「最後の審判」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

最後の審判」(2013/07/05 (金) 01:41:25) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

最後の審判 閻魔:元無関心ギャル:制服:荻原 弁護士:元いじめられっ子:スーツ:村井 正しい女(主人公):スーツ:大坂 スーパーアルバイター:元引きこもり:作務衣:えの ■序:あの世の裁判所 閻魔:はい、次―。 女:(コンコン!)失礼します! 閻魔:どうぞー。何の御用かしら。ウチ今から美容院行きたいんだよねー。 弁護士:彼女はですね、判決に不服があって来られたそうです。 閻魔:またかよー、めんどくせーなー。雨宮、閻魔帳貸して。 弁護士:はい、こちらです。 閻魔:どれどれ。あー、やっちゃってんね。 弁護士:ええ、やってしまってますね。 閻魔:ダメじゃね、これ? 弁護士:ええ、ダメですよね。 閻魔:正し過ぎる。 弁護士:ええ、正しい。 閻魔:幸せすぎる。 弁護士:ええ、幸福だ。 閻魔:地獄行きです。 弁護士:異議ナシです。 女:ちょっと!弁護士!! 弁護士:はい? 女:ちゃんと弁護してよ!私は、一度も嘘を吐いたことが無いし、勉強も出来たし、会社でも真面目に働いて、社会貢献も一杯して、立派に子供も育てて、仲のいい家庭を作ったのよ。それなのに、なんで地獄行きなわけ?不服申し立てるわ。再審を要求するわ。 弁護士:まあまあまあ、落ち着いて下さい。 閻魔:は~~~~、最近多いんだよねー、こういうタイプ。ね、雨宮。 弁護士:はい。 女:ていうか、誰よこの子?! 弁護士:ああ、閻魔様ですよ。 女:はあ???なんで私がこんな小娘に裁かれなくちゃいけないのよ!てか、嘘でしょ?普通閻魔様って言ったら、でっっかくて、おっさんで、目がぎょろぎょろしてて、赤ら顔で、冠とか着物みたいの着てて、(えのさんを指して)こういう奴じゃん!こいつが閻魔役すべきじゃん! 閻魔:ほら来た!来たよ来たよ来たよ、これ。 弁護士:あちゃーー。 閻魔:正っしいイメージ。完璧な解答。想像物の内容すら正しいっていうね。 弁護士:弁護の仕様も無いですね。 女:や、だから正しいんでしょ? 弁護士:正し過ぎる罪です。 女:は?訳分かんない。大体ねぇ、あんた、雨宮さんですっけ?すごく親身で腕利きだって聞いたから、弁護を頼んだのよ?詐欺だわよ!あんた達こそ地獄行きよ! 閻魔:…(シリアスに)雨宮、(無気力に戻って)ジュース頂戴~。 弁護士:はい、閻魔様。 女:おい!お前ら!! 閻魔:分かったよ。ええと、正義(まさよし)良子(りょうこ)。ねえ、雨宮すごいよ。苗字が、正義って書いてまさよしだって。りょうこも良い子の良子。 弁護士:名は体を表すと言いますからね。 女:そうよ、その名に恥じないように生きて来たわ。 閻魔:享年94歳。すっげ、大往生なんすけど。 弁護士:葬儀の参列者は300人。人望も厚かったようですね。 女:当り前よ、お友達も多かったんだから。 閻魔:東京のそこそこ裕福な家庭に生まれ、小学校から大学までお嬢様学校に通う。 弁護士:ほう。 閻魔:中高時代は、学級委員や生徒会長などを歴任。スポーツも万能で文武両道タイプ。…なんか漫画の主人公にいるよね、こーゆーの、ねえ、雨宮。 弁護士:はい、こうゆう主人公好きじゃないっすね。僕はもっとこう、ちょっと影を背負っているっていうか、苦労してるタイプの女の子の方が好きですね。応援したくなる。 女:あんたらのタイプなんて聞いてないし。 閻魔:大学時代はボランティア等の社会活動に熱心に参加。卒業後は一流企業に就職し、会社の業績向上に貢献した後、独立してアロマテラピーやサプリメントなどのヒーリングサロンを企業。うわー、女社長だ。 弁護士:働く女性に癒しの場所を提供し、相当流行ったようですね。 閻魔:でー、IT企業に勤める男と結婚。働きながら二人の子供育て上げ、どちらも有名国立大学に進学し、医者や官僚として活躍。やばい、完璧なんですけど。 弁護士:PTA役員は勿論、ご近所付き合いも積極的にして、全国仲良し町内会NO.1に選ばれたことも。 女:そうよ、テレビにも出たことあるわ。 閻魔:おばさんさー、 女:おばさん言うな。 閻魔:キモくないですか?幸せすぎて。 女:どういうこと?あんた達の感覚がおかしいのよ。ひがんでるんでしょ? 閻魔:ぷぷっ、嫌だし、こんな道徳の教科書みたいな人生。お断りだしー。あははは。 弁護士:(同時に)あはははは… 女:おいっ! 閻魔:ははは。(真面目風に)疑問に感じたこととか無いんですか?完璧で、理想的で、幸せ過ぎる人生を送れていることに。 女:はあ?無いわよ。確かに、家庭環境とかは恵まれていた方かもしれないわ。でもね、それ以外は努力したのよ!勉強して知識を蓄えて、人脈を築いて、どんどん色んな事をして、それで幸せを掴んできたわ。 閻魔:違うよ、おばさんはー、 女:また、おばさんて。 閻魔:社会の深い所に触れたことがないだけです。 女:は? 弁護士:人間の生々しさを見たことがないだけです。 女:え?なに? 閻魔:他人の傷みを体験したことがないだけです。 弁護士:世界に傷みがあることに気付かなかっただけです。 閻魔:たまたま幸運にも、そういうことに行き合わずに生きて来れた、ただそれだけです。 女:なによ…どうゆう… 男:ちゃーーーす!!只今、戻りましたーー!! 閻魔:おう、ハゲ、御苦労! 男:ちす!!こんにちは! 女:あ、こ、こんにちは。 閻魔:調子はどう? 男:はい、めっちゃ働いてますよ!!次ももうシフト入ってます! 閻魔:ようし、じゃあさ、このおばさんも一緒に連れてってよ。 男:お、新入りですか?いいっすねえ!ちょっとツンとしてて、おばさん、俺、めっちゃタイプです。 女:嫌よこんなハゲ!そしておばさんて言うな! 弁護士:まあまあ。このままだとどうせ地獄行きですし、一緒に服役してきたら如何ですか? 女:服役? 弁護士:と言っても、お仕事してくるだけです。それで地獄行きが免除になるかもしれませんよ。 女:本当に? 弁護士:ええ。因みに、今あなたは28歳の姿です。色んな体験、して来て下さい。 男:おばさん、早く!遅刻しちゃうよ! 女:ええ? 男:早く早く! 女:ああ… 弁護士:行ってらっしゃいませ。 ■破:バイトのシークエンス 女:どこ行くのよ? 男:ラブホのお掃除バイトっす!時給いいんすよ。 女:ひええええ、嫌よっ、嫌だ! 男:我儘だなあ。ほら、シーツ取り替えに行きますよ。 女:こんな所に来る人とか信じられない! 男:ちょっとー、それ偏見だよ~?お、あれは援助交際ですな、こんな昼間っからねえ。 女:あの子、泣いてるじゃない。 男:騙されてヤリ逃げされたんじゃないんすか?おばさん、お小遣いあげますんで、彼女、ファミレスにでも連れてって、話聞いてあげて下さいよ。 女:えええ?何、私が、援助交際辞めさせるの? 男:早く早く。俺、シーツ取り替えとくんで。 女:ああ…はい。 (間) 男:あ!お帰んなさい!どうだった? 女:……罵倒された…おばさんなんかに何が分かるかって。 男:そう。 女:でも、5時間もドリンクバーで粘った結果、明日は学校には、行ってみるって言ってくれたから…、いい、かな。 男:(微笑)ふうん。 女:ていうかさ、私、そんなにおばさんかな? 男:俺よりはおばさんですよ、俺19なんで。 女:え〝ーーーっっっ!!! 男:はい、次は、ホームレスピーポーの散髪のバイトです。 女:げーーー、そんな人種近寄ったことないわ。 男:おばさんてさあ、全然いい人じゃないよね。なんで今まで幸せにのうのうと生きて来られたんだろう?不公平だなあ。 女:うるさい!でもやるとなったらやるわよ!頑張り屋さんだから! 男:じゃあおばさんは、あそこの三好さんを担当して。 女:分かったわ。じゃあ後で。 (間) 男:あ!お帰んなさい!どうだった? 女:…罵倒された…面接先の人に。 男:面接? 女:髪切るだけじゃ勿体ないので、お洋服もコーディネートしてみたら、結構いい感じのオヤジでさあ。履歴書を書いて面接に付いて行ったの。 男:へええ、やるじゃん、流石、元敏腕女社長。 女:けど、こんな職歴じゃだめだって、梨のつぶてだった… 男:そう。 女:でも、明日も違う所にチャレンジしてみようって、約束したから、まいいかな。 男:(微笑)ふうん。じゃあ、次はね、内戦してる国で粉ミルクを配るバイト。 女:ええ?外国にも行くの? 男:そうよ~~、はい、お帰りなさい! 女:早っ!早いだろ!間を取れよ! 男:まあまあ時間の都合でね、大人の事情でね。どうだった? 女:……腕の中で、赤ちゃんが亡くなりました… 男:…そう。 女:…(泣く) 男:…いいよ、それ以上言わなくて。 女:…ありがと。 女:…ところで、あなたは、何でこんないっぱいバイトばっかりしてるの? 男:俺、引きこもりだったの。理由は省略するが。 女:ふうん。 男:まあ、2回くらいバイトしたことあったけどー、結局40年間くらいずっと家に籠りっきり。で、あの閻魔様に社会と関われ馬鹿野郎と言われ、今、色んな仕事をしまくってるって訳ですよ!意外と楽しいもんですね、人と関わるってね。 女:そりゃそうよ。でも、こんな心が痛くなる仕事、したことなかったなー。 男:でしょー。じゃあ、最後、行こうか。 ■急:収束 閻魔:雨宮?何見てんの? 弁護士:下界の様子ですよ。ほらあそこに、飛降り自殺しようとしてる子がいます。 閻魔:なに?いじめかなんか? 弁護士:どうですかねえ。 閻魔:助けたいの? 弁護士:ふふ、いえ、私達に現世の運命をいじる権利はありませんから。ただ… 閻魔:ただ? 弁護士:少し自分に重ねただけです。 閻魔:そうだね。あなたと出会ったのも、学校の屋上だった。ねえ、雨宮センセ? 弁護士:小さい頃からずっといじめられっ子でした。でも頑張って、夢だった教師になった。そして、少なくとも自分の目の届く範囲では、いじめっ子もいじめられっ子も両方とも、正しい方向に教え導こうと思ったんです。 閻魔:でも現実は違ってた。 弁護士:ええ、世間ではモンスターペアレントなどという言葉もありましたが、彼女達は決してそういう悪気は無かったと思います。 閻魔:正義良子、あなたの教え子の父兄だったわね? 弁護士:そう。彼女は正しかったですよ。全て、自分の子供のため。それが子供達なりの友情の築き方とか、子供の自由を侵害しているとは気付かなかった。 閻魔:あなたに多大なストレスを与えていたこともね。 弁護士:まあ、それは、僕が弱かっただけです。僕はただ、自分の指導力不足を責められて、ああやっぱり、大人になっても非難され続けるキャラなんだなあって。 閻魔:それで飛び降りようとしたんだ。 弁護士:そして君に助けられた。 閻魔:まあ助けらんなかったけどね。ネクタイしか掴めなかったから、首吊り状態になって植物人間に。ごめんね~。てへぺろっ。 弁護士:いいえ。こうやって君の世界で生きてるから。でも出来れば、ちゃんと生きてるうちに、こうゆう仕事したかったな。叱咤激励するっていうかね。 閻魔:そろそろいいかもよ。 弁護士:ん? 閻魔:雨宮さんの服役期間は今日で終わりです。 弁護士:えっ? 閻魔:目覚めたら、34歳のままのあなたに戻ります。折角身体が残ってるんだからさ、頑張んなよ、センセ! 弁護士:え、ちょ、君は? 閻魔:んー?あたしはまだまだ服役期間残ってんだー。ほら、ずっと無気力無関心無感動の人生やってたからさ。こうやって人の人生にケチつけて、首突っ込んで、喝ッ!てやんのよ。 弁護士:そっか。 閻魔:んふふ。じゃね、センセ。いつか先生の授業受けたいなー。ばいばーい。 男:(ヒソヒソ)しーっ!おばさん、足音うるさいよ。 女:(ヒソヒソ)しょうがないじゃない。 男:おばさんなのにヒールなんて履いてっからだよ。 女:うるさいハゲ。で、なんなのよ、ここ、病院? 男:そ。ホスピス医療の病院でね。要するに、皆末期患者だったり、意識が戻らないまま寝たきりだったり。それでも、出来るだけ幸せに死を迎えようって所だよ。あのじーさんはね、奥さんも子供もいるんだけど、何があったのか、一度も誰もお見舞いに来ないのよ。 女:かわいそう… 男:そ、話し相手してあげて。 女:うん。吉村さん、こんにちは。 閻魔:人の幸福の量は一定だと思うんです。幸せな時間の後には辛いことがあって、楽な時期の後には大変な事件があって。世界の幸福の量も一定だと思うんです。あたしがフルーツの山盛りを頬張っている時、地球の裏側で子供が飢えて死んでいる。あたしが遊園地で彼氏とジェットコースターに乗ってる時、倒産した工場長が首を吊ろうとしている。それは確かに直接あたしには関係ないし、何も出来ません。でも、そういう傷みがあることに、敏感にはなりたい。…どうですか、あなたは?あなたが死んだ頃、あたしがまだ閻魔様だったら、皆さんのお越しをお待ちしています。 男:おばさん、最後にあの人! 女:誰?…え、これって、あの弁護士さんじゃない! 男:自殺未遂で長い間植物状態なんだ。 女:そうだったの…。雨宮さん、雨宮さん! (SE:心電図音で変化) 女:あ!雨宮さん!目ぇ覚めたのね!私のこと、分かる? 元弁護士:正、義、さん。 女:ああ…良かったあ… 元弁護士:生き返ったんですね、僕、あの子を置いて。正義さん、僕の弁護士の仕事、引き継いで頂けますか? 女:私が? 元弁護士:はい。あなたなら、きっといい弁護できると思いますよ。 女:…はい! 完(初稿2013/7/5)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: