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スマイリーキクチ中傷被害事件(スマイリーキクチちゅうしょうひがいじけん)とは、お笑いタレントのスマイリーキクチが、女子高生コンクリート詰め殺人事件に関与した等とする、いわれなき誹謗中傷被害を長期間にわたって受けていた事件である。
近年目立つようになった、インターネット上での誹謗中傷被害で加害者が一斉摘発された日本で初めての事件であると同時に、被害者がタレントであったことなどから全国紙やテレビニュースでも大きく扱われ、ネット上における中傷被害の深刻さが一般に広く認識されるきっかけとなった。


事件の始まり
お笑いタレントのスマイリーキクチは1999年春から、彼が女子高生コンクリート詰め殺人事件(以下、コンクリ事件)に関与した犯人であると信じている者たちからネット上の匿名掲示板などで中傷されるようになった。1989年に発覚したコンクリ事件は犯行形態から世間を震撼させた凶悪事件でありながら、犯人たちが未成年であったために少年法の規定により犯人の実名が匿名報道となって世間に広く知られることはなかったため、ネット上には様々な手法で調べた犯人のプロフィール(実名、職業、友人)を載せて世間に広めるなどして、犯人を糾弾をする者たちが存在した[3]。しかし、コンクリ事件の犯人に対する糾弾が繰り返されるうちに、いつの間にかネット上では「出身地が犯行現場である足立区」「犯人グループと同世代」「10代の時にグレていた」芸能人であるキクチがコンクリ事件の犯人として扱われるようになっていた(キクチは「事件現場の地域は自分の生まれ育った地域からかなり離れており、成人式の時に1度行ったきりで土地勘が全くない。1991年1月1日付けで東京都足立区民で成人を迎えた男子は6334人で、足立区内の同世代なんてごまんといる」と語っている。なお読売新聞などの一部報道で所属先事務所がキクチを「足立区出身の元不良」なる謳い文句で売り出していたのが中傷のきっかけであるとされたが[1]、バラエティ番組への出演で元ヤンキーだったことが紹介される機会が2度あった際に「中学時代のヤンキー姿の写真」が出たことがあるものの、所属事務所が元不良で売り出したことは否定している。
さらに「キクチはコンクリ事件のことをお笑いのネタにした」という事実無根の書き込みがあり、それを信じた者たちが匿名でネットに「キクチはコンクリ事件に関与したにもかかわらず、反省もせずに芸能人として堂々とテレビに出続けている」「それだけでなく、キクチはコンクリ事件のことをお笑いのネタにした」としてキクチを中傷していた。ネットでの中傷は匿名掲示板の2ちゃんねる、キクチの所属事務所の電子掲示板に及んだ。




キクチは中傷犯たちを「キクチを本気で殺人犯、強姦の共犯者と思い込んでいる者」「どうにかして殺人犯、強姦犯の共犯者に仕立て上げたい者」「犯行に異常な興味を抱く者」と考えていたが、一連の中傷被害において姿を見せない中傷集団にストレスを感じていた。しかし、警察が動いたことで状況は大きく動いた。
警察が最初に身元をつきとめた中傷犯は、最初は「二度としません」と反省したが、その3時間後にはまたネットで中傷を書き込むなどした[40]。当初、警察はネットの中傷は注意をすれば収まると考えていたが、その後ネット中傷依存が深刻ととらえ「悪質性の高い書き込みを厳選して、該当する者は一斉摘発する」方針に変えた。

一斉検挙
2008年9月から2009年1月までにキクチに対する中傷犯19人が検挙された。中傷犯たちは関東だけでなく宮城県や滋賀県や大阪府にもおり、北は北海道から南は大分県まで全国に幅広く存在し、警視庁の刑事が実際に出向いて摘発した。年齢は半数近くが30代後半だったが上は47歳[42]から下は17歳[44]までいた。男性だけでなく女性も含まれており、女性の中には妊娠している者もいた。精神の病にかかっている者が4分の1近くいたが、それ以外には仕事や家庭を持つ社会人がおり、大手企業のサラリーマン・会社セキュリティ部門の責任者・会社の通信機を利用して中傷コメントを書き込んだ者もいた。取り調べをした刑事は中傷犯たちについて「どこにでもいる、おとなしそうな感じだった」、キクチは警察から見せられた中傷犯たちの顔写真について「怪しい目つきの2人を除き、どこにでもいる普通の人」という印象を持った[46]。中傷犯たちは実際に起きた殺人事件とは何の関係もなく、互いの中傷犯同士や被害者のキクチとも実生活で一切面識がなかった。
中傷犯たちは警察に問い詰められると最初は「やっていない」とシラを切った[47]。警察から契約しているプロバイダ名やブログに投稿した時刻、コメント内容などの証拠を突きつけられると自分がやったと認めたが、友人や同僚・知人のせいにして辻褄が合わなくなった挙句、ようやく認める者もいた。
犯人の動機など
コンクリ事件キクチ犯人説を信じていないが面白半分でやった、という1人を除き、中傷犯たちはネット上で流布されていたキクチ犯人説を信じていた(前述の北芝の本を根拠としていたのは8人)。警察は彼らに対し「キクチ氏とコンクリ事件は無関係で、ネット上のキクチ犯人説は事実無根」と知らせた上で、北芝の所属事務所と本を出版した河出書房新社からの「キクチ氏とコンクリ事件は無関係」とする内容証明を見せた[48]。すると、中傷犯たちは「ネットに騙された」「本に騙された」と責任をなすりつけ、「仕事、人間関係、離婚など私生活で辛いことがありムシャクシャしていた」「キクチはただ中傷されただけだが、私生活で辛かった自分のほうが辛い」「他の人は何度もやっているのに、なぜ一度しかやっていない自分が捕まるのか」と被害者意識をあらわにした[49][47]。「言論の自由」を主張した中傷犯は刑事から「表現の自由なら自分の名前が書かれてもよいのか」と問われると「キクチは芸能人だから書かれてもよいが、自分は一般人だから嫌だ」と無責任な発言をした。
中傷犯への取り調べの様子を刑事から聞かされたキクチは、彼らについて「『情報の仕分け』『考える力』『情報発信者を疑う能力』の3つが欠如している」「他人の言葉に責任を押し付ける」「自分の言葉には責任を持たない」という共通点があるという感想を持った[50]。なお、警察から取り調べを受ける中で自分が起こした中傷や脅迫を反省して「本人に謝罪したい」と言う中傷犯が数人いたが[51]、実際にキクチの所属事務所へ本人宛ての謝罪文を送った者はいなかった。
2009年2月5日にテレビ、新聞、スポーツ紙などの複数のメディアでキクチへの中傷事件が報道された[53]。事実無根の誹謗中傷をした中傷犯を一斉摘発するのは、警察庁によると「聞いたことがない」事案であった。
事件の終結に向けて
この報道で警察が「キクチはコンクリ事件と無関係」であることを発表したため、ネットではコンクリ事件キクチ犯人説は事実無根の中傷であるという認識が広まり、キクチへの中傷書き込みは激減することになった[55]。またこの報道の少し前から韓国の俳優が相次いで自殺した理由の1つにネットにおける中傷があると報じられており、ネットの中傷被害が世間に広く認知されるきっかけとなった。
2009年3月27日までに、起訴できる見込みがあると警察が判断した7人の中傷犯が検察に書類送検された。
神奈川県川崎市の29歳の女性派遣社員(脅迫容疑)
大阪府高槻市の45歳の国立大学男性職員(名誉棄損容疑)
東京都東村山市の46歳の会社員(名誉棄損容疑)
埼玉県戸田市の36歳の会社員(名誉棄損容疑)
神奈川県横浜市の46歳の左官業経営者(名誉棄損容疑)
埼玉県入間市の36歳の男性鉄筋工(脅迫容疑)
東京都練馬区の23歳の元パート女性事務員(脅迫容疑)
2010年1月21日に検察から「キクチに対する誹謗中傷や脅迫の書き込みをした人たちは他にもおり、一部の人だけを起訴すれば不公平」として3人の中傷犯に起訴猶予処分(名誉棄損容疑2人・脅迫容疑1人)、4人の中傷犯に嫌疑不十分の不起訴処分(名誉棄損容疑2人・脅迫容疑2人)が下された。