リプレイ:キモオタだって精一杯生きていけるんだ・1

とあるオタクの手記 下書き…?


――街がおかしくなってから数日が過ぎた。
あの後家に軍隊がやってきて僕を半ば強制的に古びたトラックに押し込み、避難シェルターへと移送した。
僕はと言えばトラックの荷台の隅の方で肩身の狭い思いをしていた、何故かって?僕は所謂キモメン おまけに体臭も自覚出来る程キツい。
そんな人間を密閉空間に押し込めばあっという間に孤立する、僅かな殺意に包まれながら、僕は寝たフリをする そうでも無ければ不安に押しつぶされそうだからだ。

…………そうしてどれくらい時間が経ったのだろうか。
スピードを急激に落とすもんだから車体が大きく揺れて、僕は壁に頭をぶつけた、痛い。
次々と人が降りて行く所を見る限りは目的地に到着したようだ。
シェルター内では多くの人でごった返して熱気に包まれている、僕の体臭も多少誤魔化されるようで少し安心した。
僕達を降ろした軍隊の人は数日分の食料を置いて、次の救援に向かうと言った。
数日後に我々も戻るとは言っていたものの、件のトラックを見る事は二度と無かった。


全てが変わってしまった日から5日は経過した。
食料を求めてシェルターから出て行った人、恐怖に耐えかねて気が狂ってしまった人、様々な理由を抱えてシェルターから出て行った、勿論誰一人として帰ってこない。
僕も最後の食料であるチーズバーガーとクラムチャウダーの缶詰を食べてから薄暗いシェルターの天井を見つめていた。
僕はこんな所で死んでしまうのか? 好きなアニメもまだ途中までしか見ていないのに? 嫌だ 嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

嫌 だ !

こんな所で死ぬなんてまっぴらごめんだ! どうせ死ぬのならば精一杯あがいてから死んでやる!
自分の頬をピシャリと叩いて気合を入れる、いつもはアニメグッズを詰めるメッセンジャーバッグを手に持ち、僕はシェルターの扉を開いたのだ。

――START

「おい、アンタ! アンタまで外に行くのか!?」

同じシェルター内で最後まで一緒だったWinter Gootblodさんが僕の服の裾を引っ張った。
僕よりも身体が小さく不器用な人だ、この世界では最も早く死んでしまうであろう人間としか思えない。
一応僕も一緒に外に行かないかと提案はしてみたが、彼は頑なにシェルターから離れようとはしない。
このまま穏やかに死ぬか、それとも僅かな望みを掴み損ねて死ぬかの2択、Winterさんは前者を選択しただけなのだ。
ロッカーの一つを壊して鉄パイプを手にとってから、外へと足を踏み出した。


さて、まずは何にしても食べ物と飲み物、できれば武器を確保しておきたいと思う。
正直こんな鉄パイプ1本じゃとてもじゃないが先行きが不安だ。
そこで僕は周辺地図をメモした紙を広げて最寄りの民家を目指して歩き始めた、こんな状況だ 生き残る為にはある程度の犯罪行為だって犯さなきゃいけないのだ。
窓ガラスを鉄パイプで叩き割って侵入する、当然ながら家主はいないようなので、ぼくは台所でサンドイッチを食べたりコーラを飲んだりして久しぶりにお腹を満たす事ができた。
さて、次の民家で何か使えそうな道具は無いかと思ってドアに手を掛けようとした時、部屋の隅で光る物を見つけた。
何かと思って拾い上げると不気味な程青く輝くライトだ、調べてみてもスイッチの類は無い、あったのはよーく見慣れたマーク……Atomic、原子力のマークだ。
このライトは原子力の力で発光しているようだ、ビックリして手放してから近くにあったガイガーカウンターで測定してみるも放射能反応は無し、一応安全な物のようだ。
これがあれば夜に何か作業できそうだが……いや、これ本当に大丈夫なのかな……?

隣の民家でライター等使えそうな物を頂戴してから玄関から外に出る。
次はなにか武器と大容量のバッグを手に入れたい、そこで目を付けたのがスポーツ用品店だ。
バットやバックパックが残っている事を期待して店を目指して歩いていき……そして、とうとう出会ってしまった。
僕の中では非常識、もしくは空想の産物、雑魚キャラ……あらゆる評価が渦巻くそれ 肌の色は土気色で不気味な唸り声を上げている そう、ゾンビだ。
何であんなのが街中に、しかも大量に居るんだ、そんなのゲームの世界だけの存在じゃなかったのか? ならば僕はそのゲームの主人公の男性なのだろうか。
残念ながら僕は特殊部隊出身でも、新米警察官でも何でも無い、ただの民間人だ。
おまけに初期装備で銃は愚かコンバットナイフすら持っていない、緊急スプレーなんて便利な治療薬も無い。
現実だ、この目の前は現実なのだ 改めて鉄パイプを握り締めてバッグ内から石を取り出した。
これをぶつけて注意を引き、安全な場所で戦う……これがセオリーだ セオリーだったハズなんだ。
結果は? 当然外して大きな音を出してしまった ワラワラと群がってくるゾンビ達に恐怖して、みっとも無く逃げ出した。
幸いにも足は早く無いが、こちらは早くも息切れし始める、いずれ追いつかれると思った矢先、吸う空気が妙に熱く感じた。
どうした? 息を整えるついでに辺りを見渡すと、地面から真っ赤な溶岩が湧き出ていた、ちょっと離れていても凄く暑い……が、妙案が思いついた。
振り返ると先ほどのゾンビ達がまだ追いかけてくる、僕の判断が正しい事を信じて溶岩から少し離れた所に陣取って……来た!そして判断は正しかった!
自分達の足が焼かれる事すら意にも介さず、しかしそれでもすぐに退避しようとはしない 知能は低いようだ やれる! 溶岩の熱で全身が焦げたゾンビ目掛けてパイプを振り下ろすと
うめき声を上げながら倒れて動かなくなった やったぞ! 僕のようなオタクだってゾンビを殺せるんだ! 死体をなんとか担ぎ上げて溶岩の中へ叩き落とす。
後はその繰り返しでこの小さな街は制圧出来るだろう、きっとそうだ



……前言撤回、無理だ。
先ほどのようにゾンビを溶岩までおびき寄せて弱った所を殴ればいい しかしそれはあくまで少数に限った話だ。
ワラワラとゾンビが出てくる、キリが無い そのうち警察官のゾンビや真っ黄色の服を来たゾンビまでもが押し寄せて来た!キリが無い!
仕方なくぼくは思いっきり北上して逃げ出した、いい案だと思ったが数の暴力には敵わない、1対多数は危険だと言う事を学ぶ事ができた。
そうだ、昔の中国や日本を舞台にしたゲームで、一人で500人斬り、1000人斬りなんて嘘っぱちだったんだ。
……ちょっとそういうのに憧れていただけあってショックだった、街の北端にある住宅をこじ開けて、そこで一晩眠り込んだ。

………
ようやく目が覚める、おや? 最後に眠っていた住宅じゃない。
また見知らぬシェルターだ、バックアップ取るの忘れた? いや、僕は何を言っているんだ。これは夢か? 頬を抓る、痛い。
それになんだか身体が重くなっている気がする、身体に染み込んだ経験だけが綺麗さっぱり抜かれてしまったような……。
考えても仕方ない、また新たに生き残らなければならない、慣れた動作で近場のロッカーを壊し、簡易バールを手にして外へ歩き出した。


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