テレビ

■リアル時制
女(大坂):どうしたの?悩みって。
男(えの):いやー、最近さ、もう入社して5年になるし、今年から企画部に配属されたのよ。
女:うんうん、楽しそうじゃん。羨ましいよ~
男:んー、や、実際ね、企画部っていうと、こう、ちょっとステップアップしたっていうか?
女:うんうん
男:ちょっと自慢?じゃないけど、ま、誇りある仕事だと思うよ。
女:うんうん、いいじゃん。
男:たださ、悩みというのがさ、
女:うん
男:や、俺、企画とかの才能が、無いのかな~…って。
女:ええ?なんで?
男:オリジナリティがさ、そう、「お前はオリジナリティが無い」って言われるのよ。
女:オリジナリティ…
男:うん。そうゆうのよくあるよねーとか、いいんだけどどっかで聞いたことあるよねーとか、
女:はいはいはい
男:言われんのよ。
女:うーん。
男:でも想像力なんてさ、それぞれの人の範囲ってある程度限られてるじゃない。
女:うん。あ、ねえ、テレビつけていい?
男:ん?ああ、どうぞ。
SE:ピッ(女、テレビをつける)
男:それでさ、明日新しいドラマのプロットっていうか、構成を出さなきゃいけないんだけど、手がつかなくってさー。どう書いたらいいかなって。発想の仕方がよく分かんなくなっちゃったんだよね。
女:ふーん。なに、皆で出すの?それ。
男:そうそう、社内コンペよ。
女:ああ、それは勝ちたいねえ。
男:でしょ?なんかいい案ないかな?
女:ええー、あたしそんなセンスないよ~。
 BGM:ニュース
キャスター(荻原):次のニュースです。戦隊物シリーズで大人気の俳優、○○さんが、3週間程前から自宅を出たきり、行方不明になっていることが分かりました。警察は○○さんが何らかの事件に巻き込まれたものと見て、(小声)操作を続けています。
女:(前に重ねて)なんだ、ニュースかあ~、つまんないなー
男:録画見れば?今日色んなの予約しといたから、色々あると思うよ。
女:まじで?オッケー
 SE:ピッ(再生ボタンを押す)

■テレビ内:刑事物ドラマ(BGM:刑事物)
新人刑事(雨宮):先輩!
先輩刑事(荻原):どうだった?
新人刑事:(軽く溜息)被害者の仕事関係、交友関係を洗って、全員に当たってみましたが、最近会ったとか連絡を取ったりした人物は見当たりませんでした。
先輩刑事:そうか…
新人刑事:ただ、もう一度自宅を調べたんですが、鍵付きの手帳を見つけまして、そこに、頻繁に「ホワイトエンジェル」って書いてありました。
先輩刑事:ホワイトエンジェル?なんだそれは?
新人刑事:さあ?
先輩刑事:よし、調べてみよう。
新人刑事:はい!

男:やっぱ刑事物が無難なのかなあ。
女:ちょっと特徴的な刑事にすればいいんじゃない?
男:ああ…。どんな?
女:うーん…
 SE:ピッ(番組を変える)

■テレビ内:みのもんた風悩み相談
司会者(雨宮):はい、今日はね、新婚さんですって。若妻。ねえ、どんなお悩みなんでしょう、電話つながってるかな?もしもし?
若妻(荻原):あ、もしもし。
司会者:こんにちは、今日はどうしたの?
若妻:主人のことなんですけど、
司会者:あ、夫婦関係のお悩み。よくあるんですよね、ええ。
若妻:いや、夫婦円満だし、仲のいい幸せな家庭だと思ってるんですけど、気になってることがあって…
司会者:あら、どうしました?
若妻:結婚してから新築の一軒家に住んでるんですけど、
司会者:若いのにすごいね。
若妻:彼はどうしても屋根裏に一人で寝たいって言って、屋根裏部屋が彼の寝室になってるんですけど、あの…、夜中とかに、
司会者:んん。
若妻:変身の呪文?…ブラックなんとかナイト!黒の騎士!とか、モノマネなのかしら、叫んでるのが聞こえて、
司会者:あははは、それきっとご主人ねえ、まだ心が少年なのよ。
若妻:でも、部屋に鍵掛けてそれをするんです。
司会者:そりゃちょっと奥さんに見つかったら恥ずかしいからじゃない?
若妻:そのうち急に静かになって、呼んでも返事が無いんですよ。まるで、部屋に居ないみたいな感じ…
司会者:いや、変身ポーズとかね、結構な運動になるから、疲れて爆睡しちゃってるんじゃない?
若妻:はあ…

女:あっ!思いついた!
男:え?
女:いい設定。メモして、メモして!
男:おお。
女:主人公が、昼間は刑事なんだけど、
男:うん。
女:夜は、ブラック・ワン・ナイトっていう、その名の通り、一晩で事件を解決してしまうヒーローに変身する!
男:お~、独創的!
 SE:ピッ(番組を変える)

■テレビ内:戦隊物(BGM:レンジャーっぽいやつ)
女:あ、これさっきの行方不明の俳優じゃん。
男:ほんとだ。

ヒーロー(雨宮):ホワイトエンジェル!大丈夫か?…く、くっそー、お前の仕業だな?モンスターワイフ!
モンスター(荻原):ヒャッヒャッヒャッ。そうだ、私は世の中の女の嫉妬心から作られたモンスターさ。お前のお姫様はいただいていくよ!
ヒーロー:待て!くそ、俺は、夜にしか変身ができないんだ。くっ…、ホワイトエンジェル!必ず助けに行くからな!
次回、△△(番組名)、「激突!□□の巻!」

女:(遮るように)あ!さっきの刑事達が探してた「ホワイトエンジェル」って、お姫様のこと?
男:いや、番組が違うだろ。たまたま設定が被っているけれども、全て別番組だよ!
女:あ、そうか。
 SE:ピッ(番組を変える)

■テレビ内:グルメリポート
リポーター(雨宮):今日ご紹介するのは、××駅前に新しくオープンしたパン屋さん、リトルエンジェルです。パンが美味しいことは勿論なんですが、人気の秘密はすっごく美人なオーナーさんがいるとか!早速、お邪魔してみましょう。こんにちは!
オーナー(荻原):こんにちは。
リポーター:お、オーナーさんですね?こちらの一番のおすすめの商品はどれですか?
オーナー:そうですね、うちの看板商品は「ホワイトエンジェル」、ですかね。真っ白で、ほら、天使の形をしているんです。
リポーター:ほんとだ、かっわいいですね!

女:さっきの続き考えた!
男:なに?
女:そのー、夜、ヒーローになっている間の、相棒。これがヒロインなんだけど、
男:お、出ました、ヒロイン。
女:パンの化身にしよう。
男:え??
女:あの、ホワイトエンジェルっていうパンが、ボンッて天使になんのよ。
男:ああ、ああ。ちょっとファンタジーっぽくアレンジ効かせてるんだ!
女:あとね、もうちょっとね、ドロドロした感じを入れたいのよね。昼ドラっぽい感じ?
 SE:ピッ(番組を変える)

■テレビ内:昼ドラ
彼氏(雨宮):おい、落ち着け、下ろせ、その花瓶を下に置けって!
彼女(荻原):あんた、裏切ったわね。浮気してるでしょ!
彼氏:なんのことだよ!
彼女:あたし知ってるんだから!あんたが毎晩毎晩、駅前のパン屋の女のところに通ってること!
彼氏:はあ?誤解だよ!危ないから、花瓶振り回すな!
彼女:うるさい!あんたなんか…おりゃあ!
彼氏:うわああああ
 SE:ドカッ(打撃音)

■リアル時制(漫才調?)
男:…お前、随分奇跡的なタイミングで番組切り替えたよね。
女:いや、こういうドラマどう?いいとこどりしていこう。
男:どゆこと?
女:まとめます!
男:はい。
女:新婚したての昼間は普通の刑事が、嫁には秘密にで、夜はヒーローに変身して、難しい事件を解決していました。
男:はいはい。
女:彼は、毎晩行きつけのパン屋さんから天使の形をしたパンをもらうの。そうすると、そのパンが本当に天使になって協力しながら事件を解決していたんだけど、
男:おお。
女:奥さんはその刑事さんがパン屋の美人オーナーと浮気をしていると勘違いをして、ある日、彼を花瓶で殴打!
男:あらら。
女:彼は、自分がヒーローであるという記憶をなくしてしまうの。それで、昼間の刑事である自分が、行方不明になっている夜のヒーローである自分を、探していくっていう物語。…どう?
男:ああ…。なんか今見たやつを繋いだだけだけど、ちょっとこう、不思議な新しい話にはなってる!
女:そう、それで、最後に、ナレーション!
男:ナレーションもあんの??
ナレーター(雨宮):もしかしたら、次の新しい物語が出来るかもしれない。あなたの想像力を膨らます、LPチャンネル。

■オチ:幕外
男:はい、これが、今季からケーブルテレビに新規参入するLPチャンネルのCM第一弾!の、僕のコンペ案です。豊富なドラマや情報番組を特徴とするLPチャンネルを、8分という、ドラマ仕立てのCMにしてみました。話題になること間違いなしです!どうぞ、宜しくお願いします。
クライアント1(大坂):ん~、いいわね、オリジナリティあるわ。
クライアント2(雨宮):うん、これ、珍しいよね。いいんじゃない?これでいこっか。
男:はは(微笑)
ディレクター(荻原):……はい、カット!お疲れ様でした!皆さん、いい演技でしたよ!やー、これで自分のコンペ、勝たせてもらいます。(それぞれに)ありがとう、ありがとう、お疲れ様でした!
全員口々に:(エキストラっぽく)お疲れ様でした~


完(初稿2013/6/23)


  • 書き直し中。実は同形式で新作を作りましたが、詰まらなかったのでボツにしました。
  • 書き直し要項:オチの視点をぐっと引かせる、落ち切らせる。男女の関係に進展なり展開をつける、など。
(2013/7/5 by Ogi)
最終更新:2013年07月05日 01:51