの事を
変わり者だと責めたてる気は
ないからね?
退魔師 真理亜
お気遣いありがとうございます。
退魔師 真理亜
今日のお話で見識を深めることが
出来た気がします。
雑賀孫六
でもこれでようやく納得できたわ、
王に渡りがつけられるなら、妖魔の縄張りに
里や修錬場を用意するのも可能か……
雑賀孫六
でも、小さな国なら丸ごと
入りそうなくらいの規模なのは、
常識外れだけどね。
退魔師 真理亜
祖先が歩んできた足跡を再現するには、
相応の規模が必要ですからね。
雑賀孫六
ええ、確か……
雑賀孫六
儀式は過去の退魔師による、
討滅の足跡をなぞる形で進行する。
だったっけ?
退魔師 真理亜
はい、聖鞭の最初の所有者……
と言うより、彼の方が用いていた鞭が
聖鞭と呼ばれ、継承されているのですが。
退魔師 真理亜
彼の方が歩んだ旅の道程、目的地に
至るまでを再現したのがこの修錬場です。
退魔師 真理亜
そのため、孫六さんが仰るように、
広大な規模となってしまうのは避けられません。
雑賀孫六
率直な疑問だから、
気を悪くしてほしくないのだけど……
退魔師 真理亜
なんでしょう?
雑賀孫六
ここまで大がかりな事を
やる必要ってあるのかな?って。
雑賀孫六
鈴門の聖鞭と言えば、門外漢の
私ですら聞いたことがある凄い武器
なのは分かるけどね。
雑賀孫六
それでもその、こんな常軌を
逸したような修錬場を用意してまで
やる話なの?と思っちゃって。
退魔師 真理亜
儀式がこのような形式をとるのは、
近年になってからですね。
雑賀孫六
あら?そうなんだ。
退魔師 真理亜
昔は、継承者に聖鞭を授与するだけの
簡素な内容であったと聞いています。
退魔師 真理亜
しかしながら、聖鞭が単なる武器ではなく、
権力にも影響を及ぼすような存在になって
以後。
退魔師 真理亜
退魔師達の間で協議が行われ、
現在の形に落ち着いたとされています。
雑賀孫六
権力争いの道具にもなっちゃったと。
退魔師 真理亜
今となっては、退魔師も一枚岩では
ないのです。
お恥ずかしい話ですが。
雑賀孫六
と、話しこんじゃったけど
そろそろ出発しようか?
退魔師 真理亜
はい、頃合いかと思います。
雑賀孫市
兄さん達も順調だといいのだけど……
退魔師 真理亜
桜は当代でも指折りの実力者です、
それは間違いありません。
退魔師 真理亜
ですが、他者に教えを授けるとなると、
不安が残るのが正直なところです。
#endregion
第3話
#region
雑賀衆 蛍
第三波が接近、
急ぎ態勢を整えましょう。
雑賀孫市
だそうだ作戦担当、次はどう動く?
雑賀衆 発中
ひっきりなしに凄い数が迫って来て、
作戦も何もないですよ!?
雑賀衆 発中
こんなの単なる消耗戦じゃないですかぁ!
雑賀孫市
そこを何とか頼むぜ、このままじゃ
戦力強化どころか全滅だ。
雑賀衆 坦中
私の勘が告げてるね……
いい加減マジでヤバいと。
雑賀衆 小雀
ちょっと!坦中が言うと洒落に
ならないからやめてくれない?
雑賀衆 発中
えっと、えっと……
雑賀衆 発中
蛍さんの特殊兵装は威力が高いから
大物を相手に、隙は私が補って……
雑賀衆 発中
小雀さんは機動力を活かすために、
遊撃要員として動いてもらって……
雑賀孫市
(やれやれ桜め、
雑賀衆の実力を買ってるの嬉しいが、
放任主義が過ぎやしねえか?)
-----------
退魔師 桜
儀式開始の狼煙が上がったわね、
こっちも出発しよっか。
雑賀孫市
おう、よろしく頼むぜ。
雑賀衆 坦中
修錬場に放たれた魔獣を相手しつつ、
地図を頼りに目的地を目指すと……
雑賀衆 坦中
ま、普段の任務と比べたら楽な方
なんじゃない? 魔獣とやらの手ごわさ
にもよるけどさ。
雑賀孫市
あくまで訓練目的で用意されてんだ、
そこまで危険な奴はいねえだろうよ。
退魔師 桜
別にそんなことはないよ?
雑賀孫市
えっ……
退魔師 桜
前に真理亜が説明したじゃない、
忘れちゃった?
雑賀孫市
真理亜の説明ってえと……
雑賀孫市
「過去の退魔師による討滅の足跡を
なぞる形で進行する」だったか?
退魔師 桜
そうそう、平たく言うとこの修錬場には
私達の大先輩が進んだ道と、戦った敵が
再現されているの。
退魔師 桜
出てくる敵の質は数段下がるけど、
それでも駆け出しの退魔師とかなら
手も足も出ないかな?
雑賀孫市
ほ、ほう……
そいつは物騒なこって。
雑賀孫市
でもこっちには歴戦の退魔師が居るんだ!
別に何が出てこようが問題無いよな。
雑賀孫市
問題無い……よな?
退魔師 桜
え、歴戦の退魔師って私のこと?
雑賀孫市
おう、頼りにしてるぜ!
退魔師 桜
歴戦なのは認めるけど、
そんなに頼られても困っちゃうなぁ。
雑賀孫市
へ?
退魔師 桜
だって、雑賀衆の人達は修行目的で
来てるんでしょ?だったら、
私は獲物の横取りなんて出来ないじゃん。
雑賀孫市
へ? ええ?
退魔師 桜
それに、城には一番乗りするつもりだから、
道中は地図なんて無視して全力で行くよ?
退魔師 桜
だからここから先は別行動だね。
退魔師 桜
大丈夫、ある程度は間引きながら
進むし、厄介そうなのも弱らせてはおくから。
雑賀孫市
ええええ!?
退魔師 桜
もう、仕方ないなぁ。
退魔師 桜
じゃあ中間の、地図で言うと……
この辺りかな。
退魔師 桜
私はこの辺で待ってるから、
一回ここで落ち合おうか、
よし、そうしよう。
退魔師 桜
じゃあ、私はもう行くから。
雑賀孫市
いやちょっ、待って……
言いたい事を言いたいだけ告げた
桜は、孫市の様子も意に介さず、
その場で大きく跳躍する。
そして手頃な木に飛び移ると、
地図に記された道を完全に無視し、
城のある方角に向け一直線に進んでいった。
雑賀衆 坦中
へえ……あんな木から木に飛び移って、
退魔師ってのは随分身軽なんだね。
雑賀衆 発中
えと、私達の頼みの綱でしたよね?
桜さんって。
雑賀孫市
ああ、近接戦闘に不慣れな俺達を
導く最重要人物だな。
雑賀衆 発中
でも、もう姿も形も見えないですよね?
雑賀孫市
ああ、真理亜と比べて癖の強い
お嬢ちゃんではあったが、
まさかここまでとはな……
雑賀衆 蛍
とは言え、今更引き返す訳にも
いかないでしょう。
雑賀衆 蛍
我々は地図を頼りに進む事と
なりますが、参りましょう、
孫市様。
雑賀孫市
まあな……ったく、
そうそう楽はさせちゃくれねえか。
-----------
雑賀孫市
(道中の敵を間引くとは言ってたが、
このふざけた数を相手にしてると、
それも疑わしく思えてくるぜ……)
雑賀衆 蛍
孫市様、各員配置が整いました。
雑賀孫市
おし、ここさえ切り抜ければ
桜との合流地点は目と鼻の先だ。
雑賀孫市
各員、奮戦を期待する、
必ず生きて戻るぞ!
坦中・発中・蛍・小雀
了解!
雑賀衆 小雀
みんなが銃さえ使えれば、
あんな連中に遅れは取らないのにね。
雑賀孫市
桜のヤツが弾を全部預かってるからな、
当の本人は忘れちまってる気が
しないでもないが……
雑賀衆 発中
なんか嫌な予感しかありませんが。
雑賀衆 発中
あの大きくて黒いのはなんですかね。
雑賀衆 蛍
あれは……蝙蝠か?
馬鹿な、あまりにも大きすぎる。
雑賀衆 坦中
ようやく親玉のお出ましか、
アレを片づけりゃ落ち着くと、
私の勘はそう告げるね。
雑賀衆 発中
あ、見えてきたけど……
なんか、凄く怒ってません!?
雑賀衆 小雀
どうやら片目を潰されてるみたい、
それで怒ってるのかな。
雑賀孫市
桜が厄介そうな奴は弱らせておく
と言ってたが、援護射撃が
仇になったみたいだぜ……
#endregion
第4話
#region
■■■■の父親と天照により明らかに
なった、妖魔とも人間とも異なる
「外敵」の存在。
仙狐族の城に設けられた対策本部には、
各陣営の頭脳が終結し、対抗手段が
模索されている。
だが、未だその正体すら明らかにな
らない脅威に対し、問題解決の糸口
すら見つからない状況であった。
当代仙狐王 紫音
そちらの状況はいかがでしょうか?
ひまり様。
ひまり
有事に備え、陣営の枠組みを超えた
戦力の再配分を可能とすべく、
土台を整えておる。
ひまり
これが成されれば、我々の兵力を
一切の無駄なく運用する事も可能じゃ。
ひまり
おぬしの方はどうなんじゃ?
当代仙狐王 紫音
ごめんなさい。どの領域の王も
聞く耳持たずでして……
当代仙狐王 紫音
話し合いがそもそも、
成立しないような状況です……
ひまり
事が仙狐族のみの問題でない以上、
他の王も巻き込む必要があるが、
やはり一筋縄ではいかんかのう。
当代仙狐王 紫音
お父さんも外敵の事を知った直後に
説得して回ったって言ってたけど、
誰も相手にしてくれなかったみたい。
ひまり
妖魔とは、自分に興味の無いことには、
とことん無関心な生き物じゃからのう……
ひまり
その天道は何処で何をやっとるんじゃ?
当代仙狐王 紫音
今は身体の衰弱が酷くて……
ゆっくり休んでもらってるの。
ひまり
まあ、後で使い潰すためにも、
今は養生させておくのが吉じゃな。
当代仙狐王 紫音
またそんなこと言いって、お父さんだって
ひまり様の子孫なんだから、
優しくしてあげてくださいね?
ひまり
わかったわかった!
単なる小粋な冗談なんじゃから、
そう睨むでない。
平賀源内
家族の団らんに水を差すようで悪いが、
少しいいかね?
ひまり
おお! 困った時は大体何とか
してくれる源内の登場じゃな!
ひまり
おぬしらには外敵についての
調査を任せておるが、
首尾良く進んでおるかの?
平賀源内
まあね、そう遠くないうちに
進捗を上げさせてもらうよ。
平賀源内
神出鬼没の黒衣の男、
ヨルムンガンドを名乗る奇妙な妖魔。
平賀源内
そして禁忌に対し、妖魔が等しく
有する忌避反応。
平賀源内
これまで集めていた断片的な情報が、
ようやく繋がり始めてきたところさ。
当代仙狐王 紫音
分かりました、引き続き
調査をお願いします……!
当代仙狐王 紫音
ところで源内さん、
何かご用だったんですか?
平賀源内
なあに、ちょっとした人材を
用立てて欲しくてね。
平賀源内
霊媒師を一人、頼めるかい?
ひまり
霊媒師か……
何人かは心当たりがあるのう。
平賀源内
ほう、であれば特に実力の高い者を頼む。
平賀源内
期限は特に切らないが、
なるはやで頼むよ。
当代仙狐王 紫音
了解です。
近いうちに手配させていただきますね。
平賀源内
ああ、他者との交信に得手のある人材が
必要となる公算が大きくてな。
平賀源内
状況証拠は固まりつつある。
奇想天外な結論に向かいつつあるのは、
研究者として腹落ちしないがね……
平賀源内
と言う訳だ、私は調査に
戻らせてもらうよ。
当代仙狐王 紫音
はい。今はとにかく情報を集める
必要がありますので、お願いします。
ひまり
さて、何の話じゃったか?
当代仙狐王 紫音
お城の見回り中に立ち寄っただけなので、
特にこれと言っては無かったですね。
ひまり
おお、そうじゃったな。
ひまり
わしの受け持ちについては、
順調に進めておるので安心しておれ。
当代仙狐王 紫音
流石はひまり様ですね、頼もしいです。
ひまり
うむ、頼りなき子孫の世話をするのも、
偉大なご先祖様の仕事じゃからな。
当代仙狐王 紫音
じゃあ、私は見回りに戻りますね。
ひまり
しかし、まあよく飽きもしないで
城の中を歩き回っとるもんじゃ。
ひまり
王たるもの、どっしりと構えて
もらったほうが家臣への示しも
つくのじゃがのう。
当代仙狐王 紫音
ひまり様の仰ることも分かりますが、
これに関しては私の王としての在り方なので。
当代仙狐王 紫音
上も下も無く、家臣の皆さんとは
常に同じ目線でいたいんですよ。
当代仙狐王 紫音
それに、皆さんとお話して回るのは
単純に楽しいですからね。
ひまり
まあ、それで結束が深まるのであれば、
わしとしては構わんが。
ひまり
おぬしほどの優秀な人材を、
このように用いるのも勿体ない気は
するがのう。
ひまり
もっとこう、暇そうな奴が
その役目を……
ひまり
…………
当代仙狐王 紫音
どうされました? ひまり様。
ひまり
いやな、城の見回りは別の者が
担当していたような気がしてのう。
当代仙狐王 紫音
見回りは王の仕事ですから、
ずっと私の担当でしたよ?
ひまり
確かにそうじゃな……
ひまり
実際わしも、家臣らと談笑しておる
おぬしの姿はよく見かけておるからのう。
当代仙狐王 紫音
変なひまり様ですね。
ひまり
まあわしとて気の迷いの
ひとつやふたつ…… む?
ひまり
どうした紫音、なぜ涙なぞ
流しておるのじゃ?
当代仙狐王 紫音
えっ……
当代仙狐王 紫音
ほんとだ、全然悲しくも
痛くも無いのに、なんでですか?
ひまり
うーむ、体に負荷を溜め込み
誤作動でも起こしてしまったのかのう。
当代仙狐王 紫音
私も知らない間に、
疲れが溜まっちゃったのかな?
ひまり
まあ、ここでこうしているとわしが
いじめっ子の様になってしまうからの。
ひまり
得体の知れぬ涙はさっさと拭き取り、
後は見回りするなり休息するなりするがよい。
当代仙狐王 紫音
了解です、失礼しますね。
ひまり
さて、わしもそろそろ仕事を
進めねばな。
ひまり
各陣営の戦力強化のため、
いくつか施策を進めてはおるが、
はたしてどう転ぶかのう。
ひまり
しっかりと成果を持ち帰って
くれれば良いのじゃが……
#endregion
第5話
#region
雑賀狐 大騎
やけに下りが続くと思ったら、
洞窟の先はこんな場所に
繋がってたんですね。
雑賀衆 無二
さながら天然の巨大地下水路ってか?
魔獣さえ出てこなければ、
観光資源として申し分ねえのに。
雑賀孫六
ここも修錬場なんだし、
それだと本末転倒でしょ?
退魔師 真理亜
確かに素晴しい景観ではありますが、
ここはかなりの難所です。
雑賀孫六
そうなの?
地上と比べて魔獣の数も
少ないみたいだけど。
退魔師 真理亜
そうですね……ここは
戦いの技量はもちろん、
身体能力を要求されるのです。
雑賀衆 無二
確かに、先に進むに連れて
足場が悪くなっていくぜ……
雑賀衆 無二
足でも滑らせようもんなら、
一巻の終わりだな?
雑賀狐 菊華
底の方は真っ暗で見えないし、
落ちたら確実に死ぬね、こりゃ。
退魔師 真理亜
仰る通りです、幾人もの
退魔師がここで命を落としています。
退魔師 真理亜
焦る必要はありませんので、
確実に歩を進めていきましょう。
雑賀孫六
んー、修錬にしては行きすぎな
気がしないでもないけど……
雑賀孫六
ま、雑賀衆の異名持ちともなれば、
これくらい余裕でしょ。
雑賀狐 菊華
え? あたしと大騎は持ってませんけど?
雑賀衆 下針
あのねぇ、お前等は妖魔だってのに
雑賀衆入りを許されてるんだぞ?
雑賀衆 下針
その時点で規格外って事の証明さ。
それが分かったら進め、
後がつかえてんだ。
雑賀狐 大騎
わっ、ちょっ! 下針さん押さないで!
雑賀衆 無二
ぐおっ、ざけんな大騎っ!
洒落になってねえぞ!
雑賀狐 大騎
だって、下針さんが……!
雑賀衆 下針
ちっ、口減らしが出来る絶好の
機会だったんだけど、惜しかったね。
雑賀孫六
あんた達、しょうもない事
やってないで黙って進む!
雑賀孫六
もう……ごめんね真理亜、
大事な儀式なのに騒がしくて。
退魔師 真理亜
いえ、私は構いません。
退魔師 真理亜
…………ふふっ。
雑賀孫六
どうかしたの? 真理亜。
退魔師 真理亜
いえ、貴方達は
なんと言いますか……そう。
退魔師 真理亜
命が脅かされる状況になっても、
臆することなく、逆に楽しんで
いらっしゃるようで。
退魔師 真理亜
それが何だかおかしくて。
雑賀衆 無二
確かに、飯の種に殺し合いを
選んだ連中だしな。
雑賀衆 無二
ネジの一本や二本、取れていたとしても
おかしくない話さ。
退魔師 真理亜
いえ! 私はそういった意図で……
雑賀衆 無ニ
おっと、誤解させて悪いな。
別に罵倒されただなんて
思っちゃいねえよ。
雑賀衆 無ニ
お前さんがそんな手合いじゃない
事なんて、ここに居る誰もが
知るところだしな。
雑賀衆 下針
あたし達の胆力について、
あの鈴門からお褒めの言葉を
もらったんだ。
雑賀衆 下針
むしろここは、胸を
張るべきじゃないのかい?
退魔師 真理亜
そう言っていただけると、
こちらとしても助かります。
雑賀孫六
とかやってる間に、
道が開けてきたみたいね。
退魔師 真理亜
はい。あの先には洞窟を
難所たらしめている最大の
要因があるのですが。
退魔師 真理亜
あれに関しては、実際に
見ていただいた方が早いかと。
雑賀孫六
百聞は一見にしかずと、
そういう事なら進みましょうか。
真理亜を先頭に不安定な
足場を進む一行。
胆を冷やす場面も幾たびか
見られながら、、脱落者を
出すこともなく渡り切る事に成功する。
だが、その先には理解し難い
光景が広がっていたのだった。
雑賀衆 無二
なんだこりゃ?
向こう側に渡ろうにも橋がねえぞ。
雑賀狐 大騎
この距離を飛び越えるのは無理
がありますね……
雑賀狐 菊華
魔獣が悪さして、
橋が落ちちゃったとか?
退魔師 真理亜
橋ならもう少しで来ると思いますよ。
雑賀衆 無二
橋が、来る……?
雑賀狐 大騎
誰かがはしごを持って来てくれるんですか?
退魔師 真理亜
いえ、言葉の通りですが
橋が「来ます」
雑賀衆 下針
なんだろうね、こう暗いと
よく見え……んん?
雑賀衆 無二
おいおい、何だか頼りなさそうな
岩がこっちに向かってくるんだが!?
雑賀狐 大騎
もしかしてあれが、
真理亜さんの言う橋なんですか?
退魔師 真理亜
はい。
あの浮遊する岩を足場として、
向こうの崖に渡る事になります。
退魔師 真理亜
一定の周期で行き来するため、
頃合いを見計らって飛び移る
必要があります。
雑賀衆 無二
じゃなくてだ、本当にあんな
ちっこい岩に飛び移るのか?
退魔師 真理亜
はい。
それしか手段がありません。
雑賀孫六
いまさら岩の一つや二つが浮いた
ところで驚きはしないけど。
雑賀孫六
大変なのね、
退魔師のお仕事って……
退魔師 真理亜
道なき道を踏破する場合も、
往々にしてありますね。
退魔師 真理亜
武芸を磨くのは勿論ですが、
総合的な身体能力についても、
高い水準を要求されるのです。
退魔師 真理亜
さて、ご覧いただいた通り、
足場はあの大きさです。
退魔師 真理亜
一人一人、順に渡る必要がありますが、
頭上に垂れ下がっている物は見えますか?
雑賀衆 無二
ああ、鍾乳石ってんだろ?
あのツララみてえなやつ。
退魔師 真理亜
はい、あの根本は吸血蝙蝠の
ねぐらになっている場合が多く。
退魔師 真理亜
足場に乗っている間、
幾度か襲撃されますので、
ご注意ください。
雑賀狐 大騎
あんな狭い所で戦えますかね?
雑賀衆 下針
まあ、襲ってくるってんなら
相手をするしかないさね。
退魔師 真理亜
また、足場が向こう岸に
近づいた頃合いを見て、
飛び移る必要があるのですが。
退魔師 真理亜
この際、こちらの跳躍に合せて
襲ってくる個体がいます。
退魔師 真理亜
空中で撃退する必要がありますので、
各自、備えをお願いします。
雑賀衆 無二
なんでまた、そんな殺意に満ちた
動きをする個体が居るんだよ……
退魔師 真理亜
そのように飼いならされてます
からね、これも修練の一環です。
退魔師 真理亜
確かに危険は伴いますが、
皆さんの技量であれば
問題は無いと考えます。
退魔師 真理亜
では、手本を兼ねて私から行きますね。
雑賀孫六
改めて言うけど、ほんとに
退魔師って大変な仕事なのね……
#endregion
**[[後半に続く>https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/1045.html]]
2021-10-19T16:32:49+09:00
1634628769
-
魔刀戦記-軍神-
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/809.html
#contents
*予告
&size(18){親方!空から女の子じゃなくておっさんが!}
&size(18){魔刀戦記-軍神-}
&size(18){軍神こと上杉謙信の猛攻に耐えつつ鬼道衆の策を破れ!筋肉もあるよ!}
何がどうしてどうなっているかがさっぱり分からんが、おぬしの父親が空から降って来たのじゃ!
さっそく諸々を問い詰めたい所じゃが、何らかの術の影響により呼吸はあれど意識はあらずな
状態となっており、そう簡単に話は進まない様子じゃ。
更には、鬼道衆による襲撃の報せを受けたわしらを待ち受けていたのは、なんと、あの上杉謙信であったのじゃ。
なぜ奴が鬼道衆に加担するのかは分からぬが、いくら問うても口を開こうとせぬので何らかの事情があると推測される。
まずは上杉謙信とその部下が率いる部隊を抑えつつ、地道に情報を探るより他に手段はあるまいな。
また、武田家の者達は上杉家と戦い慣れておるとも聞くので、今回の戦いでは大きな力となるであろう、
また武田家がキラーか!との声が聞こえなくも無いが、それとなく準備を進めておくがいい。
中盤以降の展開について
#region
-直近で実施した人気投票の上位入賞者がボスして登場
-人気投票は複数部門で実施されたが動物部門の入賞者二人が登場していた
#endregion
*イベントストーリー
**開幕 予期せぬ再開は予期せぬ形で
#region
|ひまり|
なにいっ!空から女の子ではなくおっさんが降って来たじゃと!?
----
|(プレイヤー)|
おっさんじゃなくて、僕と紫音の父さんですよ!
----
|ひまり|
おぬしらの父親と言う事はいい歳であろう、つまりはおっさんではないの?
----
|(プレイヤー)|
おっさんかどうかの話はもういいですから……とにかく、早く会いに行きましょう
----
|ひまり|
噂に名高い軍神の対応に追われていると思えば、予想外の珍客であるな
----
|(プレイヤー)|
上杉謙信はなぜ鬼道衆なんかに加担してるんでしょうかね
----
|ひまり|
ふふふ、加担してるんでしょうかね、などと冷静な風を装っておるがわしにはバレバレじゃぞ
----
|ひまり|
先程からおぬしはソワソワしっぱなしじゃ、そんなに父親の事が気になるのか?
----
|(プレイヤー)|
それはまあ、気になりますよ……別にいいじゃないですか!やっと帰って来たんだし
----
|ひまり|
いまさらじゃが、おぬしらの父親の名は何と申すんじゃ?
----
|(プレイヤー)|
天道(テンドウ)ですよ、天道父さんです、って、そんな事も知らなかったんですか?
----
|ひまり|
王の座を捨てた放蕩者の名前なんぞに興味がなかっただけじゃ
----
|ひまり|
そのおかげで紫音が苦労を背負いこむ羽目ともなっておる、ひとまずは説教じゃな
----
|(プレイヤー)|
紫音だけじゃなくて僕も結構背負いこんでるんですが、それは
----
#endregion
**第1話 黙して語れず
#region
|紫音|
お父さん、どうなっちゃったの?ねえ、ひまり様!
----
|ひまり|
それがわしにも分からんのじゃ、何らかの術の影響を受けているのは間違い無さそうじゃが
----
|ひまり|
意識が無く、脈も体温も無い、そして肌は彫像のように固まっておるしのう
----
|平賀源内|
それこそ本物の彫像なのではないか?そんな気すらしてしまうよ、この状態は
----
|(プレイヤー)|
これが本当に父さんだった時の事を考えると、うかつには動けませんよね
----
|ひまり|
うむ、ひとまずは鬼道衆の撃退を最優先とし、この者の調査も平行して行うぞ
----
|紫音|
お父さん、やっと会えたのに……それにお母さんは?お母さんはどうしたの!?
----
|平賀源内|
紫音君には気の毒だが、不測の事態に巻き込まれてる可能性が高いだろうな
----
|ひまり|
そもそも、先代とその妻はどこで何をやっておったのか、分からん事だらけじゃ
----
|紫音|
そんな……お兄ちゃん、私、どうすればいいの!
----
|(プレイヤー)|
残念だけど僕達に出来る事は無いよ、まずは情報を集めて父さんを元に戻さないと
----
|平賀源内|
流石は(プレイヤー)君だ、肉親があの状態だと言うのによく落ちつけているな
----
|(プレイヤー)|
父さんって他人を驚かす為に命を賭ける人なので、これもその一環なんじゃないかって
----
|(プレイヤー)|
そう思う事にしてるんです、母さんの事も含めて不安な気持ちは拭いきれませんけどね
----
|(プレイヤー)|
だから紫音も落ちつけって、それじゃ父さんの思うツボかもしれないぞ?
----
|紫音|
う、うん、分かったよお兄ちゃん……私一人が騒いでても、問題は解決しないもんね
----
|紫音|
不安だけど、心配だけど……我慢する、落ちつくのが一番なんだよね?お兄ちゃん
----
|(プレイヤー)|
あの父さんだ、殺したって死ぬ訳が無いし……絶対大丈夫だ、安心しろ
----
|ひまり|
母親の件も含め問い質す事も山ほどあるからのう、この件については別途調査を進めるとして
----
|ひまり|
それより何より今は鬼道衆と上杉謙信じゃ、この戦に負けては元も子も無いからな
----
#endregion
**第2話 義によって
#region
|[[武田信玄]]|
謙信め、一体何を考えてあのような事を……
----
|(プレイヤー)|
戦場でも何も語ってくれませんからね、信玄さんは何か心当たりがありますか?
----
|(プレイヤー)|
島津家の方達みたいに、ただ暴れたいとかそんな理由くらいしか思いつかなくて
----
|[[武田信玄]]|
あの者は己の中に決して揺るがぬ義を抱いてる、それに基づいての行動なのだろう
----
|(プレイヤー)|
義ですか、人間の方ってよくその言葉を使いますが、未だに意味を掴みかねてます
----
|[[武田信玄]]|
義とは、人として踏み行う正しい道筋の事を指した言葉だと伝えられている
----
|[[武田信玄]]|
己がこれと決めた道を絶対に正しい物だと信じ突き進む者、とも言いかえられるな
----
|[[武田信玄]]|
もっとも、多様化する人の営みの中で何をもって正しいとするかは、既に答えの無い問いであるがな
----
|(プレイヤー)|
その義を、謙信さんは持っているんですね、それも揺るがない義を
----
|(プレイヤー)|
その謙信さんが鬼道衆を正義だと判断したとすれば、かなり厄介ですね
----
|[[武田信玄]]|
だが、義に沿った行動とは時に立場の違いすら超越し、万人を納得させる説得力を持つのだ
----
|[[武田信玄]]|
あの振舞い、本当に奴の中の義に依る物なのか……考えれば考える程、疑わしいな
----
|(プレイヤー)|
では謙信さんは何らかの理由で協力を強いられているんでしょうか?
----
|[[武田信玄]]|
可能性は十分に考えられるな、謙信が戦において名乗りを上げぬなど考えられん
----
|[[武田信玄]]|
奴の名乗りは、己の信じる義を通す為の誓いのような物だからな
----
|(プレイヤー)|
なるほど、信玄さんは謙信さんの事をかなり詳しくご存知なんですね
----
|[[武田信玄]]|
フフッ、甲斐の虎、越後の龍などと並べてからかわれる程度には顔馴染みでな
----
|[[武田信玄]]|
ともあれ、お前の城には上杉に関わる者も居たはずだ、奴らにも話を聞いておけ
----
|[[武田信玄]]|
それと、奴の周辺や最近の動向も探らせておくべきだ、何かが網にかかるかもしれん
----
|(プレイヤー)|
分かりました、既に動いてる所もありますが改めてその方向で進めてみますね
#endregion
**第3話 軍神の乱心?あるいは
#region
|[[絶姫]]|
私の愛で、溢れんばかりの愛できっと謙信様は正気に戻ってくれるはず!
----
|[[上杉景勝]]|
…………
----
|[[上杉景勝]]|
…………
----
|ひまり|
上杉関係者から話を聞くのは良いとして、なぜよりにもよってこやつらなんじゃ?
----
|(プレイヤー)|
他の方々は出払ってまして、何とか都合がついたのがこの方達だけです
----
|[[絶姫]]|
よりにもよって酷く無い?私だって立派な上杉関係者なんだよ!?
----
|[[上杉景勝]]|
…………
----
|ひまり|
おぬしは謙信の追っかけをやっておるだけじゃろう……
----
|(プレイヤー)|
景勝さんも相変わらずの無口ですよね、確かにこれは早まったかもしれません
----
|[[絶姫]]|
謙信様があの悪党共の味方をするなんて絶対おかしい、きっと裏があると思うの
----
|ひまり|
その裏を探るべくおぬしらを呼んだんじゃが、何か心当たりは無いか?
----
|[[絶姫]]|
それがあったらすぐにでも教えてあげたいんだけどね、景勝様は何かありますか?
----
|ひまり|
………宇佐美
----
|[[絶姫]]|
ああそうだ!一緒に居るはずの宇佐美様を全然見ない気がする
----
|ひまり|
ウサ美?サキムニの関係者か誰かか?
----
|[[絶姫]]|
違うって、宇佐美様は人間!宇佐美定満(ウサミサダミツ)様だよ
----
|ひまり|
………軍師
----
|[[絶姫]]|
景勝様の仰る通り上杉の軍師なんだけど、本当は謙信様達と一緒にいるはずなの
----
|[[絶姫]]|
謙信様と、柿崎景家様と宇佐美定満様、いつもこの三人で旅をしてるのよ
----
|ひまり|
本来居るはずの者が居ないとなれば、怪しいのう、実に怪しいのう
----
|(プレイヤー)|
同感です、周辺調査は宇佐美定満さんに絞って進めた方がいいですね
#endregion
**第4話 お抱え忍び
#region
|ひまり|
大方そのような話と踏んではいたがのう、流石の軍神も人の子であったと言う事か
----
|ひまり|
----
人質を取って協力を強要ですか、鬼道衆はもう悪党一直線ですね
----
|ひまり|
ふんっ、家臣一人の命と引き換えに軍を動かすなど、王としての器が知れるわ
----
|ひまり|
さっきからなんでひまり様は全否定してるんですか……
----
|[[服部半蔵]]|
宇佐美定満が捕らわれている砦も、特定には至らないが目星はついている
----
|[[服部半蔵]]|
このままあの連中を相手取るか、人質をこちらで救出するか、悩み所だな?
----
|(プレイヤー)|
今すぐ助けましょう!そうすれば謙信さん達も戦う理由が無くなるはずです
----
|ひまり|
諸々を勘案してもそれが確かに理想ではあるが、賭けとなる部分は否めぬな
----
|[[服部半蔵]]|
そう簡単に救出が成るなら初めから上杉方が手を回しているはずだ
----
|(プレイヤー)|
戦いの理由も一切語ってくれませんからね、いわゆる話せば殺すなんでしょうけど
----
|ひまり|
まかり間違って人質に大事があれば逆恨みされかねん、慎重に判断すべきじゃな
----
|ひまり|
おぬしはどう思う?半蔵よ
----
|[[服部半蔵]]|
万全を期すなら戦に専念すべきだが、それでは(プレイヤー)の気が収まるまい
----
|[[服部半蔵]]|
よって人質救出の線で動く事を提案しよう、確かに賭けであるが見返りも大きい
----
|(プレイヤー)|
ありがとうございます半蔵さん、僕も是非それで進めて欲しいです
----
|ひまり|
二対一か、そこまで言うからには勝算があるんじゃろうな?
----
|[[服部半蔵]]|
幸い、この城には才に長けた者が多い、とりわけ秘密裏に工作を進める才にな
----
|[[服部半蔵]]|
確実なる勝利は約束出来ないが、分の悪い賭けともならないだろう
----
|ひまり|
ようは立ち回り次第じゃな、よし、宇佐美定満を救出し上杉謙信に叩きつけてやろう
#endregion
**第5話 最後の鬼道四傑
#region
|ひまり|
何者じゃこいつは!その辺の雑魚とは桁が違うぞ
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
ワシは鬼道四傑がひとり南華老仙(ナンカロウセン)じゃ、鬼眼とやらを名乗らせてもらっているぞ
----
|(プレイヤー)|
仙人である貴方がなぜ鬼道衆の味方なんかしてるんですか!
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
この眼が見定めたのじゃ、真の太平の世を築くのはあの男、鬼道王だとな
----
|ひまり|
己の意に沿わぬ者を力ずくで捻じ伏せているだけじゃ、そんな大層な連中ではなかろう
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
それほどまでに現世は穢れ、腐敗の限りを尽くしておる……
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
言葉で導けぬ以上は荒療治をもって事に当たるしかない、それをやり抜けるのがあの男じゃ
----
|(プレイヤー)|
説得が通じるような相手では無さそうですね
----
|ひまり|
うむ、完全に鬼道王に心酔しきっておるようじゃ
----
|ひまり|
それに加えてあの妖術じゃ、鬼道四傑とやらも最後の最後で恐ろしい化け物が現れおったな
----
|(プレイヤー)|
もしかして、宇佐美定満さんが誘拐されてしまった件にも噛んでいるのでしょうか?
----
|ひまり|
上杉謙信を出し抜けるとすればよほどの使い手であろう、それも十分に考えられるな
----
|(プレイヤー)|
ではこの先、南華老仙に操られた宇佐美定満さんと戦う展開もありそうですね
----
|ひまり|
洗脳寝とむにゃむにゃな展開は一部のおぬしに大不評じゃったので、基本的には無いはずじゃ
----
|(プレイヤー)|
もう八割ぐらい言っちゃってますけどね、それ
----
#endregion
**第6話 囚われの天才子供軍師
#region
|[[宇佐美定満]]|
天才軍師たるあたしが謙信様の足を引っ張るなんてなんたる不覚!
----
|[[宇佐美定満]]|
ここは一発やるしかない!幸いにも見回りの骨は中身が無いからチョロそうだし……
----
|見回り鬼道衆|
さっきから何を騒いでんだ?あんまりうるせえとメシ抜きだぞ!
----
|[[宇佐美定満]]|
ちょ、ちょっとそこのお兄さん!
----
|見回り鬼道衆|
ああ?なんだ捕虜
----
|[[宇佐美定満]]|
あっ、あたし……体が熱いの、お兄さんを見てるだけでもうあっはーんなの……
----
|[[宇佐美定満]]|
ねえっ、ここで一緒にあたしとねちょねちょでぐちょぐちょな、夢のようなひと時を
----
|見回り鬼道衆|
いや、俺は骨だし……つか、お前みたいなチンケなガキが色仕掛けなんて十年早いぞ
----
|[[宇佐美定満]]|
あたしはチンケでもガキでもなぁーい!天才軍師の宇佐美定満様よ、頭が高い、ひれ伏せ!
----
|見回り鬼道衆|
お前、鬱陶しいからやっぱメシ抜きな
----
|[[宇佐美定満]]|
ふふふ、捕虜を虐待なんてしたらお兄さんの立場が悪くなるだけだと思わない?思うよね
----
|見回り鬼道衆|
思わん、じゃあな
----
|[[宇佐美定満]]|
うわああっ!待てー!ご飯を抜いたりなんかしたらおっきくなれないでしょ!待ってよ!
----
#endregion
**第7話 人員の見極め
#region
|(ひまり)|
宇佐美定満が捕らわれし砦を発見したか、良くぞやってくれた!
----
|[[服部半蔵]]|
だが喜んでいる暇は無い、早々に救出部隊を編成し奴を奪還せねばな
----
|(プレイヤー)|
人質救出となると大勢で押し掛ける訳にも行きませんから、少数精鋭ですね
----
|[[服部半蔵]]
とにかく秘密裏に動く必要があるからな、俺の他にあと二名程、人員が欲しい
----
|(プレイヤー)|
たった三人で大丈夫なんですか?
----
|[[服部半蔵]]|
いかに敵を倒すかではなくいかに敵の目を盗むかの勝負になる
----
|[[服部半蔵]]
だが、人質救出後はある程度の交戦は避けられないだろうからな
----
|(プレイヤー)|
その点を踏まえた場合の理想的な人数が三人、と言う事なんですね
----
|(ひまり)|
この展開を予め見越しておいたわしは既に残り二人を確保済みである、いでよっ!
----
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
忍びこむ、助ける、倒して逃げる、完全に覚えた……大船に乗る準備は出来た?
----
|[[猫将軍]]|
人質を取るにゃど卑怯千万っ!ワガハイの正義の太刀が悪をこらしめるにゃ!
----
|(プレイヤー)|
……いや、小雪さんはともかく猫将軍さんが何故
----
|(ひまり)|
やれやれ、家臣の能力を把握するのが王の務めだと言うに……ほれ、やってみせよ
----
|[[猫将軍]]|
承知にゃ!ワガハイの歩行術をとくとご覧あれにゃ
----
|(プレイヤー)|
普通に歩いてるようにしか見えませんけど
----
|(ひまり)|
甘いな、こやつが備える肉球により全く足音を立てずに歩く事が可能なのじゃ!
----
|(プレイヤー)|
ほら、半蔵さんも呆れてずっと固まってるじゃないですか
----
|[[服部半蔵]]|
人間のみでは対応出来ない不測の事態が発生した場合は、妖魔の力が必要だ
----
|[[服部半蔵]]|
確かに忍びの者のみで固めるのは下策、だが、しかし……いや、うぬぬ……
----
|(ひまり)|
ひまり様は単に意表を突きたかっただけでしょうし、真剣に考えなくて大丈夫ですよ
----
#endregion
**第8話 父親の容体は
#region
|(プレイヤー)|
上杉謙信さん達の方は順調ですが、父さんの件に関しては進展無しですね……
----
|(ひまり)|
仙狐族の技術やら英知やらを結集してはみたものの、手掛かりの一つも得られんとはな
----
|(プレイヤー)|
妖狐族にも協力を要請しませんか?このまま隠し通すのも難しいと思います
----
|(ひまり)|
事が事だけにあまり妖狐の奴らには知られたくないが、仕方無かろうな
----
|(プレイヤー)|
僕達と比べてもずっと規模の大きい国ですし、きっと何か手掛かりがあるはずです
----
|(プレイヤー)|
ひまり様が心配するように、あまり向こうに借りを作ると後が怖いんですけどね
----
|(ひまり)|
紫音の奴めも不憫でならんからのう、目指すべくは早期解決じゃな
----
|(プレイヤー)|
分かりました、ではそれで進めましょう
----
|(プレイヤー)|
それとついでと言ってはなんですが、鬼道衆の砦への潜入を開始するそうです
----
|(プレイヤー)|
半蔵さんも悩んだ末に結局ひまり様が選んだあの二人を連れて行きましたからね、無事だといいんですが
----
|(ひまり)|
わしの采配は完璧じゃ、むしろあの三人以外に宇佐美定満の救出など不可能である
----
|(プレイヤー)|
その何でも言い切れる自信が羨ましいですよ
----
|(ひまり)|
しかし天道か……天に昇る太陽を意味するその名前を持つとなれば、暑苦しい男なのか?
----
|(プレイヤー)|
それもありますけど、父さんは良く言えば豪快、悪く言えば無鉄砲です
----
|(プレイヤー)|
常に昇っていたら困りますが無ければ無いで困る、そういう意味でなら太陽と言えますね
#endregion
**第9話 人妖忍びの交流会
#region
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
ご苦労さま、よしよし
----
|[[服部半蔵]]|
小雪殿の操るその影共、影分身の類であるのか?
----
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
分からない……でも有能、言う事を聞いてくれるし丸くて可愛い
----
|[[服部半蔵]]|
成程、忍術の類であれば是非とも学ばせて頂こうかとは思ったが……
----
|[[猫将軍]]|
見回りが居るにゃ!どうやって切り抜けるにゃ?
----
|[[服部半蔵]]|
小雪殿への返礼として、影にまつわる伊賀の忍法をお目にかけよう
----
|[[猫将軍]]|
とかにゃんとか言いながら、手裏剣を外してるにゃ!もっとしっかり狙うにゃ!
----
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
違う……みて、奴の足元
----
|[[猫将軍]]|
にゃ?ただ手裏剣が床に突き立ってるだけにゃ
----
|[[猫将軍]]|
でもおかしいにゃ、にゃんであの見回りは急に動きを止めたにゃ!?
----
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
本体じゃなくて、影に攻撃して動きを封じてる……で、あってる?
----
|[[服部半蔵]]|
左様、これぞ忍法影縛りの術
----
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
忍者……いい、凄くいい、私も何か忍法覚えようかな
----
|[[猫将軍]]|
あんたもにゃあから見ると十分に忍者っぽい存在ですにゃ
----
|[[服部半蔵]]|
忍びの者は背の丈程もある大鎌などは用いぬのだがな……
----
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
そろそろ牢に着く頃、ここらで役割分担する?暴れる方と助ける方
----
|[[服部半蔵]]|
うむ、では小雪殿に陽動を頼めるか?宇佐美定満に接触するのは人間の方がよかろう
----
|[[猫将軍]]|
ワガハイは陽動を担当させてもらうにゃ、大暴れして敵の目を引きつけるにゃ!
----
|[[小雪>仙狐四天王 小雪]]|
私の陽動……爆発、じゃんじゃん使うけど、一緒に来る?おヒゲがチリチリするかも
----
|[[猫将軍]]|
やはり気が変わったので遠慮させてもらいますにゃ
----
#endregion
**第10話 目標確保
#region
|[[宇佐美定満]]|
さて、囚われの身となっている私の今後は一体どうなるか!
----
|[[宇佐美定満]]|
答え1、天才軍師の宇佐美定満は突如脱出方法を思いつく
----
|[[宇佐美定満]]|
答え2、謙信様がきて助けてくれる
----
|[[宇佐美定満]]|
答え3、逃げられない。現実は非情である
----
|[[服部半蔵]]|
お静かに、貴殿が宇佐美定満に相違無いな?
----
|[[猫将軍]]|
ワガハイ達が助けに来たからにはもう安心にゃ、早くここを出るにゃ
----
|[[宇佐美定満]]|
へ?助けに来たのは忍者と猫!?まさかの四つ目の答えがあろうとは……
----
|[[服部半蔵]]|
我らは貴殿を救出に参ったのだ、改めて聞くが宇佐美定満に相違無いな?
----
|[[宇佐美定満]]|
そうよ、私が上杉の天才軍師こと宇佐美定満よ!どれくらい天才かって言うと具体的には
----
|[[宇佐美定満]]|
うひゃああっ!
----
|[[服部半蔵]]|
この爆発音、始まったようだな
----
|[[猫将軍]]|
やっぱり向こうに行かにゃくて正解だったにゃ、おヒゲの危機だったにゃ
----
|[[宇佐美定満]]|
え、何!?忍者と猫の次は爆発?もう矢でも鉄砲でも持ってこーい!
----
|[[服部半蔵]]|
では急がれよ宇佐美定満殿、さもなくばこの崩壊する砦と運命を共にする事になる
----
|[[宇佐美定満]]|
よく分からないけどここから出してくれるんだよね?じゃあ行く行く!
----
|[[猫将軍]]|
ぎにゃっ!何やら焦げ臭いのも漂って来たにゃ、急がないと丸コゲにゃ!
----
#endregion
**第11話 第二幕開始
#region
|(ひまり)|
さて、形勢逆転じゃのう
----
|(プレイヤー)|
これで上杉家の方々も鬼道衆に協力する理由は無くなりましたよ、降伏してください
----
|(ひまり)|
救出した宇佐美定満を始め上杉の者達も快く協力に応じてくれたわ、年貢の納め時じゃな!
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
ヒッヒッヒ……甘いのう、上杉の連中も所詮は駒、無くなってしまえば代わりを用意するまで
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
お前達が以前城で行っていた馬鹿騒ぎはこの耳にも届いておる、それを利用させてもらおう
----
|(ひまり)|
馬鹿騒ぎ?何の事じゃ
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
城の者共を集め人気を競っておったろう?隠した所で無駄じゃ、既にワシの術は成っておる
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
さあ、愛する者達に刃を向けられるか?貴様らは、貴様らが選んだ者の手で滅びるのじゃ!
----
|(プレイヤー)|
まずいですねひまり様、何がまずいかって、イベント詳細を必読した僕にはネタバレしてます
----
|(ひまり)|
幻影兵がどうのこうのと書いてあるからのう……出オチはおろか、出る前からオチておるわ
----
|(プレイヤー)|
まあ、知らないフリをしながら戦って、鬼眼のなんちゃらの顔を立ててやるとするか
----
#endregion
**第12話 鬼眼を以てして見通せぬ
#region
|[[鬼眼の南華老仙]]|
なぜじゃ!愛する者の姿を前にしてなぜ躊躇う事無く戦う事が出来るのじゃ!
----
|(プレイヤー)|
極少数の僕じゃない僕なら躊躇うかもしれませんが、あの人選では効果が薄いかと
----
|(ひまり)|
動物枠を参考にされてものう……とんだ節穴じゃったな、鬼眼が聞いて呆れるわ
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
どうやら最後の最後で詰めを誤ったようじゃな
----
|(プレイヤー)|
一番誤っちゃ駄目な所を誤ってますねよね
----
|(ひまり)|
しかしあの幻影兵、見た目で動揺を誘う効果は薄いが単純な戦力として見れば侮れん
----
|(プレイヤー)|
無尽蔵に湧いてきますからね、術者の南華老仙を討つしかないと思います
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
まあよい、この戦も挨拶代わりのようなものじゃて、この失敗を教訓とさせてもらおう
----
|(ひまり)|
次の機会など与えぬわ、この地を貴様の墓としてくれる!
----
|[[鬼眼の南華老仙]]|
それは願い下げじゃな、この場は一旦退かせてもらうぞ、さらばじゃ!
----
|(ひまり)|
消えたじゃと!?おのれ、ご都合転移術を体得しておるとは流石は悪の組織の幹部じゃな
----
|(プレイヤー)|
怪しい術の話は置いておくとして、人質を取るなんていよいよもって悪の組織ですね
----
|(プレイヤー)|
無差別攻撃を仕掛けるような奴らなので、今更な話ではありますけど
----
|(ひまり)|
連中も追い詰められ、余裕が無くなって来たのじゃろうな
----
|(プレイヤー)|
天狐族の問題もありますし、叩けるなら先に叩いてしまいたいです
----
|(ひまり)|
連中の本拠地を特定出来ればまだ動きようもある、織田家の調査に期待じゃ
----
#endregion
**第13話 掃討は徹底的に
#region
|(ひまり)|
聞きしに勝る軍神具合じゃ!此度の協力は感謝しておるぞ
----
|[[上杉謙信]]|
人の道を外れた汚い手を使う連中に、そして己の不甲斐無さに、私は腹を据えかねている
----
|[[上杉謙信]]|
そこに憂さを晴らせる機会が到来したのだ、徹底的に思い知らせてやるさ
----
|(ひまり)|
いいぞ謙信様ー!あんな卑怯な奴らはぶっ潰してくださーい!
----
|[[宇佐美定満]]|
どこぞの天才軍師様があっさりと拉致されねばこのような事態とはならなかったがな
----
|(プレイヤー)|
まあまあ、人間の方は妖術への耐性が低いので仕方ないですよ
----
|[[宇佐美定満]]|
妖魔の研究と分析にも本腰入れる事にしたからいいの!種さえ分かれば怖く無いんだから
----
|(ひまり)|
人間を相手にするのとは訳が違うからのう、これを機に備えておくのがよかろう
----
|(ひまり)|
舟遊びの最中にうっかり水死してしまいそうな程にそそっかしいが、優秀そうではあるからな
----
|[[上杉謙信]]|
では私はまた景家と出る、定満の事は頼んだぞ
----
|(ひまり)|
うむ、おぬし達が暴れれば暴れる程に我らも動きやすくなる、存分にやるがよい
----
|(ひまり)|
任せておけ、奴らへの貸しは徹底的に取り立ててやるつもりだ、毛の一本も残さずな
----
#endregion
**第14話 激戦を制するは?
#region
|[[招き猫 けんにゃん]]|
信玄、信玄はどこにゃ!
----
|[[招き猫 にゃんげん]]|
ここにゃ謙信、本陣を動かさにゃければにゃらんなど、この勝負はにゃあの勝ちだにゃ
----
|[[招き猫 けんにゃん]]|
その首を討ち大逆転にゃ、この戦は上杉がもらうにゃ!
----
|[[招き猫 けんにゃん]]|
せにゃー!!
----
|[[招き猫 にゃんげん]]|
にゃんとお!
----
|[[招き猫 けんにゃん]]|
ちょっと待つにゃ、にゃあの刀を受けるのは軍配じゃにゃいと駄目にゃ
----
|[[招き猫 にゃんげん]]|
そうだったにゃ!初めからまたやりにゃおしてもらっていいですかにゃ?
----
|[[招き猫 けんにゃん]]|
問題にゃあ、にゃあも馬に乗れにゃいのでお互い様にゃ
----
|[[招き猫 にゃんげん]]|
一緒に頑張って、かわにゃかじまの勝負を再現するにゃ!
----
|[[招き猫 けんにゃん]]|
望むところにゃ、共に最高の作品を作り上げるにゃ!
----
|(プレイヤー)|
(暇そうで羨ましいなぁ……)
#endregion
**第15話 鍵は常闇にあり?
#region
|[[妖狐 睡蓮]]|
妖狐を頼ってくれるのは光栄だけど、残念ながら力になれそうには無いわね
----
|[[妖狐王 幻月]]|
貴様らの先代の容態を見るに、何らかの術の影響下にあるのは間違い無い
----
|[[妖狐王 幻月]]|
だがその正体までは分からんな、少なくとも狐妖の扱う術ではなかろう
----
|ひまり|
やはりそうか、変わり種と言えば常闇の連中が得意とする魔術になるか?
----
|[[妖狐 睡蓮]]|
残る可能性となればその辺りかしら、天神の連中が使う術も怪しいと言えば怪しいけどね
----
|[[妖狐王 幻月]]|
あの底意地の悪そうな術を天女共が使えるとは思えんがな
----
|(プレイヤー)|
睡蓮さんの言う事も一理ありますが僕も常闇由来の術な気がします、根拠は乏しいですが
----
|ひまり|
うむ、常闇方面の探りを進めるのが良さそうじゃな
----
|ひまり|
先代をあのような状態にした犯人は謎じゃが、少なくとも狐妖ではないと決まったな
----
|[[妖狐 睡蓮]]|
妖狐と仙狐の知恵を集めても正体が掴めない術を天狐の連中が使える訳無いしね
----
|ひまり|
方針も決まった事じゃしこれでお開きとするか、協力に感謝するぞ
----
|[[妖狐王 幻月]]|
構わぬ、貴様ら仙狐と妖術について議論を交わす機会などそうそうは無いからな
----
|[[妖狐王 幻月]]|
これも余興の一つと思えば、十分に楽しめたわ
----
|[[妖狐王 幻月]]|
余興ついでに私達で(プレイヤー)を借りても構わぬか?
----
|ひまり|
別に構わんが、どうするつもりじゃ
----
|[[妖狐王 幻月]]|
なあに、国の未来の為に奮闘する若き王を労ってやろうと思ってな
----
|(プレイヤー)|
具体的にはどうなるんでしょう
----
|[[妖狐 睡蓮]]|
具体的に語るなら、貴方達で言う伏せ字の術とやらが必要になるわね
----
|ひまり|
うーむ……敢えて許可
----
|(プレイヤー)|
しないでください!あの方々が二人がかりだと本当に僕死んじゃうので……
----
#endregion
**第16話 お役に立ちたい
#region
|(プレイヤー)|
見知った顔と戦うのはいつもの事なので、あの二人じゃなくても問題無かったと思いますけどね
----
|ひまり|
いつぞやの小雪の影のように顔が怖い訳でも無かったからのう
----
|[[小雪の影]]|
呼ンダァ!?私、呼バレタァ?(プレイヤー)が呼ンデクレタ!
----
|ひまり|
噂をすれば影ならぬ、噂をすれば小雪の影じゃな
----
|(プレイヤー)|
むしろ陰口みたいになってすみません、小雪さんの影さん
----
|[[小雪の影]]|
気ニシナァイ!私ガ居ラレルノモ(プレイヤー)ノオカゲェ、ダカラ気ニシナァイ!
----
|ひまり|
そう言えばおぬしも常闇の関係者と言えなく無いが、先代の容態に心当たりはあるか?
----
|[[小雪の影]]|
知ラナイ、デモ知ッテルゥ?分カラナイ、デモ感ジルゥ?
----
|ひまり|
小雪に眠る夢魔の血が反応してるとでも言った所かのう
----
|(プレイヤー)|
でも、小雪さんも夢魔さんも心当たりはないと言ってたはずなんですけどね
----
|ひまり|
本能のままに振舞うこやつだからこそ、感じ取れる物があったのかもしれん
----
|ひまり|
これはどうも常闇由来の力で間違い無さそうじゃな
----
|[[小雪の影]]|
ドウシタノ?私、変ナ事ヲ言ッタノォ?
----
|(プレイヤー)|
そんな事はないです、むしろお手柄ですよ
----
|[[小雪の影]]|
ヤッタァ!私ハ手柄ァ、手柄デ(プレイヤー)ノ役ニ立ッタァ、嬉シイイ!
----
#endregion
**第17話 二番じゃ嫌?
#region
|[[山県昌景]]|
川中島の時はほんっと手を焼かされたけど、やっぱ味方になると心強いよな!上杉
----
|プレイヤー|
川中島と言えば武田家と上杉家の大きな戦ですよね、招き猫が再現を試みてました
----
|[[山県昌景]]|
信玄みたいな猫はそんな事を!?そういえば、上杉謙信みたいな猫も居たよね!
----
|[[山県昌景]]|
いつかは私みたいな猫も出て来るのかな?
----
|プレイヤー|
物凄く有名な大名になったらその可能性もありそうですね
----
|[[山県昌景]]|
そっか、私みたいな猫は見てみたいけど……だったらいいや
----
|プレイヤー|
あまり名を上げたりする事には興味が無いんですか?
----
|[[山県昌景]]|
功名心ってのはあるよ、あるけど、私は信玄の家臣として名を上げたいんだ
----
|プレイヤー|
なるほど、第一に信玄さんの家臣でありたいとの話ですね
----
|[[山県昌景]]|
だねっ、私は武田の四天王だし私の主は信玄だからね
----
|[[山県昌景]]|
でも二番目の主ってなるとそこは(プレイヤー)で確定かな、二番じゃ嫌?
----
|プレイヤー|
とんでもないです、協力して頂いてる身分なのでそう言って頂けると嬉しいですよ
----
|[[山県昌景]]|
良かった、何でも一番じゃないと気が済まない奴ばっかりだからね
----
|[[山県昌景]]|
ようっし!そんな謙虚な(プレイヤー)のためにも、また敵を蹴散らしてくるよ!
----
|プレイヤー|
えっ、先程補給を済ませたばかりでは?
----
|[[山県昌景]]|
いいのいいの、それに私も信玄みたいな猫と上杉謙信みたいな猫の寸劇を見たいしね
----
|[[山県昌景]]|
んじゃま行ってきまーす!炎のごとく蹂躙だぁー!
----
#endregion
**第18話 楽屋裏にて
#region
|ひまり|
よくぞこの打ち上げ会場まで辿りついた!親指や人差し指の具合は大丈夫か?
----
|(プレイヤー)|
よくよく考えてみると打ち上げ会場じゃなくて楽屋裏ですよね、ここ
----
|ひまり|
ならば、楽屋裏に似つかわしい普段はおおっぴらに出来ない話でもするとしよう
----
|(プレイヤー)|
ここの会話もいずれストーリーに追加されるんですが……あそこ見る人少ないだろうしいいのかな
----
|ひまり|
謎の勇者が登場しまた風呂敷を広げたか!と思わせつつ父親が急展開してきたな
----
|(プレイヤー)|
でも意識不明だし、母さんはまだ行方不明だし、家族が揃うのはまだ先の話ですね
----
|ひまり|
おぬしの母親も、今頃はロキにあんなことやこんなことをされてウハウハしておるのか?
----
|(プレイヤー)|
してません、多分
----
|ひまり|
そのうち洗脳されて魔城ボスとして出て来るのか?
----
|(プレイヤー)|
出て来ません、多分、いや……やっぱり出て来るかもしれません
----
|ひまり|
人妻洗脳寝とむにゃむにゃ悪むにゃむにゃか、また一つわしらの歴史に罪が刻まれそうじゃな
----
|(プレイヤー)|
いや、ですから確定じゃありませんし、そんな怪しげな単語を使う展開にはなりません、多分
----
#endregion
**終幕
#region
|ひまり|
この戦を通し上杉家からの更なる助力を得られる事になったと、上々の結果じゃな
----
|(プレイヤー)|
上杉の方がこの地を訪れる機会も増えるとの話ですし、また少し戦いが楽になりそうです
----
|ひまり|
父親の件も目に見える成果は無かったにしろ、絞り込みは進んでいる状況じゃ
----
|ひまり|
あの様子を見るに一朝一夕に解決とはならぬじゃろう、根気良く調査を進めるしかない
----
|(プレイヤー)|
父さんには母さんの事を含めて聞きたい事が山ほどあります、早く意識を取り戻してもらわないと
----
|ひまり|
うむ、そのためにもまずは野球……ではない、情報を集めねばな
----
|(プレイヤー)|
ひまり様、いま野球とか言いました?言いましたよね
----
|ひまり|
さて、なんの事やら分からんのう……では、わしも忙しいのでこれにて失礼するぞ
----
|(プレイヤー)|
待ってください、明らかに野球とか言いましたよね!?また何か企んでるんですか?
----
|ひまり|
わしは分からん、なーんも分からん、ただ流れに身を任せるのみである
----
|(プレイヤー)|
そんな露骨に不吉なフラグを立てないでもらえますかね
----
|ひまり|
まあ、次なる仕掛けは前回とは一味違う、と言うよりもいつも通りであるとは伝えておこうじゃな
----
#endregion
*イベントヘッダ
|BGCOLOR(#82bbee):''名前''|>|
|>||
|>||
*主な登場人物
[[仙狐の継承者 紫音]]
[[平賀源内]]
[[服部半蔵]]
[[仙狐四天王 小雪]]
[[小雪の影>影小雪]]
[[猫将軍]]
[[武田信玄]]
[[山県昌景]]
[[上杉謙信]]
[[宇佐美定満]]
[[絶姫]]
[[上杉景勝]]
[[妖狐王 幻月]]
[[妖狐 睡蓮]]
[[南華老仙]]
*ボス
[[上杉謙信]]
-進化
-最終
#region
|BGCOLOR(#ea9999):''出現時''|>|
|>|……|
|>|悪く思うな|
|BGCOLOR(#ea9999):''撃破時''|>|
|>|……|
|>|迷いが、あったとでも言うのか?|
|BGCOLOR(#ea9999):''敗北時''|>|
|>|早く、早くしなければ……|
|>|私とした事が、何たるざまだ……|
|>|さらばだ、私は私の義を通す|
#endregion
[[柿崎景家]]
-進化
-最終
#region
|BGCOLOR(#ea9999):''出現時''|>|
|>|悪いけど死んで、それも早急に|
|>|私の意思は鉄をも貫くわ、覚悟してちょうだい|
|>|真っ直ぐ進んで首を取るだけ、ただそれだけの事|
|>|どいて、雑兵に構ってる余裕は無いの|
|>|突貫する|
|>|時間がないの、手間をかけさせないで|
|>|私が先行して叩く|
|>|止められるとでも思ってるの?|
|>|早く首を渡して、このままじゃ手遅れになる|
|>|後の事を考えるよりも手を動かして、さあ、早く!|
|>|私はいつも通りやるだけ|
|>|抵抗しても長引くだけだと理解して|
|>|その程度の守りは通じないと言っている|
|>|ただ一直線に貫くだけ|
|>|謙信様のお言葉は絶対、でも今回はそれだけじゃない|
|>|もっとまともな戦の時に会いたかったわ|
|>|幕を引かれる前に結果を出す必要があるの、覚悟して|
|>|この馬鹿な戦が終わったら、絶対に謝らせてやる|
|BGCOLOR(#ea9999):''撃破時''|>|
|>||
|BGCOLOR(#ea9999):''敗北時''|>|
|>||
#endregion
[[幻影兵 荒神]]
-進化
-最終
#region
|BGCOLOR(#ea9999):''出現時''|>|
|>|筋肉様ニ歯向カウツモリカ?愚カナ奴メ!|
|>|血湧キ肉踊ルオ祭リノ開幕ダ、行クゼ小サナオ嬢チャン!|
|>|コレガ俺ノ筋肉指導ダ、存分ニ味ワエ|
|>|筋肉革命ダ、言葉ノ意味ハ分カランガ、筋肉革命ダ!|
|>|オ前達ガ盛リ上ゲタ筋肉ガ、オ前達ヲ討ツ!|
|>|筋肉様ハ負ケナイト言ッタナ?ソノ言葉ノ通リニシテヤロウ|
|>|筋肉ハ神ヤ仏ト同ジク尊イ物ナノダ!|
|>|彷彿トスルナ!俺ハ俺ダ!|
|>|俺ガ筋肉王カ、悪クナゾ|
|>|筋肉ハ不滅、ソウ言ッタノハオ前達ダロウガ!|
|>|動物ダロウガ構ワン、筋肉ニハ関係無キ事ダ!|
|>|頑張レ(笑)ト言ッタダロ?フフフ、存分ニ頑張ッテヤロウ!|
|>|筋肉ハ勿論、勝利モ一日デハ成ラズダ、ソノ体ニ教エテヤロウ!|
|>|馬力ノ違イヲ見セテヤロウ、コレガ真ノ筋肉ダ!|
|>|コレガ筋肉独壇場ダ!道ヲ開ケロ!|
|>|筋肉痛ヲ恐レテ俺ト戦エルトデモ思ッタカ?|
|>|美シサノアマリ手ガデマイ!ソコデ見惚レテルンダナ|
|>|筋肉ガ通ラセテモラウゾ、退クガイイ!|
|BGCOLOR(#ea9999):''撃破時''|>|
|>|何故ダ、何故、刃ヲムケラレル……|
|>|コウナッテハ、コノ筋肉ニ頼ルシカナイ!|
|BGCOLOR(#ea9999):''敗北時''|>|
|>|思ウヨウニ動ケマイ、イイ気味ダナ!|
|>|術中ニ陥ッタカ、愚カ者共メ|
#endregion
[[幻影兵 屍鬼]]
-進化
-最終
#region
|BGCOLOR(#ea9999):''出現時''|>|
|>|ヒャヒャヒゃ!蹴鞠ナンカヨリ、モット楽シイ事ヲシヨウゼ!|
|>|抱キツキタカッタンダロ?遠慮ハイラネエゼ!|
|>|確カニ、コンナ所ジャ負ケラレネエ、コンナチンケナ戦場デハナ!|
|>|体当タリヲ食ラットクカ?オ前ガ考案シタンダ、責任モッテ受ケ取リナ!|
|>|阿呆ダノ愛オシイダノドッチガドッチダカ分カラネエンダヨ!|
|>|困ッタ時ニ助ケテヤッテルダロウ、次ハ困ラセテヤル番ダ!|
|>|ヒャヒャヒャ、オ前ノ望ミ通リニ強化サレテヤッタゼェ!|
|>|確カニ俺ハ最古参ダ、新参野郎ニハ負ケネエゼ!|
|>|妖魔界ヲ仕切ル前ニ、コノ国ヲ仕切ッテヤルゼ!|
|>|俺以外ニ選択肢ガナイヨウニ、オ前ニハ敗北ノ道シカネエ!|
|>|俺ノ限界ガ見タカッタンダロ?イイゼ、見セテヤルヨ!|
|>|ココガ俺ノ花道ダ、雑魚ハ隅ノ方デ震エテナァ!|
|>|本当ニ俺ガ水着ヲ着タラドウスル?ドウナッテモ知ランゾ!|
|>|大好キナ俺ト戦エルカ?ヒャヒャヒャ!無理ダヨナア!|
|>|俺ノ前向キップリヲ、嫌ッテグライニ思イ知ラセテヤルゼ!|
|>|良ク見ナクテモ可愛イダロウガ!モット見ヤガレ!|
|>|残念ダッタナ、妖魔界ヲ救ウドコロカ、破壊スル事ニナッテヨ!|
|BGCOLOR(#ea9999):''撃破時''|>|
|>||
|BGCOLOR(#ea9999):''敗北時''|>|
|>||
#endregion
*主なガチャ更新家臣
[[聖夜装束雪姫 鮮華]]
[[聖夜装束天狗姫 はやて]]
[[榊原康政]]
[[阿南姫]]
[[多田満頼]]
[[森坊丸]]
*用語集
#region
#endregion
#comment_num2()
2021-09-07T07:48:50+09:00
1630968530
-
鬼一法眼
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/820.html
&size(18){鬼一法眼-規格外の男-}
#contents
*基本情報
#div(width=350px){{
|鬼一法眼|鬼一法眼+|鬼一法眼++|[轟刀]鬼一法眼|
|&image(鬼一1.jpg)||||
|能力値|能力値|能力値|能力値|
|BGCOLOR(#ea9999):''スキル''|暴嵐の到来|
|BGCOLOR(#82bbee):''関連家臣''|[奴には勿体無い弟子] [[足利義輝]]&br()[まだまだひよっこ] [[柳生十兵衛]]|
*フレーバーテキスト
**未進化
鬼一法眼(キイチホウゲン)は、人間界の中で生きる伝説の一人として数えられる年齢不詳の豪傑である。様々な剣術の源流となる京八流を生み出したともされているが、その正体は謎が多く、彼をお伽話の人物だと思っている者も数多い。ここでは彼の目撃証言の中でも有力される物をいくつか拾い、その人物像に迫ってみたいと思う「なんじゃあれは?どいつもこいつもおっかなびっくり戦いよってからに……どれ、ワシが戦の作法を伝授して進ぜよう」
**+
証言一、経験の浅い人間の兵士:そこが合戦の真っ最中だってのに、奴は空から現れたんだ!そして、何か訳の分からない事を喋りだしたと思ったら、俺達の軍も敵軍もお構いなしに暴れ始めてよ……信じられるか?たった一人、鎧兜も身に付けていない半裸の男一人に両軍が壊滅させられたんだぜ!?あの光景が夢か現実なのか、俺は未だに分からないままでいるんだ……「体を動かすと腹が減ったのう……よし、軽く腹ごしらえと行くか」
**++
証言二、大衆料理屋を営む赤鬼店長:食い切れる訳がねえ、そう確信しているからこそこんな商売が出来るんだ。だがそれを奴は、あのヒゲ面の野郎は!若い鬼が数十人がかりでも食い切れない量をペロリとな、平らげちまったのさ……平らげちまった以上は挑戦は成功、まんまとただ飯にありつかれちまったよ。なあ、奴は本当に人間なのか?どこぞの神様とかじゃねえよな?「ふぅぅ、満腹満腹と……どれ、腹ごなしついでに化け物退治と参るかな」
**最終
証言三、里に住む羊妖の女の子:えっとね、里をおそう悪い蛇がいたの!こーんなに大きくて、とってもつよくて、とっても暴れんぼうだったの……でも!ぶきをもった熊さんみたいな人間が、その蛇をね、やっつけてくれたの!でね、みんなでありがとうってして、私はよしよしってされたの!わたし、大きくなったらあの熊さんみたい人間のおよめさんになるんだぁ、えへへ……「最近の人間界はどうも刺激が足らんのう……しばらくの間、こちらで遊ぶとするか」
}}
*セリフ集
|BGCOLOR(#82bbee):''マイページ(未進化)''|チンケな戦をしておるのう……おぬし、もっと派手にやり合わぬか?&br;おぬしも一国の主ならば、髭の一つでもたくわえてみてはどうじゃ&br;ワシを本気にさせてくれるような奴が現れんもんかのう&br;腕の立つ連中を多く抱えておるが、おぬしの人徳がなせる技なのじゃろうか|
|BGCOLOR(#82bbee):''マイページ(中途進化)''|酒はやらんが美味いメシなら大歓迎じゃ、よく覚えておけ&br;いやぁ、腕がなまっていかんのう……おい、もっと危なげな奴らに喧嘩を売らんか?&br;槍も悪く無い、拳も趣きがあってよい、じゃが最後に行きつくのはやはり刀よ&br;ではさらばじゃ、西の彼方より強者の気配を感じるでのう&br;島津義弘、こ奴はかなり見所があるな&br;足利義輝と申す者、素養はあるがまだまだ経験が足りんのう&br;柳生十兵衛か、奴はもう少しばかり心を鍛える必要があるな&br;鎧兜は窮屈で気に食わんが、相手によっては無いと面倒じゃからな|
|BGCOLOR(#82bbee):''マイページ(最終進化)''|塚原の奴めに言っておけ、そんな者をいくらかっくらおうと得られる物は無いとな&br;鎧兜は窮屈で気に食わんが、相手によっては無いと面倒じゃからな&br;ガッハッハ!ワシとて年がら年中はだかではおらんぞ&br;これまで幾多の戦場を目にしたが、ワシを高ぶらせる戦など片手で数えるほどじゃ&br;人間界はほぼ見て回っておるからな、こちら側への滞在も自然と増えよう&br;肌がヒリつくような空気を最後に味わったのは、はたしていつじゃったかのう&br;柳生十兵衛か、奴はもう少しばかり心を鍛える必要があるな&br;うーむ……やはりおぬしも髭をたくわえぬか?おぬしには威厳が足りんからのう&br;槍も悪く無い、拳も趣きがあってよい、じゃが最後に行きつくのはやはり刀よ|
|BGCOLOR(#ea9999):''バトル開始''|かあーっ!こんな連中じゃあ本気になれんわ、ワシは適当にやるぞ&br;こんな物は勝負とは呼べん、お遊戯が関の山じゃな|
|BGCOLOR(#ea9999):''進軍時''|軟弱者めが!&br;出直せい!&br;次はどいつじゃ?それとも、もう止めにしておくか?&br;まったく、退屈過ぎて眠くなってくるわい|
*参加イベント
-[[仙狐修練-闘気滅鬼-]]
*参加ログインストーリー
-[[]]
*エキストラコンテンツ
#region
#endregion
2021-09-06T16:18:13+09:00
1630912693
-
そしてよくあるお約束
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/874.html
*そしてよくあるお約束
&bold(){[[平賀源内]]}
確かに(プレイヤー)君の言う通り、些細な事とは言え城内での窃盗は問題だな
&bold(){[[平賀源内]]}
食糧泥棒に構っていられない程に多忙を極める側面もあるが、分かった、対策を打とう
&bold(){(プレイヤー)}
相手はひまり様の結界を破る程の力を持ってますからね、相応の備えが必要なんです
&bold(){[[平賀源内]]}
案ずるな、こんな事もあろうかと盗人対策用の絡繰を用意しておいたのだよ
&bold(){(プレイヤー)}
絵に描いたように素敵なご都合展開ですね
&bold(){[[平賀源内]]}
私のような立場の者にとってはあこがれの台詞なのだよ、こんな事もあろうかと、とはな
&bold(){[[平賀源内]]}
まあそんな事はいい、これは寝ずの番をしてくれる装置でな、これを使い網を張るとしよう
&bold(){(プレイヤー)}
網にかかった犯人はどうなるんですか?
&bold(){[[平賀源内]]}
強力な電撃に撃たれ基本は即死だ、体が頑丈であったり運が良ければ廃人だな
&bold(){(プレイヤー)}
それはちょっと過激すぎるのでもう少し控えめにお願いできますか?
&bold(){[[平賀源内]]}
冗談だ、対象者を捕縛し大音量の警報を慣らす至って控えめな仕様だよ
&bold(){[[平賀源内]]}
安倍晴明君の協力により、陰陽道の方法論も練り込まれた傑作となる
&bold(){(プレイヤー)}
それならどんな犯人にも対応出来そうですね、さっそく使わせてもらいます
&bold(){[[平賀源内]]}
では設置の手配を進めておこう、後は寝ながら果報を待つしかないな
&bold(){(プレイヤー)}
場合によっては長期戦になりそうですからね、早めに動いてくれる事を祈ります
[[次へ>目覚めし筋肉]]
[[一覧に戻る>ログインストーリー]]
2021-09-06T14:42:42+09:00
1630906962
-
昔は無茶をしたものだ
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/894.html
*昔は無茶をしたものだ
&bold()[[前田利家]]
貴様強いな!強いであろう……いや、間違い無く強い!よし、手合わせだ!
&bold()[[氷葬刀 雪月花]]
何者だ?お前も確か(プレイヤー)の配下のはずだが、何故唐突に拙者と手合わせなど?
&bold()[[前田利家]]
知るか、強者が目の前に居てこの手に槍が握られている、ならばやるべき事は一つのみだ!
&bold()[[前田まつ]]
はっ!また利家お姉さまの血が沸き立ってる!?ごめなさい、利家お姉さま!
&bold()[[前田利家]]
うぐっ……
&bold()[[氷葬刀 雪月花]]
おい貴様、いま撃ったろう!何てことを……気でも違えたのか?
&bold()[[前田まつ]]
大丈夫、眠らせるための弾だから別に利家お姉さまは何ともないわ
&bold()[[前田まつ]]
それより、ごめんなさい、強者の雰囲気にあてられて利家お姉さまがおかしくなって……
&bold()[[氷葬刀 雪月花]]
確かに、以前見かけた時と比べていささか様子がおかしかったが……こちらが素か?
&bold()[[前田まつ]]
昔取った杵柄のもっとずっと酷いやつと言う事にしておいて
&bold()[[氷葬刀 雪月花]]
分かったような、分からぬような……まあいい、これ以上は追及せず捨て置くとしよう
[[次へ>質素な贅沢]]
[[一覧に戻る>ログインストーリー]]
2021-09-04T08:04:40+09:00
1630710280
-
贈るべきは心
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/893.html
*贈るべきは心
&bold(){ひまり}
感心、感心!そうか、(プレイヤー)めに恩返しをしたいとの事じゃな
&bold(){[[鮮華>https://www57.atwiki.jp/chaos-blade/pages/102.html]]}
そう……今の私が心穏やかに過ごせるのも(プレイヤー)のおかげ……だから、恩を返したい
&bold(){ひまり}
では何か贈り物でも考えておるのか?
&bold(){[[鮮華>https://www57.atwiki.jp/chaos-blade/pages/102.html]]}
違う……(プレイヤー)からは心を貰った、だから私も……心を贈りたい
&bold(){ひまり}
ふむ、(プレイヤー)めは物欲があまりないのでその筋で考えた方が良さそうじゃな
&bold(){ひまり}
となれば鮮華よ、おぬしは何か特技でもあるのか?
&bold(){[[鮮華>https://www57.atwiki.jp/chaos-blade/pages/102.html]]}
特技……凍らせる事なら得意、悲鳴をあげる暇すら与えない……
&bold(){ひまり}
いくら幅広き趣味をもつあやつでも、凍らされて喜ぶとは思えんのう
&bold(){ひまり}
他に何か無いのか?例えばそうじゃな……実は料理の腕前が優れておったりせんのか
&bold(){[[鮮華>https://www57.atwiki.jp/chaos-blade/pages/102.html]]}
優れているとは思うわ……それに、趣味と言えない事も無いかも……
&bold(){ひまり}
それじゃそれ!手料理で(プレイヤー)に振舞ってやれば喜ぶと思うぞ
&bold(){[[鮮華>https://www57.atwiki.jp/chaos-blade/pages/102.html]]}
食事の用意をするだけでしょう?狐妖はそんな事で……喜ぶの?
&bold(){ひまり}
うむ、狐妖にとっての食事とは単なる栄養補給ではなく様々な意味を持つのじゃ
&bold(){ひまり}
おぬしが真心こめて作った料理を差し出せば、(プレイヤー)はきっと喜んでくれるぞ
&bold(){[[鮮華>https://www57.atwiki.jp/chaos-blade/pages/102.html]]}
分かった……じゃあ、そうするわ……ありがとう、参考になった……
&bold(){ひまり}
ちなみに好き嫌いや好物と言った物が存在しない奴じゃからな、何を食わせても良かろう
[[次へ>昔は無茶をしたものだ]]
[[一覧に戻る>ログインストーリー]]
2021-09-03T22:54:49+09:00
1630677289