リプレイ:平凡な男

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4月1日
私の人生は「平凡」と言う以外にない物だった。
普通の家庭に生まれ、普通の学校に通い、普通の会社に勤める。変わったことなんて無い。
平凡、平均、普通…これだけで私のすべてを説明できる。
運動も勉強もそれなりにこなす。特徴がないのが特徴、という奴だ。
これから先も穏やかに、ひっそりと生きていくものだと思っていた。

私が職場の地下倉庫で作業をしている時、突然地面が大きく揺れた。
しばらくして地下に来た同僚に、外で爆発が起きたと教えられた。
落ち着くまではここで待機するよう指示を受けたそうだ。

地上はひどい様子だった。人々は逃げ惑い、物資を奪い合い、動けなくなった者がそこら中に倒れている。
悲鳴、サイレン、アラームが鳴り響き、バケモノが人々を殺す。
…この時、私は奇妙な興奮を覚えていた。

夕方頃に軍の救助隊が来たので、職員全員で避難する事に。
軍と言っても、武装は拳銃のみで車両は古いトラック。何もかもが足りていないのだろう。
道路は逃げ出す人々や放置車両で埋まっていたが、なんとか暗くなる前にシェルターに到着できた。
すぐ寝ることにする。今日はもう日記を書く気にならない。

4月2日
目覚めたのはいつも通りの時間。習慣というのは簡単に抜けないものだ。

このシェルターには食料の備蓄がまったく無かった。缶詰の1個も無い。
食料を探しに行く物、空腹に耐える者、シェルターを出て新天地を求める者…避難民は少しづつ減っていった。
私は極力動かないようにしてなんとか凌いでいる。

4月3日
また1人亡くなった。放置する訳にはいかないので、私が埋葬することに。
遺体を運んでいる途中、ある考えが頭をよぎった。

”これも肉だ”

シェルターから十分離れたことを確認し、ナイフで死体の腿付近を切り取ってそのまま口に運ぶ。
正直、味はいいとは言えない。妙に固いし臭いもキツイ。
それでも私は食べ続けた。久々の食事だというだけで十分なスパイスになる。

満腹になった所で改めて埋葬した。穴は少し深めにしておいた。
人を喰ったことを知られてはまずい。

4月4日
このシェルターに残ったのは私一人となった。
他は死ぬか外に出て行ってそれきりだ。
ここにいても仕方がない。危険ではあるが、私もここを出て行くことにする。

街に向かう途中生存者に会った。物資を見つけ、他の生存者に売りさばいているという。
何か交換しようかと思ったが、まるで相手にされなかった。
こんな状況でも金がものを言うのか…。
持ってる物を「拝借」しようにも向こうはかなりの重装備。
下手に手を出しても返り討ちにされるだけと考え、そのまま彼と別れた。

街の近くでゾンビとの戦いを余儀なくされる。
シェルターで作った棍棒で戦うが、やはり厳しい。
殴られたり引っかかれたりされたせいで体のあちこちが痛い。
おまけにズボンが完全にダメになってしまった。新しい服を探さねば。

『生存者』を発見。既に息はなかった。
近くにヘラジカがいるので、こいつに襲われたのかもしれない。
彼の二の舞いにならないよう気をつけてズボンを拝借する。
少しサイズは合わないが、無いよりマシだ。

なんとか家に辿り着いたが、すでに体が悲鳴を上げている。
痛みで素早く動けないのですぐにゾンビに追いつかれてしまう。
何度殴っても奴らは倒れず、戦うほどにこちらが劣勢になっていく。
やはり私に運動は向かない。武器と食料の調達が最優先目標だ。

腹が空いたので先ほど見つけた死体を食べた。
量は物足りないが、なかなか美味い。何か調理法を考えておかねば。

生存者と遭遇。しかし、彼はこちらに銃を突きつけ武器を捨てるよう叫んでいた。
指示に従って待っている間に次々とリュックの中身が奪われていく。
数こそ少ないが貴重な物資、このままでは野垂れ死にしかねない。
私は一瞬の隙をついて武器を拾い、物資を詰め込んでいた彼の後頭部目掛け思い切り振り下ろした。

それからはとても滑稽だった。突然殴られた彼はパニックに陥り、血を流しながら逃げていく。
私はそれを追いかけていき、時々石を投げつけてやる。彼は抵抗せずひたすら逃げるのみだ。
しばらく走っているとゾンビの群れに遭遇。一旦立ち止まって様子を伺う。
群れは彼に向かっていき、完全に取り囲んでしまった。
1分も経たない内に彼は動かなくなった。群れを撒いてから奪われた物資を取り返し、死体は燃やしておいた。

どうも私は、これぐらい刺激のある生活の方が合っているようだ。
今までこんなに気分が高揚したことはない。人を壊すという事がこんなにも楽しい物だとは思わなかった。
今日は久しぶりによく眠れそうだ。